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うつ病を考える


妻の病気の症状の中に、うつ病があります。
うつ病はとても難しい病気です。

そして、まだまだ世間に理解されてない病気だと感じます。
私はうつ病になったことがないので、本当の辛さまでは分かりませんが、どういった病気か理解することが大事な気がします。

うつ病に対して、回りの人は無力です。
うつ病を治すことは出来ませんし、うつ病の辛さを解消することも出来ません。
大事なのは、うつ病にならないようにすること、悪化させないこと、再発させないことです。
これは、回りの人が気をつけて理解することで、ある程度緩和出来ると考えます。

うつ病に対するイメージが、昔と比べて少しは理解が広まった気がしますが、未だに「うつ病=甘え」というような考えもあるみたいで、しかもその考えに対して、自信を持って違うと言える人もいない気がします。

うつ病に限らずですが、自分が体験してないことは理解出来ない。そして、うつ病体験者が言うことも聞く耳持たない。これではいつまでたっても理解は深まらないでしょう。

これから書くことは、妻の症状と接する中で、私なりに考えたうつ病の仕組みです。

うつ病の事を書いてる本や、病院の先生のアドバイス等、いろんな意見を加味して考えています。

この考えた仕組みが間違った解釈だったとしても、うつ病を考えるきっかけになり、少しでも理解が広まればと思います。


うつ病は脳の体力ゼロ


いきなり「え?体力?」と思うかもしれませんが、私達の頭の中にある脳も、手や足と同じ体の一部であり、手や足が疲れるように脳も疲れます。

ただ少し変わった所があり、体の場合だと疲れたら、重い、だるい、筋肉痛とか、誰もが体験する分かりやすい症状が現れます。

ただ脳が疲れた場合、体だけではなく思考にも変化が出ます。元気が無い、笑えない、食欲が無い等で、パッと見て分かりづらいこともあります。

人間の全ての行動は脳が指示を出します。その脳が疲れてしまったら、指示を出す体力が無いのです。

なので、一切の行動、明るく振る舞うとか、体はもちろん、口を動かす、声を出すということも辛くなってしまいます。今まで好きだった音楽が聞けないといった、気持ちや前向きな思考にも指示が出せません。

身体と脳の疲れの違いが分かりにくいかもしれませんが、脳に体力があって身体の体力が無くなった人を想像してみます。

フルマラソンを完走して、もう動けないと倒れてしまっても、爽やかな笑顔で「疲れたー!水ちょーだーい!」と叫ぶことが出来ます。

脳が元気だと、身体の体力を補おうと、水分補給の指示を出せるのです。
脳に体力が無いと、いくら疲れていても身体の回復をしようともしません。


脳とパソコンは似ている


「今度はパソコン?」となるかもしれませんが、脳の動きとパソコンの動きは似ています。

先程脳の体力と書きましたが、この体力がパソコンやスマホで言う容量です。充電とは少し違う気がします。充電は食事と考えればいいでしょう。

容量を使いすぎて空きが無くなってくると、重くなり、いつも通りの動きが出来なくなってしまいます。
また、使いすぎると本体が熱くなって、動きが悪くなります。

脳も同じで、脳の余力がないと上手く思考が働かず、高熱が出たりします。
これを解消する為にはパソコンならデータを整理、消去したり、シャットダウンさせたりします。

これが脳の場合だと、ストレスになるような負担がかかるようなことを省き、睡眠をとるということになります。

シャットダウン=睡眠ということです。
パソコンも脳も、容量以上のことをしてはいけないのです。


何故死にたくなるのか


うつ病に限らずですが、精神的な病気になると、自傷行為やOD(オーバードース、薬を大量に服用すること)といった症状がありますが、これがさらに理解の壁となっている気がします。

普通の人には、死にたくなるという感情が全く理解出来ないからです。
幼い頃から命は一番大切であると、自ら命を絶つことはとんでもないことだと教わって育ちました。
なので、こういった行為に対して世間はとても冷たいと感じます。

こんなに心配してたのに
親より先に死ぬな
回りに迷惑かけるな
弱かった
甘かった
逃げるな

ひどい言われようです。

しかしこれには大きな誤解があります。

感情で死にたくなる訳ではありません。
脳が死にたくなるんです。

感情だけでなかなか人は死ねません。しかし、脳の体力がゼロになった時、脳が死を選ぶのです。
いくら本人の感情が死にたくなくても、どうやら脳がそうさせてしまうようです。

