変な例えする奴【短編小説】
何か暇つぶしになるゲームはないかと、近所にある中古ゲームの販売店に仕事帰りに立ち寄った。
不思議なもので、当時流行ったゲームは格安で売られ、糞ゲーと言われ売れずに揶揄されたゲームのほうに高値が付いている。
クオリティの低い糞ゲーのほうが暇つぶしには良いと思って摸索していると・・・
「よっ!」
「ぅわ!」
後ろから驚かすように声をかけられた。
「湯本、久しぶりっ!」
「おお!椎名か?脅かすなよ、久しぶりだな」
「高校以来だな。ここで会ったが100年目ってやつだ」
「・・・よくわかんないけど懐かしいな」
久しぶりに会った椎名は相変わらずだった。高校時代もそこまで仲良かった訳ではなく、どちらかというと苦手なタイプだった。
しかし数年ぶりに会うと、ちょっと飲みぐらい行ってもいいかなと思ってしまう。
「どうだ?久しぶりに一杯やらねえか?」
「久しぶりに一杯って、高校ぶりだけどな。まあいいよ。暇すぎて中古のゲーム探してたところだから」
「そうこなくっちゃ!近くの中古ゲームより久しぶりの同級生だろ!」
「・・・うん、行こっか」
懐かしいという理由だけで飲みに行くことになったが、やはり当時と同じで少し付き合いづらい。
どこで飲もうかと店を探していると、急に雨が降って来た。仕方なく目に付いた居酒屋に入ることにした。
「いや、参ったな。急にどしゃ降りになって」
「まあいいじゃないか。ちょうど居酒屋見つかったし、雨降って地固まるってとこか」
「・・・ああ、入ろうか・・・」
久しぶりというのもあって、昔話で盛り上がった。当時誰が誰を好きだったとか、喧嘩していたとか、嫌いだった先生の話など、酒も回っていろんなことを話した。
「それでさ、お前らがふざけて押すもんだから、プールに落ちる~と思って、清水の舞台から飛び降りるつもりで、自分から飛び込んだだよ!あははは」
「・・・まあ、そんなことあったっけ」
「そうそう、ていうかこのダッカルビ辛くて美味いな。山椒は小粒でもぴりりと辛いっていうくらい辛いな!」
「・・・・・・そうだな、辛いな・・・」
2時間くらい話してただろうか。酒も回りお腹も満たされたので、そろそろ帰ろうかとなった。
「明日も仕事だからそろそろ帰ろうか。雨も止んだみたいだし」
「そうだな。おお止んでる止んでる。止まない雨はないな!」
「・・・・・・・・」
も~~~~我慢できない
「・・・ちょっといいか?」
「ん?どうした?」
「さっきからちょいちょい変な例えというか諺というか、そっちが気になってお前の話ぜんぜん頭に入ってこねえんだけど」
「ん?なんか間違ってるか?」
「間違ってはないけど、間違ってるというか、そんな風には使わないというか!」
「そうか?」
「その・・・あれだ、清水の舞台からなんちゃらって、実際に飛び降りるような時には逆に使わないっていうか、雨が実際に止んでる時にそのまま止まない雨はないとか!普通もっと違う時に使うもんだろ?」
「そうかな。で、どうして怒ってんの?逆鱗に触れたってやつか?」
「ああ!そういうのだよ!まあ今のは合ってるっちゃあ合ってるけど!」
「なんだよ、変な奴だな~合ってるとか合ってないとか」
「いやいや、お前の言葉の使い処が変なんだよ!」
会ったときからずっと気になってたので、思わず声をあげて突っ込んでしまた。
「ところでさ、湯本付き合ってる人いるでしょ?」
「なんだよ急に、いるけどどうして知ってるんだ?お前に関係ないだろ」
「それが大ありなんだ。お前の彼女、同級生の南川だろ?実は俺、南川のストーカーなんだ」
「え?」
そういえば時々、彼女である南川の様子がおかしい時がある。聞いても話してくれないし、急によそよそしくしたり、常に何か気にしてるように感じることがあった。
「南川の彼氏見つけてぶっ殺してやろうと思って、後をずっと付けてたんだ」
そう言って椎名はバックの中からスタンガンを取り出した。
「ちょ・・ちょっと・・おい・・待て」
「言ったでしょ?ここで会ったが100年目って」
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