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「正しい内容」と「分かり易い表現」の違い

物事には、いつだって「これが正しい内容」と言われるものと、それをよりかみ砕いて説明するための「分かり易い表現」というものがある。勿論、内容として正しいのは「正しい内容」と呼ばれる方であることは間違いないのだが、大衆向け・知識のない人向けに「正しい内容」を突き付けることが「正しい行動」だと私は思わない。

勿論、「分かり易い表現」において大前提となるのはベースが「正しい内容」を基にしているという事である。これを故意に捻じ曲げたり、ありもしないことを含めるのは、それは単なる「誇大表現」「吹聴」というものである。基礎としては必ず「正しい内容」を基にしなければならない。

ただ、これについても難しいものがある。Twitter上でよく見かけることではあるのだが、「分かり易い表現」を使って説明した内容について知識のある人が「本当はこうだ」と正しい内容と異なる旨を指摘している様を見る。これは受け取り側がその発信内容について「これは『正しい内容』として発信している」「これは『分かり易い表現』で発信している」と理解できるかによるのではないかと思う。

結局そこで食い違いが起こると、発信元が「これは分かり易い表現で発信しています」と、本来なら言わなくても良い様な事を追加で発信しなければならないのだ。「分かり易い表現」と言うものが、誰に向けて発信されているものなのかを、受け取り側がちゃんと理解してやる必要があるのだ。

「正しい内容」が全てだと私は思わない。何故なら、「正しい内容」の中には特有の人しかわからない情報も含まれていたり、専門用語なども使われることになる。そして詳しく説明すればその分、知識がない人から見れば「イメージしにくい」ものになるのだ。どれだけ多くの人に「イメージしてもらえる」かを決めるのが「分かり易い表現」と言うものだと私は思っている。

本noteを書く切欠になったのは「血液クレンジング」の話だった。医者の卵を身内に持つ方が、血液クレンジングについて教えてもらったという会話内容を公開していた。それについて「正しい内容とは呼べない」と言う様な指摘があったらしい。それについて発信元であるご本人は「この人は専門医ではない。分かり易く説明してくれているだけ」と話していた。

しかし、私はその会話内容を読んで、100%とはいかないものの、「血液クレンジング」が危険と言われている理由の大方を理解することは出来た。それはつまり、会話の中の医者の卵であるその人が「知識がない人に対しても分かり易い表現で話す」と言う事を心掛けてくれていた事に他ならない。医師にとっては最も大事なことだと思う。患者は皆知識のない人ばかりだから。素晴らしい片鱗を見せてくれた。

たまに私自身も「正しい内容」と「分かり易い表現」を履き違えられ、指摘されることもある。その度に追加で説明に追われるのだが、これは正直発信者側からすると「もっと他に言う事あるだろうよ」と言いたくなる様な出来事なのだ。情報源があって、それを基にした「正しい内容」が正しいことなんて誰でもわかっている。でも限られた文字数の中で、期待するイメージ像を得てもらう為には、「正しい内容」の一部を削らざるを得ない。

ひとつ例を挙げてみよう。少し過剰な表現であることは予めお許し頂きたい。

「茶色くて丸くて、バターやはちみつを掛けて食べるふわふわのケーキ」
「ホットケーキミックスと卵と牛乳を使っていて、フライパンなどの鉄板で焼き上げたもの。それにバターとはちみつを掛けたものをそう呼ばれる。他に生クリームやチョコレート、ベリーソースを掛けたものもある」

前者は恐らく単純に家庭で出てくる様な「ホットケーキ」をイメージされたのではないかと思う。ホットケーキミックスのパッケージに書いてあるような奴だ。後者は何がイメージ出来ただろうか。料理工程はなんとなく想像できるものの、なんだか情報量が多く、たぶん「バターとはちみつを掛ける」で「ホットケーキかな」と思ったものの「生クリームやチョコレート、ベリーソースを掛けたものもある」で若干「クレープ」に寄った人もいるのではないだろうか。もしくは「パンケーキ」という表現になったかもしれない。

勿論前述の2つの表現は同じ「ホットケーキ」を指している。しかし「分かり易い表現」か「正しい表現」かで、これだけ情報量が異なる。そして私としてイメージしてほしかったのは前者の「お皿の上ではちみつの甘い香りをさせているホットケーキ」の姿だ。ありきたりな姿で良い、いくつもイメージは必要としていない。「分かり易い表現」とはこういうものなのである。

「正しい内容」が最たる近道である場合も勿論ある。しかし往々にして「正しい内容」と言うのは、知識がない人から見ると「情報量が多いだけ」と見過ごされてしまうものに他ならない。

「分かり易い表現」について言葉の抜け漏れを見つけて「それは正しい内容ではない」と指摘するより前に、その内容が「誰に向けて発信されたものなのか」と言うのは一度考えた方が良いと思う。イメージ出来ない人に向けた言葉であれば、それは立派に「正しい内容」なのだから。

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