この脳の命令に逆らうことは難しいです。いくら手助けがあろうと、夢や希望があっても、身近に大切な人がいてもです。

なのでいつも回りは

どうして・・・

となります。
これが理解が深まらない原因の一つだと思います。
いくら口で死にたいと言っても、
本人の本当の気持ちは死にたくありません。


サービス精神が脳の体力を削る


うつ病の理解が深まらないもう一つの原因が、脳の体力がゼロになっても分からないということです。しかも、本人さえ気付くことが難しいのです。

先日会った時は元気だった
冗談とか言って明るかった
バリバリ仕事をしていた

なのにどうして・・・です。

これは過剰なサービス精神からくる現象だと考えます。
サービス精神と言えば、飲食店や接客業でお客様をもてなすための大事な心構えです。

お客様に満足してもらいたい、喜んでもらいたいという精神です。これは、言い方は悪いですが、気持ち良くお金を払ってもらう為の精神とも言えます。

満足してお金を払って頂いて、また来て下さいと、またうちにお金を払って下さいとサービスします。

利用する側はお金を払ってる以上満足したい。そして次もあそこなら満足させてくれるので、お金を払ってサービスを受けたい。
と、お互いの利害が一致しているのですが、うつ病の人の過剰なサービス精神は、一方的にその人に負担がかかっています。

うつ病の人が明るく元気に振る舞ったとしても、誰かに誉められたりお金を貰えたりする訳ではありません。
そして、誰も気にしていないような、繊細な部分にもそのサービス精神を発揮します。

相手が楽しめるように
相手の気分を害さないように
相手が困らないように

もっと細かく

この言葉は言ってはいけない
この言葉を使うような話に持っていかない
この話をすると気分が良さそうなので広げよう
今つまらなそうだから何とかしなくては
会話に間が空いたので埋めなくては
相手が話したそうなので全力で聞こう
いっぱい頷こう
相手の気が済むまで聞こう

ほんの数分の会話でさえ、全力で頭をフル回転させています。
脳の体力がゼロに近くなっていても、自分を犠牲にしてサービス精神を続けていきます。
これを全ての私生活でこなしているので、かなりのストレス、負担がかかっています。

正直私には無理です。
たった数分でも話長い、つまんないと思ったらよそ見をしたり、無理矢理話変えたりする私には無理です。
気の利かない私には、見習いたいくらいのサービス精神です。

過剰なサービス精神を発揮している姿が、うつ病のイメージとかけ離れているので分かりにくいのですが、そうこうしているうちに、確実に脳の体力は削られているのです。


脳の体力がゼロになってしまったら


可哀想なことに、脳の体力がゼロになってしまったら、脳は死ぬことしか考えられなくなります。
普通の人が元気になるようなこと、希望が持てるようなこと、そんなこと言われたって、脳が死にたいと言ってるので、無理なんです。

こうなってしまったら回りの人は無力です。悲しいことに回りは人の力で、脳の体力を増やすことは出来ません。間違ったやり方をしてしまうと、この人が私を元気付けようとしているから元気にしてなくちゃ、というサービス精神でさらに脳の体力を削る羽目になってしまいます。

脳の体力を増やす方法は2つです。

時間
睡眠

だけです。
時間が経過するごとに、ほんの少しずつ脳は回復していきます。1日1日、一歩一歩です。怪我みたいに目に見えて傷が塞がっていく訳ではないので、うつ病の人にとっては、とても長く辛い時間だと思います。

本当に良くなっているのか分からない。いつまでこの辛さが続くのか、もう治らないんじゃないかと、絶望でしかありません。

耐えに耐えた後、ようやく1%回復したとしても、サービス精神ですぐに消耗してしまいます。

これを気を付けなければなりません。焦らずゆっくり。1%しか回復していないのに、回りには80%くらい回復したように見えることがあります。

うつ病にかかった本人は、サービス精神ですぐ挽回しようとするので、回りが気を付けなければなりません。

次に睡眠です。

パソコンやスマホを使いすぎた時に、一度シャットダウンすると少し回復するように、脳も睡眠をとることで少し回復します。

普通の人は脳が疲れたと言っても、実際は90%くらい余力があります。なので1日2日ゆっくりすれば回復します。10分ほどの仮眠でもかなり回復したように感じます。

うつ病の人の脳の体力ゼロ状態だと、少しの睡眠で回復するようなものではありません。

しかも、脳に体力がないと、不思議なことに寝ることも難しくなります。
おそらく、変わった言い方かもしれませんが、脳に寝る元気が無いのではと考えています。

疲れたと言ってすぐ寝れるのは、脳が元気な証拠とも言えます。
子供はよく寝ます。高齢者はなかなか寝れません。
詳しいことは分かりませんが、脳が元気なほうが寝やすいのではと思います。

