行き先は 変わらなかった 君の手が ボクの小指を なぞらなければ

行き先は 変わらなかった 君の手が ボクの小指を なぞらなければ

「はじめまして!龍太郎です!よろしくお願いします!」
彼は爽やかな青年だった。23歳。切れ長の奥二重。
大きく上がった口角。なんとなくサッカー部っぽいw
まさか10歳も下の子と「横浜みなとみらいドライブデート」するとは。ボクは前世でかなりの善行を積んだらしい。

しかし、許してくれるだろうか?彼氏がいるボクにとって、このデートは不貞行為で、ボクは嘘つきで、今日は日帰りで実家に行く設定になっている。どうか神様、見ないでください。

・ほんとのボク→彼氏あり、交際3年、同棲2年。喧嘩中。
・今日だけのボク→彼氏なし。いない歴半年。そろそろ募集。

雪が降るほど寒い木曜日の夕方。
TwitterでDMを貰い、意気投合。
お互いの家が近い事もあり、土曜日にはデートする事になったのだが、、

ボクにはパートナーがいて、龍太郎君には内緒のまま。。

こ、これはデートではなく友達として遊ぶだけ!
と自分に言い聞かせたが、龍太郎君にも彼氏にも、真実は伝えてないまま、ささくれの様な痛みが走る。。

んん〜、すんごい罪悪感。。

ボクは罪悪感を抱えながらも、イケメンが相手だとちゃっかりデートを楽しめる体質なのだと知った。

18:00。
ライトアップされた海沿いの道を走り、たわいない話をして、マリオカートで勝負し、ユーフォーキャッチャーではしゃぎ倒し、ボクが好きなアニメのタオルを龍太郎が取ってくれたりして。

ゲームセンターが閉店する頃、「マジちょー楽しいねw あ、ご飯でも食べる??」と聞くと、彼は、

「おれ観覧車のりたい。どぉ?」

・・・観覧車。それはマズくない?
・・・観覧車って、、キメに行こうとしてるよね?
・・・間違ってもチュウとかしたら引き返せないよね?
彼の緊張が見え隠れする言い方。急なタメ語。これは、、、キメに来てるじゃん。。

ささくれのような罪悪感から血が滲んで来る。。
「観覧車か〜。えっと、高いとこ、ちょい苦手なんだよね〜wボクびびりだからさw」
程よくやんわり断ったが、血が滲んだこの気持ちはバレてないだろうか。。

「わかりました!じゃあもうちょっと車で走りましょうか(^^)」
彼は爽やかに、かつ、角が立たないように次のプランを提示してくれた。いい子すぎて尊いんですが。。

駐車場のある地下2Fに向かうエレベーターの中で、ふと、無言の時間。並んで2人きり。
10F、9F、8F・・・地下2Fに行くまでに、彼の人差し指がボクの小指をなぞる。
ゆっくり、恐る恐る。少しずつ。少しずつ。。

あーあ。踏み込んでみたくなっちゃった。。

元々冒険心の強いボク。その先に少し危ない道があると、進んでみたくなる。

彼の目を見つめてしまったのが、今夜の始まりの合図だ。

エレベーターが1Fを通り過ぎてすぐ、地下2Fまでの短いキス。

不貞行為の始まりは、観覧車ではなくエレベーターの片隅となり、この後、観覧車の頂上で2度目のキスをする事になるだろう。

きっと観覧車からの夜景は綺麗なんだろうな。でもそんなの見る暇あるかな?

と、よくわからん心配をしつつ、やっぱり頂上で彼の腕に抱かれてキスしたのだった。

薄目で見た彼の顔。
その顔越しに見える横浜の夜景は、とても綺麗だ。








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