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【フレスコボールマガジンRALLY & PEACE】 岸田直也[2]

教えること

2019年ミウラカップ、山下祥選手とのペアで男子年間最高得点で優勝を飾り、ミックス部門・小澤彩香選手とのペアでも見事優勝を飾った岸田。フレスコボール界にどんどん頭角を現しはじめていた。

「大会1ヶ月前から禁酒、1週間前からは7時間以上睡眠を確保。夏場でもしっかり炭水化物とタンパク質を摂ることを意識しています。メンタル面では、なるべく1人にならず仲間と話してリラックス。大会前夜には、ラケットを白色のグリップテープに巻き直します。汚れが目立つ色ですが、白は気持ちが落ち着くので。そして、松井代表のマッサージを受けることも欠かせません」

勝利のルーティーンもしっかり定まって来たこの頃から、最初は抽象的だった「日本代表」という言葉がどんどん現実味を帯びてきていた。

そして心境にも変化があった。もともとテニス時代から教えることは好きだったが、トッププレーヤーとしての自覚も芽生え、さらに教えることを追究するようになった。関西だけでなく、福岡や四国にも積極的に足を運び、多くの人と練習をした。

「教えるときに気をつけているのは、“その人の考えに合った教え方をする”ことです。まずはその人がやってみたいやり方を実践してもらい、そこから微調整をします」

教わった人がしっかりと理解し、ほかの人にも教えられるようになることまで、岸田は見据えて指導する。

「僕が教えた人が10人いたとして、その人たちがまた10人にそれを教えることができたら素敵ですよね。自分の成長だけでなく、関わった人たちを底上げしたいですね」

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憧れの人

実は岸田は2019年の1月、ある「憧れの人」にペアを組んでほしいと打診していた。そう、岸田にとって初めてのジャパンオープンの際、本場ブラジル人を彷彿とさせるプレーで会場を沸かせていた芝卓史選手だ。1月の回答は、「チャンスが有ればね」。その後、2回目に打診した際も、回答は「考えとく」。まだ早かったか、と捉え、さらに練習に打ち込んだ。

最後の公式戦となる8月のジャパンオープン。小澤選手とのペアで見事優勝を飾った岸田は、晴れて2019年のミックス部門日本代表に選出された。

ともに選出された風味選手にいつか言われた「日本代表になれるかもしれない」の言葉は、ちょうど1年で達成された。そして憧れの芝選手もそこにいた。

「2019年からミックス部門でも日本代表を選ぶことになったので、僕はおこぼれでもらった代表だと思いました。男子だけの年間ランキングだと9位なんです。でも、行くからには絶対に結果を残したい」

謙遜する岸田だったが、その目は前だけを見つめていた。関東に住む小澤選手との遠距離ペアでひたすら練習を重ねた。たまにしか練習が出来ない分、実際に会って打てる際には濃く、質の高い練習になる。足りない部分は練習動画を頻繁に交換して補った。

結果は、ブラジル選手権で準優勝。フレスコボール歴1年半で、岸田直也は世界にその名を刻んだ。

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大会後、芝選手から話があると告げられた。後日届いたLINEには、こう記されていた。

「一緒に来年頑張りたいと思ってる!」

最初に芝選手にペアの打診をした頃の何倍も上手くなっていたし、何より、周囲のレベルアップも図りフレスコボール界全体を底上げしたいという想いは、当時の何倍も増していた。そんな岸田の姿勢が芝選手に伝わったのかもしれない。

「初めてお会いした時から、“ブラジルに近い人”という印象。絶対に何か得られる人だと思っていました。お話するにつれて、考え方が近い面もあることに気付きました。ブラジルで結果を出す、というはっきりしたビジョンを持っている方と組ませて頂くことで、絶対に自分も成長できると思います」

「憧れの人」は、2020シーズンをともに闘うペアになった。

主語=フレスコボール界

ブラジル選手権は、何もかもが新鮮だった。動画で観ていたような本場ブラジルのプレーヤーとのラリーは学ぶことも多かった。

「ブラジル人選手の動画を観てたら、めちゃくちゃ速くて強くて、打ちにくそうでしょ。でも実際に打ってみると、すごく打ちやすいんですよ」

そして同じ日本代表の選手たちの、栄光の瞬間も、悔し涙も、全てその目に焼き付けた。

風味・宮山ペアが大会の女子トップバッターでした。スピードガンのトラブルがあって、1分30秒くらいのところでラリーがやり直しになったんです。なにもかもが今までと違い、いつものふたりのラリーが全然出来ていなかった。悔し涙に、何も声をかけられなかったです…。独特のプレッシャーはあの場にいた人にしかわからないものがあるかもしれません」

「だから“ブラジルを知っている人”を増やすのも、フレスコボール界全体を考えると大切だと思っています。現地で感じたことを選手が各地域に持って帰ることで、フレスコボール界はもっと底上げできると思います」

いつだって、岸田の主語は「フレスコボール界」だ。

「導」

関西ではヘッドコーチも務め、自分だけでなく仲間の成長も後押ししている。「関西の手応えですか?もちろんあります。クラブが出来て1年が経って、思っていた以上にメンバーも増えてレベルも上がりました。誰かが抜けたら崩れる組織じゃなく、みんなが少しずつ確実にレベルアップしてます。すぎちゃんとかが他の地域の人に褒められたりしてて、本当に自分のことのように嬉しいですもん!」

この記事の依頼をした際も「僕のことはすでに知って下さっている人も多いのでまだ始めてから日が浅い人を先に取り上げてください!」と話していた岸田。仲間の活躍についての話題をこの日一番の笑顔で話してくれた。

ゆくゆくは関西だけでなく西日本、そして全国でコーチとしてフレスコボールを教えたいという夢もある。フレスコボール未開の地・鳥取県に、関西の仲間と月に数回足を運び普及する計画も、すでに進んでいる。

そして大会では、憧れの芝選手とのペアでブラジル選手権で結果を出す。

デビューから約1年で日本男子部門優勝、約1年半でブラジル選手権ミックス部門準優勝。いつだって最短距離で夢を叶えてきた男に見える岸田。しかし実は意外なほど地道に、ストイックに、そして周りを見渡して、一歩ずつ着実に進んで夢を叶えてきた。

練習が各地で再開され、新たな夢は、いよいよ本格的に動きはじめた。岸田はフレスコボール界をこれからも、力強く導いていく。

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プロ野球球団職員、スポーツメーカーを経て、現在は『ひとが集う空間作り』を学ぶべくテーマパークで店舗運営をしています。ここでは私の周りにいる輝く人たちのお話を聞き、自分なりにまとめて発信していきます。

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