【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~#33
7 黒船と砲台(4)
俊輔の案内で世子定広のいる部屋へ行った。俊輔は隣の間で控えているといった。
「井上聞多入ります」
「高杉晋作入ります」
二人で部屋に入り、定広の前へ進んだ。
定広が切り出した。
「聞多の最近の言動が過激だと皆から聞いておる。この存亡の折である、我が長州をより良くする方策を考えてくれぬか」
そう言って「止戦講和」と手書きをした紙を渡した。
「私は己の論が過激だと思うておりませぬ。そもそもこの国を焦土と化すことを、一度はお認めになったではありませ