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【読書】予想どおりに不合理

こんにちは、みずのです。

有名な行動経済学の書籍、ダン・アリエリー著の『予想どおりに不合理』を読んだので簡単にまとめておきます。

軽快な語り口で書かれていてとても読みやすく、内容も日常的な場面での話が多くて分かりやすいので心理学に興味がある方は特にお勧めです。

1.「行動経済学」とは

「行動経済学」というと、普段あまり聞きなれないかもしれませんが
ざっくりまとめると人間の行動の背景にあるさまざまな意思決定を理解するための学問です。

通常の経済学では、「人間は完ぺきな理性を持っている」という仮定の元に理論が展開されていきますが、行動経済学では、実は完ぺきではない実際の人間の不合理な選択や判断について明らかにしていくことを目的としています。

そういった意味で、心理学と経済学の両面を合わせ持っているといえます。

さらにポイントとして、不合理な行動や意思決定は、実は規則性・再現性があるので、法則を理解することができれば行動の予想ができることがあげられます。だからより一般化して学問として成立するんですね。

以下、いくつか個人的に特に印象に残った内容をあげていきます。

2.価値の相対性

人は物事の価値を絶対的な基準で判断していない
ほかの物事との相対的な優劣に着目して、そこから価値を判断している

この傾向から、選択肢が3つあると大抵の人が真ん中を選ぶようです。
確かに自分もお寿司屋さんに行って松・竹・梅の3種類のメニューがあると大抵は竹を選んでしまうかもしれません。

また人は比較しやすいものだけを比較して、比べにくいものは無視しがちなようです。
つまり、それぞれちがう特性で優れているAとBがある際に、Aと似ているが明確にAより劣るA´を加えて提示すると、Aが選ばれやすくなります。

こういった傾向を利用して、家電屋さんでは本当に売れてほしい商品よりあえて高い商品を品ぞろえに入れておいて、売れてほしい商品がラインナップの中間の値段にみえるようにしたり、不動屋さんが物件を紹介する際には、顧客が決断しやすくなるように契約してほしい物件に類似した少し劣る条件の物件を合わせてみせるということがあるようです。

3.恣意の一貫性

最初に購入した際の価格が「恣意的」に決められたものであっても、
その価格がいったん意識に定着すると、同じものや類似したものについて、その最初の価格との比較で判断されるようになる

たとえ自分が明確に意識して下したものでなくても、最初の決断がその後の決断にのちのちにまで余韻を残すことがわかっています。

例えば、通常地域によって家賃相場は異なるものですが、今住んでいる地域よりも相対的に家賃相場が高い地域へ引っ越しをする際は、たとえ家の面積が狭くなってしまうとしても、治安が悪い地域に住むことになってしまうとしても、以前住んでいた家賃と同じくらいの家賃の引っ越し先を探してしまうそうです。

逆に基準をうまく崩した例としては、スターバックスの出店があります。
それまであったダンキンコーヒーによって安価なコーヒーの価格が多くの人の意識に定着していた中、スターバックスのコーヒーは高価で、通常は受け入れられなさそうです。そこでスターバックスはあえて「サードプレイス」というコンセプトのもとに空間に重きを置き、ほかのコーヒーショップとかけ離れた体験を提供することで、顧客が新しいアンカー(価格)をすんなり受け入れられるようにしたのです。

AppleのiPhoneなんかもそうかもしれないですが、競合の多い領域にそのまま参入するのではなく、新たなコンセプトを打ち立て、新しい価格の基準を作ってしまうことがビジネス成功の秘訣であり、人間のこうした性質にも裏打ちされているんですね。

4.「無料」の魅力

たいていの商取引には良い面と悪い面があるが、何かが無料になると、
悪い面を忘れたり提供されているものを実際よりもずっと価値あるものだと思ってしまう

これは、人間が「失うこと」を本質的に恐れるために起こるようです。無料のものを選べば、目に見えて何か(お金)を失う心配がないからです。

自分もよくやってしまいますが、「2つ以上購入で送料無料」にすると、特に必要なくても送料を無料にするために2つ目を買ってしまう人がたくさんいます。

マーケティングの活動ではこうした人間の特性を上手くついていますね。

5.社会規範と市場規範

社会規範
友だち同士の頼み事など、情緒的なつながりをベースとした依頼関係
市場規範
商取引など対等な利益や迅速な支払いに基づく依頼関係

この2つのを混在させるとさまざまな問題が発生します。

特に、社会規範でつながっていた関係性の中に一旦市場規範が入り込むと、
社会規範が消えてしまい、一度消えるとなかなか戻ってきません。

例えばボランティアでお願いした際には快く引き受けてもらえていたのに、少額の報酬でお願いすると仕事ととらえられてしまい、労力に見合わないとして断られてしまうといったケースがあります。

何かお礼をしたい場合には、お金ではなく何かちょっとした物のプレゼントにすると、社会規範にとどまっていられるようです。手料理の夕食をごちそうになる際には、現金ではなく料理に合うワインやデザートのケーキを送るなど普段私たちも自然とやっていますね。
(ただし値段を明かしてしまうとその時点で市場規範に移ってしまいます。)

職場という場面では、社会規範によって従業員は熱心で勤勉になり、順応力や意識も高まる傾向があるようです。

企業の中には、従業員との間に社会規範を作り出して成功しているところもありますが、昨今では短期利益や経費削減が重要視され、市場規範が強調されるようになって、従業員がもっと良い待遇を求めていってしまっていると本書には書かれています。

個人的には、過去の日本企業に一般的な「新卒入社から定年退職まで1社に勤めあげて会社と家族のような関係性を築く」という社会規範に基づく関係性よりも、多くの選択肢がある中で、個人と企業のニーズがマッチした部分を共有してその間はコミットし、またニーズが合わなければ離れるといった関係性のほうが健全であり、社会の発展といった意味でもいいのかなと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました!



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