ウケる〈短歌10首〉
「ウケる」
地上から地下へと降りて電車に乗り地上へのぼれば目的地です
悲しみはリュックサックを背負うのか背負って昼の電車に乗るか
まるいベンチでみんなスマホをひからせて空から見れば一輪の花
コンビニでコピー機ごちょごちょやっている男を見たよ春の散歩道
「ウケる」って一度言われたそのことが思い出になり胸あたためる
神田川かと思ったら梅田川あなたは忘れてオレも忘れた
カーテンにまもられている一室はクリーム色に灯って浮かぶ
浅い川 底がいくらか見えていて寝苦しい夜ゆううつな朝
自動車の車内ライトのうすぐらさ五歳くらいの頃から好きだ
ぴかぴかをことごとくぼろぼろにする時間の黄ばみ、ひどく不潔な
「未来」2017年7月号掲載
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