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「やや肥満」デビュー

(※写真はイメージです)

ついに「やや肥満」となった。
主観で言っているのではない。
インボディに、きっぱりと言われたのだ。
インボディとは、フィットネスクラブやダイエットジムによく置いてある体成分測定機である。体を構成する基本成分である体水分・タンパク質・ミネラル・体脂肪を定量的に分析できるスグレモノだ。

「やや肥満」というこの言葉のもつ破壊力に唖然とする。
しかし実際私はここ5年間で体重約10kg、体脂肪率10%、とすくすく大きくなっている。
失って初めてありがたく思うやせ型だった頃。

傲慢なことに、
「肥満は、自分に甘いんだろ、自己管理できてないんだろ」
と冷ややかに思っていた。

だけど、私だって自己管理して体形を維持していたわけではなかったのだ。
たまたま食べても太らない体質だったのだと思う。
食べる量や内容を、「太る」という理由で制限したことなどなかったし、好きなものを好きなだけ食べてきた。
肥満体型の皆さんと一緒なのではないか。
根拠ない上から目線、ごめんなさい。

今までやったことのない食事制限、とても辛い。
意気込んで食事の量を減らしたりあっさりしたものにしたら、結局物足りなくてデザートに手を出す私がいる。
辛い時チョコに頼る癖、治らない。
そしてその辛い時は、毎日頻繁に訪れる。

まあるい顔、ぽっこりしたお腹、どっぷりした腰回り、やっぱりちょっとみっともないのかな。

食事制限は諦め、今度は自宅近くの区民プールで泳いでみる。
ジムで同じ時間筋トレとランニングをするより、効果が出そうな気がする。
区民プールで泳ぐなんて何年ぶりだろう。
塩素の匂いが懐かしい。

クロールでもしてみるか。
「いち、に、さん、パ」のリズムで息継ぎしながら、ゆっくりゆっくり泳ぐ泳ぐ。
得体の知れない、というか知りたくない白い浮遊物の無数に漂う塩素水に身を浮かべながら、幼少期通っていたスイミングスクールを思い出す。

着替えの下着を忘れ情けない気持ちでノーパンで帰ったこと、進級するたびに水泳帽に縫い付けてもらえるワッペンが誇らしかったこと、バタフライまでマスターしたらやめよう、といつも思っていたこと。
泳いでいるうちに、息継ぎ以外の時は目線はお腹の方に向けぐっと頭を引っこめることやバタ足の強度、腕の動き、指先の角度など当時指導されたフォームの詳細が思い出され、当時の感覚が戻ってくる。

スイミングを習わせてくれた両親もこの習い事が、まさか中年太りのダイエットに生かされることまでは想定していなかっただろう。

心地よい疲労感を感じながら、競泳の池江璃花子選手の事がふと頭によぎる。
18歳で白血病となり、先日行われた大学の入学式も闘病中の為欠席したという。
大学の入学式といえば、一生の思い出に残る人生の大きなイベントのひとつ。
出席したかっただろうなあ。
病床でキャンパスライフを思う彼女の気持ちは察するに余りある。

いいじゃないか、やや肥満くらい。
痩せていたって太っていたって健康に普通の生活が送れるということだけで十分ありがたい。

編集:円(えん)

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