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重松清『ビタミンF』読了

同い年の作家さんの初読み。
まずは、ビタミンFなんてあったっけ? と思い、ネットで調べてみた。
「体内で合成できないリノール酸やリノレン酸といった脂肪酸(脂肪の仲間)がビタミンとみなされたことがあり、ビタミンFと呼ばれた。現在は使われていない呼び方」と書かれていた。
著者は、昔はあった家族の団らんがなくなってしまった状態を、今は使われていない「ビタミンF」に例えたのだろう。(後記を読んで違っていたことに気づいた。)

個別に感想を書くとだいぶ長くなってしまうので、総合的に思ったことを書く。
家族と言ってもすべてわかり合えることなどあり得ない。そもそも夫婦は他人であり、子供は思春期になれば自我が目覚める。それぞれお互いに言えない悩みは持っている。
そんな家族の中でも、父親は浮いた存在になりがちだ。特に昭和の典型的な家族である夫婦(妻は専業主婦)プラス子供二人という関係の中では、仕事を言い訳に父親は家庭を顧みない。ただそれは、自ら招いたことでもあり、変われない自分だけが浮いてしまうのも当然だろう。

基本的には家族を見守る父親の立場から書かれた短編集だが、父親は何もわかっていないと思われても仕方ない立場なのだろう。

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