水引帯留開発記その1・素材の特性を考える
前回のnoteの続き。フォーマルな着物と普段着物があるように、祝儀袋や結納品だけではなく新しい用途の水引があっても良いのではないかと考え、まず帯留を作ることにしました。
伝統的なモチーフのうち、帯留にできるのはどんなものか?水引の素材感を生かすにはどうすれば良いだろうか?とりあえず手を動かしながら考える。
まずは基本の梅結び。
悪くないけど伝統工芸っぽさが強いというか、水引として普通っぽい気がする。この色のチョイスのせいかもしれないけれど、なんだか物足りない。私が使いたいものはこういうものではない。
そしてキラキラ質感の水引はザラザラ感が強くて滑りが悪く、また表面の金糸が摩擦に弱いのですぐに擦り切れてしまうことにも気付いた。金具に貼り付けるタイプの帯留なら良いかもしれないけれど、そうでない(金具を使わない)場合、これは致命的な問題です。
そして紐を通して使ってみると、水引の鋭利な先端が何かというと色々なものに引っ掛かりやすいことも気になりました。繊細な素材の帯なら傷付けかねないし、着脱時のちょっとした瞬間に着物に引っ掛かるかもしれない。これは大問題です。
改めて、水引を使うことのメリットとデメリットについて考えてみました。
水引とは、和紙のこよりを糊で固めたもので、その周りに光沢のある繊維や金糸を巻かれたタイプのものがあります。
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【水引を使うメリット】
・軽い
・ある程度の張りと柔軟性がある
・発色が良い、艶感が美しい
・折った形を保つことができる
・わりと丈夫
・帯留の素材としては珍しい
【デメリット】
・金糸が巻かれたタイプの水引は、摩擦で表面が擦り切れる
・繊維や金糸が巻かれたタイプの水引は、先端がほつれやすい
・先端が尖っていて引っ掛かりやすい
・結び目を留めるワイヤーが引っ掛かりやすい
・水に弱いかもしれない
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まず、【水引を使うメリット】を生かす方法を整理してみました。
・軽い→軽さを生かすため、帯留金具を使わないデザインにする
・張りと柔軟性がある→空間を持たせて結ぶことも考える
・発色・艶感が美しい→繊維が巻かれたタイプの水引を使い、祝儀袋っぽくない配色を考える
・折った形を保つことができる→折り曲げて紐を通す部分(帯留金具に代わるもの)を作れないか考える
・わりと丈夫→締めるところを締めて、より強度を高める
・帯留の素材としては珍しい→誰よりも先に作って完成形を世に出す
そして【デメリット】の対処法についても。
・金糸が巻かれたタイプの水引は、摩擦で表面が擦り切れる→金糸が巻かれたタイプの水引を帯留には使わない
・先端がほつれやすい→先端の処理を考える
・先端が尖っていて引っ掛かりやすい→先端の処理を考える
・結び目を留めるワイヤーが引っ掛かりやすい→ワイヤーの処理を考える
・水に弱いかもしれない→テストの結果、そうでもないことが判明。というか、帯留がひどく濡れるようなことは、そうない...
つまり一番の問題は、先端の処理とワイヤーの処理ということになります。
ひたすら手を動かし、解決法を探る日々。この頃は別の仕事もしながら、数か月ほど試作を繰り返しました。何せ、この当時水引で帯留を作っている人は他に誰もいなかったので...参考になるものは何もなく、自分で手を動かして考えるしかありませんでした。
(続く)
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