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地元の農協に企画持ち込んだらバンナムとコラボすることになった話

はじめに

こんにちは!イナムライスの稲村です。静岡県沼津市で兼業のお米農家をしています。稲刈り真っ最中でてんやわんやしてます。

そう、稲刈り。新米の時期なのです。まずは声を大にして言いたい。
皆さん!お米食べてくださってありがとうございます!!
「コメ余り」「日本人のお米離れ」などが話題になる昨今ですが、新米を楽しみにしてくださる方、お米を愛してくださっているすべての方の愛のおかげで私たちは生きています。感謝しかない。

さて。さてさて。今日はちょっとお話したいことがありまして。
突然ですが

〈するがの極フェス〉の開催が決定したよ~~~!!!!

『ラブライブ!サンシャイン!!』ともコラボするよ~~~!!!!

っていう話を今日はしようと思います。

〈するがの極フェス〉は、地元のブランド米である〈するがの極〉の新米を地元の飲食店で使ってもらって、参加店舗で食事すると
・地元のおいしい新米を味わえるよ
・『ラブライブ!サンシャイン!!』のオリジナルグッズも貰えるよ
・『ラブライブ』オリジナルデザインパッケージ米の先行購入もできるよ
・新米のプレゼントキャンペーンもあるよ

っていう地産地消の新米&飲食店ブチアゲ応援イベント。

率直に言うと、このイベントを発案したのは私でして。
タイトルにも少し書いたけれど、JAと共同で手掛けているブランド米のPR企画を生産者自ら持ち込んだら、面白がってもらえて、イベント開催が決まり、しかもあれよあれよのうちに『ラブライブ!サンシャイン!!』とのコラボまで決定していた。ヤバい。なんぞこれ。異世界転生してないのに。感謝しかない。

〈するがの極〉ってなんぞや の話

〈するがの極(きわみ)〉は2017年くらいに、JAなんすん(現:JAふじ伊豆)と地元の生産者数名から始まったブランド米で、今は沼津市・裾野市・長泉町・清水町の2市2町と80名以上の生産者が参画していて。
契約圃場で「きぬむすめ」という品種を栽培して、その中から一定の品質基準をクリアしたプレミアムなお米だけが〈するがの極〉として販売されている、そんな商品。私も生産者の一人です。

世の中には本当にたくさんのブランド米があって、華々しく成功しているものもあれば、残念ながらハネていないものもある。
ハネない理由はそもそもの品質だったり販売戦略だったりタイミングだったり…色々あると思うけれど。
お米を商売として生産していて、作るのも食べるのも大好きな自分としては、美味しいお米が、その品質の高さに見合わず、多くの人の食卓に届いていない現状があるのだとすれば、歯がゆく感じるところはある。

私の地元である沼津市大平は、〈するがの極〉が発足した産地ということもあって、生産者のモチベーションがとても高い。
私自身、部会のメンバーや日々栽培サポートをしてくれるJAの営農担当者から刺激を受けるところはおおいにあり、ありがたいなぁと思っている。感謝しかない。

その一方で、この熱量がいまいち栽培以外のベクトルで波及していかないのは勿体ないな…とも感じていた。

少し厳しい言い方になるけれど。おそらく多くの農産物ブランドがそうであるように…
これまでの〈するがの極〉は、「地域で愛されるブランド作り」をテーマに掲げながら、生産者・消費者・JA・行政が一体となったブランド戦略を十分に展開できていないところがあった、と思っている。

生産者は美味しいお米づくりに専念し、販売戦略はJAと行政が一手に引き受けるというやり方を決して否定はしない。「作り手の顔が見える=おいしい」というものでも必ずしもない。いいものを作るのと、それを商品として売り出すことはかなり質的に異なるプロセスで、JAや行政の皆さんはそれぞれの役割のなかで一生懸命仕事をしてくれている。感謝しかない。

ただ、「地域で愛される」ために何をするかと考えたときに、もっと面白いことが出来るんじゃないか、一農家である自分たちにも出来ることがあるんじゃないか、という漠然としたモヤモヤをここ数年抱えていた。

想いは転がる石のように

今年のゴールデンウィーク、ちょうど田植えに向けて種まきして苗作って、トラクターで田んぼ起こして、ってしてる最中に、ふと思いついた。
「飲食店コラボしたら面白いんじゃね?」
思いついた翌日にはJAの担当者に電話していたと思う。
それから数日のうちに書いたのがこの企画書。
ほぼ全文をそのまま載せるので、読んでもらえるととても嬉しい。

