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三段跳び(詩)

ホップ、ステップ
ここでスピードを緩めてはいけない
コーチからの指示が耳に残る
ジャンプ
足の力を込めて体を前方へ投げ出す
その瞬間、背中に翼が生えた
どこまでも飛んでいけそうな気分だった
足が地面に着地すると、砂埃が舞った
記録は自己記録を5メートル更新する大ジャンプだった
まわりから拍手が挙がった
しかし、僕は納得がいかなかった
あの空を飛んでいた距離が5メートルだけだったなんて信じられなかった

次こそはさらに新記録を更新してみせる
僕は再びスタートラインに立ち、ひとつ深呼吸した
ホップ、ステップ、そしてジャンプ
羽根は生えたなかった。記録も平凡だった

競技生活を引退するまで、羽根は二度と生えなかった
しかし、僕に後悔はなかった
あのたった5メートルの空中遊泳は
僕が大人になって、もっと苦しい場面になったときの大きな自信になると確信している

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