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池上彰著『なんのために学ぶのか』(SB新書)読了。

池上彰著『なんのために学ぶのか』(SB新書)読了。
読んでいるうちに題を忘れてしまっていた。
「何のため学ぶのか?」という問いはいつの間にかどこかへ行ってしまって、
「とにかく必死に学んでいるうちに『池上彰』が出来上がったんだよ」
という内容だった。

池上氏はキャスターというイメージだが、元は記者だった。要は裏方で取材をする側だった。だから、アナウンサーとしての訓練は全く受けずに突然キャスターに抜擢されたそうだ。だから、慌てて自費でアナウンサーの入門書を買って必死で発声方法を勉強したという。
なお、記者時代にも、張り込み中に英会話の本を読んで学んでいるし、経済学部出身なので経済の本は好きで沢山読んでいる。

そして、何よりも大事なのは「週刊子どもニュース」で、「分かりやすく説明する」ための学びである。
説明する仕事に就いたことが無い人には分からないようだが、実は「分かりやすく説明する」ことは一番難しいのである。
日本人は、大して難しくないことを難しく説明する人の方を「デキる人」と尊敬する傾向があるが、本当は難しいことを分かりやすく説明する方がずっと難しい。

背景の深い理解なくして、単純化はできないのである。

要するに池上氏の学びの動機には、大仰な意義も目的意識も高尚なる志もない。
「必要に迫られて」か、「面白いと思うから」しかない。

社会人の学びは、多くは「必要に迫られて」だと思う。
それでいいわけである。

大切なのは、覚悟を決められるかである。

この本を読んで感じたのは、池上氏の「必要に迫られて」学ぶのだが、覚悟の決め方が強烈なこと。
そして、覚悟を決めて学んできたことが、結果的に池上彰最大の“強み”である「分かりやすくする」力に繋がった。

「何のため」など二の次なのだ。
「必要に迫られて」か「面白いと思うから」で学べばいいのだ。その結果、自分でも意図しない自分の“強み”ができていく。
そして、その“強み”を武器にすれば、仕事において独立したり、新しい分野に出ていけるわけである。

池上氏がNHK 退職を決めた箇所は、起業・独立を考えている人に特に読んで貰いたい所である。
NHKに所属しているときから、既に池上氏はベストセラーを幾つか出版していた。そして、その後の執筆依頼が来ていた。
「自分には“強み”がある」→「独立してもやっていける」という“計算”があったから、独立を決心したのである。

そのような“強み”もなく、ましてや異業種への独立をしようと思っているのなら、それはかなり無謀である。そんなのはジリ貧になるに決まっているのである。

先ずは己の“強み”を創ることではないか?
そのためには仕事に真摯に向かい合い、「必要に迫られて」または、「面白いと思うから」でいいから、学び続けるべきではないか?

私は日本史の予備校講師なのだが、今年から副業で個別指導を始めた。
中学三年生、受験生に数学を教えたりしているのだが、やっぱり自分の“強み”である「図やイラストを描いて分かりやすくする力」はそのまま使えることが分かった。

私はこの池上氏の本も含めて、「どうしたら、学ぶことへのモチベーションがアップするのか?」というテーマの本を沢山読んできた。
生徒の学ぶモチベーションをもっと上げねばならないという動機…まさに「必要に迫られて」学んできたのである。
その結果、「分かりやすくする力」だけでなく、「モチベーションをアップさせる力」も付いた。

「面白いと思うから」学ぶのがベストかも知れないが、「必要に迫られて」るのなら、覚悟を決めて学び始めろ!なわけである。

効果的な学びに一番必要なものは何か?
その答えをこの本から得られた。
覚悟を決めること。
それに尽きる。
そのうち、その学びが自身の“強み”になる。

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