ちょっとやそっとの睡眠方法はあまり効果が、ありません。
寝れる音楽や、寝れるストレッチやマッサージ、食べ物、お風呂、羊が一匹・・・いろいろあるかと思いますが、それらを受け入れる余裕がありません。

ヨガやった後に半身浴して、カモミール飲んで、瞑想して、幻想的な音楽流しながら、ラベンダーのアロマ焚いて、アイマスクして羊を数える・・・
こんなの健康でないと出来ません。
しかし全く効果が無い訳でもないので、出来る範囲で少しずつでいいと思います。

あと睡眠に関してはセロトニンも大事です。日光を浴びることで、体内にセロトニンが分泌され、脳を睡眠がとれやすい状態にしてくれるそうです。
しかしこれも、脳に体力がないと、日光を浴びたがりません。明るい光などが脳にとって苦しいからです。

これまでの説明を読んで、

何をやっても駄目じゃん、本人が気を付けたり頑張らないと駄目じゃん

と思うかもしれませんが、何度も言うように、本人ではなく、脳が受け入れられないのです。脳が気を付けたり頑張ったりする体力がないのです。

日光を浴びるのがキツいなら、5分10分のドライブでもいいです。車から出れなくてもセロトニンは多少浴びれます。

初めは月に一回でも良いです。それが週に一回になり、二回になり、外に出れたり、時間をかけて増やしていけばいいと思います。

うつ病の人に、どうすれば良いかを考える体力がないので、回りの人が考えて工夫をしたほうが良さそうです。

やり方はいろいろあります。

一人にしない


うつ病に対して回りの人は無力だと書いてきましたが、回りの人にしか出来ない最大の出来ることがあります。
それは、

行動を止める

です。
これはもう、無理矢理というか強制というか、今までここに書いたようなこと全部頭から吹き飛ばしてでも

やってはいけないことを止めます

四の五の言わずに体張って止めます。その為には一人にしないことです。当たり前ですが、誰かがいないと止めれません。

一人にしないように、または、一人になる時間を出来るだけ少なくするようにします。

その為には協力も必要です。マンツーマンでは難しいこともあると思います。

配偶者、親、兄弟、友人、病院、あらゆる手を使って時間を作り、一人にさせないようにしたほうが良いです。

これは、脳の体力がゼロの間だけです。
ずーっとではないので、そこは何とかするしかありません。


薬について


薬についてもいろいろ書きたいのですが、とても複雑なので控えます。私の解釈が間違っていたり、変な伝わり方をすると責任がとれないので、そこは専門の先生におまかせして、症状に合った薬を処方してもらうことが大切だと思います。

ただ
ここでも誤解があって、病院に通い、薬を服用しはじめたら終わりくらいに思っている人もいます。

ケガをして出血が止まらない人で病院に行かない人がいるでしょうか。
同じように心が怪我をしている、というとまた誤解を招くので、脳が怪我をしていて、体力が削られている状態なので、病院で治療をすることが大事なのです。

要は、
脳の体力が削られのを抑える
脳の体力を回復させる

ために何をするかです。
考え方としては怪我と同じです。
それが病院に通って薬を服用することが最善なら、そうすべきです。



最後に

うつ病は誰にでもなりうる病気だと聞いたことがあるかもしれません。

自分はなるはずがないと、ほとんどの人が思っていると思います。それは、感情的にならないと思っているだけで、脳の体力がゼロになることは誰にでも起こりえます。

それは、うつ病の仕組みを知ることで回避でき、もしうつ病になっても、活路を見出だすことが出来るのではと考えています。

そして、うつ病にたいしての理解が深まることで、少しでも悲劇が減ることを願っています。


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