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建築士ではない私が建築設計事務所を経営する価値とは

会社を継ぐまで

私は物心ついた時、父がデザインの仕事をしているということに何となく興味を持ち、父から勧められたわけではなかったのですが、あまり迷うことなく大学は建築学科に進み、大学院まで行きました。

僕なりに一生懸命設計課題に取り組んでいたのですが、一部の同級生のデザインした課題を見ては、自分にはここまでのアウトプットはできないと感じることが多く、ある意味自分が勝手に乗ったレールに対して不安を覚えていました。

設計士とやっていくのか?本当にやりたいことは何なのか?そんな不安をかき消すべく、大学院の時に、NYの設計事務所に「インターンで働かせてください」とメールを送り、英語も喋れないのに、飛び込みました。

結果としてそこに行ったことによって、建築士にならないことを決め、場を作る上流に行きたいと思い、不動産デベロッパーへ行くことを決めました。
簡単にいうと設計事務所に発注する側の業界ということです。

入社早々リーマンショックが起こり社会人としてのスタートは想像だにしていないことの連続でしたが、180度違う環境に行き、そこから設計や建築の業界とお付き合いすることで、私は漠然とイメージしていた、不動産(ビジネス)と建築(デザイン)の間をうまく繋ぐような存在になりたいという思いが強くなっていきました。

商売人家系でもあったこともあり、独立して起業するというのは昔から決めていたのですが、不動産業界に行った時点で父の会社を継ぐのではなく、自分でやることを想像していたのですが、ひょんなことから承継を前提に父が創業した設計事務所に入社することになりました。(この辺りは追々)

設計事務所の経営

入ってからは衝撃の連続。当時社員は私含めて7名ほどでしたが、全くお金がない。もうすぐ入金があるはずと聞くが全然入ってこない。一つのプロジェクトでいくら外注に払っているかもわからない。でもとにかくみんな忙しそう。はっきり言っていつ潰れてもおかしくない状況でした。

上場企業の数百名の会社にいた私からすると、当たり前の話ですが、別世界です。

これはうちの会社がどうだったとか、苦労話をお伝えしたいのではなく、デザイナー自身が代表である所謂「アトリエ設計事務所」の実態としてはどこも大差ないことを実感しました。

一方業界をマクロ的に見ると設計事務所というのは登録数でいうと11万強
ちなみにコンビニは6万弱なので、倍ほどあります。
そして、全体の8割弱が10名以下の事務所です。

また、設計事務所の10名以下の代表の年間給与の平均額は500万円台半ばだそうです。設計士の平均ではなく、「代表者」の平均です。

あまり評論家のようになるつもりはないのですが、デザイナーはとにかく美しい空間や楽しい場所をとにかく作りたい。その為にとにかく全力を注いでいます。これには私自身も本当に尊敬します。

一方で、現実は会社経営に苦しんでるところも多く、
「そもそもお金を稼げるような業界ではない。好きなことができているんだから、仕方がない。」的な空気感を業界全体が持っているとさえ感じます。

設計事務所のアトツギベンチャー

建築設計事務所ってベンチャーとか起業家という華やかな世界と正直かなり遠い距離にあると思います。しかし、私は幸運なことに、会社を承継する前後に関西の多くのベンチャー企業の経営者の方々と接する機会があり、沢山のアドバイスやサポートをいただくことで、何とか当初の苦境を乗り越えることができました。

そうやって沢山の別の業界の方に触れれば触れるほど、設計事務所の今までのビジネスモデルだけに依存せずにどうやったら経営できるのかをずっと考え、チャレンジしています。(下記参照)
まだその答えは完全には出ていないのが正直なところですが、建築の業界が好きでありながら、諦めて一度その業界を離れ、戻ってきた建築士ではない私にしかできないことがあると思っています。

一方、業界的に、飽和状態、供給過多。
正直、市場を選択できるスタートアップならこの業界を選ばない方がいいとさえ思います。
しかしながら建築設計を軸に、建築設計があるからこそ、強みになるようなサービスや事業を展開することで、良い意味で設計事務所の常識を壊し、少しでも業界が良くなり、そして少しでも目指す人や関わる人が増えたらいいなと思っています。

これからも設計事務所のアトツギベンチャーとして
設計事務所自体をデザインし、経営していきたいと思う。

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