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【フレスコボールマガジンRALLY & PEACE】 岸田直也[1]

それぞれのフレスコボールに対する想いを語っていただく、フレスコボールマガジン「RALLY & PEACE」。第5弾は、日本代表・岸田直也選手です。デビューから約1年で日本男子部門優勝、約1年半でブラジル選手権ミックス部門準優勝。その強さの根底にあったのは、曲がることのない信念でした。

出会い

岸田直也のルーツは、高校1年生からはじめた硬式テニス。高校卒業後も働きながら関西各地の多数のサークルに所属し、社会人テニスプレーヤーとして充実した日々を送っていた。2018年の夏のある日、市の代表として共に闘っていた先輩が知人を連れてきた。その知人が来た理由は、テニス選手に「フレスコボール」というスポーツを知ってもらうため。その「先輩の知人」こそ、日本代表・風味千賀子選手だった。

「打球音が気持ちよかったです。ラリーを続かせるフレスコボールは、テニスで言うボレー・ボレーに似ています。これなら苦手だったボレーの練習になるかもしれないと」。当初はテニスの技術向上のためにフレスコボールの練習に通っていた。

「直也なら、頑張ったら日本代表になれるかもしれない」

通うようになってからしばらくした頃に、風味選手からかけられた言葉。初めて“日本代表”という言葉を聞いたときは、まだ実感が伴わなかった。それもそのはず、初めてプレーをした頃は、まだ関西にクラブもない状態。多く集まっても4名ほどの仲間と、少しずつ練習を重ねていた。

世界を見た日。

岸田のデビュー戦は、松井芳寛選手と出場した2018年8月のジャパンオープン。関西からの参加は、風味選手も入れてわずか3名だった。

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「正直めちゃくちゃアウェイでした。ただ、大会の雰囲気そのものはすごく良くて。トッププレーヤーの皆さんを初めて間近で観て、ここに仲間入りしたい、と強く思いました」

男子の上位3組(第1位斉藤選手・夏目選手ペア/第2位芝選手・松浦選手ペア/第3位五十嵐選手・倉茂選手ペア)は圧巻だった。なかでも、芝選手・松浦選手のペアは、動画で観ていた本場ブラジルの選手たちにも似た躍動感を持っており岸田の心に強く残った。

「上位ペアの皆さんは迫力が全然違いました。自分もあんなふうに、魅せるラリーがしたいと思いました」。競技歴の短い自分が、もしここに食い込むことができたら凄いのではないか。最初はあまり実感のなかった風味選手の「日本代表になれるかもしれない」という言葉が、目標に変わった1日だった。

初の頂点

2019年1月には風味選手と同じ頃から東京でプレーしていた山下祥選手が転職を機に関西へ。練習を重ねるうちに、ひとり、またひとりと仲間が増えていき、フレスコボール関西 Grêmio VENTOが誕生。ほどなくして、岸田直也・山下祥ペアも結成された。

当初はテニスのために始めたフレスコボールだったが、いつしか岸田にとってフレスコボールでトップを目指すことが生活の中心となっていた。2019年の岸田・山下ペアの公式戦は、開幕から2大会連続5位。次の大会で優勝もしくは準優勝をしなければ日本代表への道は閉ざされる。そんな大会が、7月のミウラカップだった。

1年前のジャパンオープンではたった3人だった関西のメンバーは少しずつ増えていき、今回9人になった。

「ミウラカップから、大会の雰囲気がガラッと変わったのを感じました」

この年加入した多くの仲間にとっての初大会。緊張しながらも頑張る仲間たちの姿に、心を打たれた。まだ関西にクラブすらない時代を知り、大会でのアウェイ感も肌で知っている岸田だからこそ、いま、この場所が「居場所」になっている感動は大きかった。

「今までは正直、雰囲気にのまれたことも何度もありました。でも今回は関西からの仲間も増えて、その応援もサポートもすごく嬉しかった。トウマが慣れないながらも頑張っていたり、すぎちゃんが会場の誰よりも大きな声で応援してくれたり。そんな仲間の姿を見て絶対に、関西のみんなの前で入賞したい!と思いました。その結果、普段は取れないようなボールも取れたり、やましょーのところにキレイに吸い寄せられるようなボールも打てました」

絶対に関西の皆の前で入賞したい!その思いは山下選手も同じだった。ボールがとにかく落ちなかった。「奈良の忍者」とアナウンスされたとおり、どんなボールも拾った。加点対象となる股抜きショットも、勝利の女神に導かれるかのように何度も成功した。声援が飛ぶたびに笑顔がこぼれた。心からフレスコボールを楽しんでいた。

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動画:「ミウラカップ2019 岸田直也×山下祥ペア」

結果は優勝。岸田にとってフレスコボールを始めてちょうど1年での初タイトル。2019年最高得点(1253点)・最低落球数(5球)は、この年最後まで破られることはなかった。

[2]に続きます。

 

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