よっしゃ!読んでくれてありがとうございます!いかがだったでしょうか。色々小難しいことを書き並べているけれど、つまるところ「〈するがの極〉と地元の飲食店でコラボしてお祭りやろうぜ」ということを書いたつもり。

粗削りだし、めちゃくちゃ目新しい企画というわけでもない。
ただ、コロナを踏まえつつ地域全体に展開することを考えて
「参加店舗が増えれば増えるほど〈密〉を回避できる」
「お米を全く使わない飲食店は少ない、かつ限定コラボメニューがないので、店舗側の参加ハードルはかなり低い」

という設計にしてある。

私たちが暮らすこの町には本当においしくて素敵な飲食店がたくさんあって、コロナで打撃を受けている飲食店を少しでも応援する機会を作れたら、という想いも込めた(この企画書を書いた当時、秋頃には少しずつ終息の兆しが見えるのではないかという想定ではあった)。

初稿なので「Ver 0.9」としたのだけれど、結果的にこの企画書がそのまま多くの関係者の目に届く形となった。

この企画書を出してけっこうすぐ、JAの企画・販促部門の課長クラスの方々が5人も時間を割いてくれて、会議室でプレゼンをさせてもらった。
かなり前向きな反応を貰えて、直近の協議会の会議でも提案に動いてくれた。ただ「いきなり500店舗は結構難しいかもしれない(予算的にも、実施規模的にも)」とは言われた。そりゃそうだ。

私のなかでは勝手に、500店舗、20万人規模のイベントにするのは「これだ!」という設定目標で、そのためには今すぐにでも動き出さなきゃ、と思っていたけれど、そもそも予め組んである年度予算を全部ひっくり返してフェスやろうぜ、と言っているのだからそう簡単にはいかない、いくわけがない。
そもそも言ってしまえば、「するがの極」は私の商品ですらないのである。販売しているのは表向きはJAだけれど、市町も携わっている以上、実現のためにはまっとうな合意形成と適切な予算管理が必要だ。

夏の間、JAの担当の方がずっと動いてくれて、またありがたいことに市町の担当者も前向きに受け止めてくれて、8月の後半に「いざやりましょう」という連絡をいただいた。
嬉しかった。めちゃくちゃ嬉しかった。
とはいえ、ようやくスタートラインに立ったところなので、詰めなければならない課題はたくさんある。
何から話し合っていくのがいいのかな…と考えながらリモート会議に参加したら、いきなり㈱バンダイナムコフィルムワークスの人がいたのでだいぶ焦った。稲刈りの準備時期でバタバタしていて全く髭剃ってなくてめちゃくちゃ反省した(つーかいつでも髭は剃ろう)。ちなみに発表はまだだけど、『ラブライブ!』コラボのオリジナルパッケージもかなり凄いことになっている。超いい。超いいとだけ言っておく。

参加店舗を激烈に募集しています!

そんなこんなで『ラブライブ!サンシャイン!!』とのコラボも正式に決まり、いよいよ参加店舗を募集します!が今ここ、現在地(ちなみに一般向けのイベント告知は10月に出る予定)。

フェスの期間は2022年11月18日(金)~12月4日(日)。
店舗募集期間は9月26日(月)~10月14日(金)。
そう、時間がないのである。

もしここまで読んでくれた方で
・沼津市・裾野市・長泉町・清水町に縁のある方
・『ラブライブ!サンシャイン!!』を好きな方
・お米を好きな方
・飲食店を応援したい気持ちのある方

がいたら、どんな形でもいい、あなたの周りの人や知り合いの飲食店に声をかけてほしい。一緒にフェスを作り上げてほしい。お願いします。

販促キャンペーンという側面があることは否定しないけれど、それ以上に、地域のみんなで、新米を楽しみながら、美味しい料理に舌鼓を打って、ワイワイやりたいのだ。
友達100人で山に登ってみんなでおにぎり食べるみたいな「絶対美味しいやつ」になることは保証する。

