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ピザの届かぬ土地で。|母とピザのはなし。

突然ですが、皆さんの住んでいるところは、宅配ピザが届くだろうか?

そんな質問自体が意味不明な人もいるだろうけど。私の実家は配達圏外だ。

中学時代のバレー部の顧問(隣の隣の街住み。少し都会)には、ピザが届かない事を未だにいじられる。

最寄りのピザ屋までは、車で40分以上かかる。持って帰る間に冷めてしまう。スーパーのピザとはやっぱり違う、ピザチェーン店のできたて熱々ピザは憧れだった。

2か月ぶりに実家に帰っていた先週の土曜日、事件が起きた。

とある大手ピザチェーン店の公式移動販売車が車で10分程の、山の麓のドラッグストア駐車場に、いた。

午前中、父と鶏糞の買い出しに行く途中に発見したミーハーな母は大喜び。その時点では買わず、夕方、できたてを食べたいタイミングで私を誘って買い出しに出た。

注文して20分。ほかほかのピザ2枚を手に入れ、急いで帰った。

時刻は16:30。夕ご飯には早いけれど小腹が空いた絶妙のタイミングで、母と私はピザを頬張った。

トマトが効いたチーズがとろける温かいピザは美味しかった。なにより母が嬉しそうだった。にこにこしながら2人でほぼ平らげた。2ピースずつは父とばあちゃんにデリバリーしたけれど。

普段は実家から離れた都市部でひとり暮らしをしている私。宅配ピザはもちろん届く。宅配ピザはもはや"普通"になってしまっている。少し忘れていた。私が生まれ育ったのは、宅配ピザの届かない土地で。熱々のピザが食べられることがこんなにも嬉しくて"特別"なことなんだ。

嬉しそうにピザを食べる母を見て、胸の奥が少しキュッとした。当たり前だが、母たちは今もこの土地で暮らしている。

またすぐに帰ってこようと思った。

そんな土曜日のはなし。

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最後まで読んでくれたあなた。

ありがとうございました。

今日も良い1日を。

春瀬 蒼

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