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母は優しかった

「美月はやると決めたらしっかり出来るから、大丈夫だよ。やると思えた時にやればいいよ。」母はそう言った。私の事をそんな風に言ってくれたのは初めてな気がした。


母も父もよく姉達の話をした。私の上には2人いて、いつもその2人の話ばかりだった。「姉はどうだった」「その時姉はこうしていた」などと、私へのアドバイスは姉をもとにしていた(様な気がしていた)

姉達が出来ないことは私にはやらせてくれず、姉達ができることは強制的に私もやらされた。姉達に期待していたのに出来なかった事は私に回ってきた。

私は昔から親の期待を満たす為に頑張って生きてきた。そういう役割だと思っていた。

それなのに私は、1人前に社会人が出来なくなってしまった。うつになってしまった。曲がった事が出来ないせいで上手く生きられず、会社のお局を敵にまわしていじめられて精神を病んだ。それでも仕事を続けたのは両親に心配をかけたくなかったからだった。まともな人間にならなければ…とばかり思っていた。

そんな事で現在に至り、先日母と会った。本当は会いにくい。私はまともな人間じゃないから。


「今、どういう感じなの?」「体調が悪い時はどんな気分?」と母が話を聞こうとしてくれた。私はありのままを話した。

「本当は仕事がしたい。でも朝起きるのも辛い時がある。会社に迷惑をかける。だからどうしよう。」そこで母からの言葉だった。包み込まれるようだった。母が、本当に私の母親なのだと感じた。これが愛なのかも知れない。

親からの言葉がこんなに嬉しかったのは初めてだった。いつも比較されたりしていたから、私なんて見ていないと思っていた。それは私の勘違いであったし、親も本当は言葉に出来ていないだけだった。

なんだか少しずつ元気が出てきた。もう少し。もう少しで私らしくなれる。



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