ブランディング大切だよね、みたいな言葉は巷に溢れているけれど、じゃあ「ブランド」って何なの、って聞かれたらどう答えるか。

私は「ブランド=人=愛」だと思ってる。
作り手はがんばってる。売り手もがんばってる。たくさん愛情注いでる。でもそれだけじゃ全然足りない。
食べてくれる人、おいしく料理してくれる人の愛がその何倍もあって、はじめて「ブランド」なるものができていく。カッコつけたい訳じゃなくて、共有できる愛のフレームが生まれたら、よりハッピーじゃない?ということ。
フェスをきっかけにお米のおいしさや地元のお店の魅力に気づく人が一人でも増えて、みんなで「同じ釜の飯を食った仲」になれたら最高じゃないすか。

ちなみに誤解のないように書いておくと、この企画に関して、私には1円の報酬も発生しない。これははっきり言って大前提。
寧ろ、一人の農家に過ぎない私の声を拾い上げて、形にしてくれた関係者各位には、それはもう頭が上がりませんよ。感謝しかない。

もう一つ、JAに対しての想いを述べるなら。
コロナの影響もあって、2021年は全国的な米価の大幅下落が発生した。そんな中で、〈するがの極〉の買取単価(JAから生産者に支払われる金額)は前年と同額でいきます、と聞いたとき、泣きそうになったのを強く覚えている。金額そのものの話ではなく、そこに至るまでに、担当の職員がどれだけ苦心したかということがあまりに容易に想像できたから。その方は「生産者さんに利益出してもらうことが僕らの仕事なんで」と、あっけらかんと語っていて、ものすごくカッコよかった。恩返しせにゃあと思ったものだよ。

一人の米農家として思うこと

私自身は兼業農家として活動していて、お米作りだけで生計を立てているわけではないけれど。全国の水稲農家の置かれている状況が、年々厳しくなる中で、いろいろなことを考える。

「年々厳しくなる」状況はどんなものかというと、たとえば
・肥料・資材の値上がり(農業に限ったことでもないけれど)
・米価の下落
・お米の消費量の減少(日本人一人あたりが年間で食べる量は60年前と比べて半分以下。今も減少中)
・耕作放棄地の増加や担い手不足(たとえば一度お米作りをやめた田んぼはあっという間に草だらけになって、水田として再生するのがとても大変。草や虫が増えれば周りの農地での栽培にも影響が出る)

などなど。

世の中にとってお米や水田の存在が求められなくなっていくのであれば、それはそれで仕方のないこと。極端に言えば、必要のないものを作り続ける理由はどこにもない(水田の環境保全機能など、「お米を作って食べる」以外にも田んぼの果たす役割はあるけれど、ここでは割愛します)。

日本の稲作の始まりは2000年以上前に遡るほど歴史があって、お米と、お米にまつわる精神文化は私たちの生活に深く根を張っている。これは紛れもない事実。ただ個人的には、長く続いてきたものだからという理由で守らなければいけないともあんまり思っていない。私たちは私たちの、あるいは私たちの子孫の求める価値観と生活文化のなかで、自由にお米と関わっていけばいいと思う。

じゃあなぜ私はお米作りをしているのか?
「おいしいお米を作るべく試行錯誤するのが面白いから」
「私自身がお米を食べるのが大好きだから」
というのも勿論ある。でもやっぱり一番は
「お米のある生活を、もっともっと面白くできると思っているから」
なんだと思う。これは私の生涯のテーマ。

ただ、私個人の想いをみんなに押し付ける気持ちは更々なくて。
今回の企画は「フェス」なので、関わってくれた一人ひとりが、それぞれの想いや動機のもとで、参加してくれるのがなによりのこと。
めいめいの気持ちを持ち寄った結果、ひとつの大きな景色がいつの間にか浮かび上がってくるのがお祭りの醍醐味だと思う。

来年も再来年も続くフェスにしたい

9/26現時点では参加店舗募集の告知しか出ていないので、消費者向けのイベント詳細については、ごめんなさい、もう少しお待ちください、と前置いた上で。

今年のフェスの盛り上がり次第で、来年以降の動きがどうなるかという話はぶっちゃけある。

全然そんなイベント求めてないよ、と言われてしまうのであれば、私も諦めよう。しかしはっきり言って勝算しかない。
将来的に、500店舗、20万人動員の一大イベントにすることは全くもって実現可能だ。なぜなら、あなたが力を貸してくれるから。

お米農家にとっても、地元の飲食店にとっても、ラブライバーにとっても、そして勿論、お米を愛してくれて、地域を愛してくれるあなたにとっても。

絶対に面白いフェスにしましょう。
よろしくお願いします。

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