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組織の大きさ、かたち、ながれ


組織の大きさ

皆さんが所属している社会福祉法人もしくは民間企業の組織の大きさはどのくらいでしょうか?
事業規模として拠点数やサービス活動収益計(売上げ)、職員数など、組織の大きさをはかる尺度は様々あります。
例えば、在宅系から施設系まで幅広くサービスを展開している拠点数が多い法人であれば、それだけサービス活動収益(売上)も多く、抱える職員数も多いですし、一法人一施設のような小規模法人ではその逆の状態です。

大きいメリット

社会福祉法人では、「社会福祉連携推進法人」による大規模化を進めています。
一法人一施設の小規模法人ではなかなか取り組みが難しい人材確保のための取り組みやブランディング、経営基盤強化・安定化、地域公益的取組の推進、災害時対応などについて、組織規模が大きくなることで経営資源を有効活用することに繋がります。
2023年8月2日時点で、全国で18法人となりました。

「社会福祉連携推進法人制度」より引用。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20378.html

「社会福祉連携推進法人」は「社会福祉法人」に限られておらず、「社会福祉事業を経営する法人」「社会福祉を目的とする公益事業を経営する法人」「社会福祉事業等に従事する者の養成機関を経営する法人」も社員として参画できる法人の範囲に含まれており、要するに、株式会社や学校法人も対象に含まれるということです。
社会福祉法人以外に株式会社や学校法人が参画できることで、事実上のM&Aのように吸収合併されてしまうのではないかとネガティブに捉えられるかもしれませんが、障がい者の通所系を中心に行っている法人が、サ高住やグループホームを展開している株式会社と連携すれば、日中の居場所と住まいの事業展開を構築できるかもしれません。
多様な「社会福祉事業を経営している法人」との連携によるシナジー効果を「社会福祉連携推進法人」は秘めていると私は考えています。

ただし、「社会福祉連携推進法人」として参画したい(参画してもらいたい)と思われるような経営状況やブランディング、事業展開を行っているほうがこういったが話があった時に合意がしやすいのは容易に想像がつきます(経営が赤字状態であれば、連携する法人にとってはメリットはないですからね)。

小さいメリット

法人規模が大きいことで事業の安定性が増す一方で、顔の見える規模ではなくなるため拠点や部署横断的な関係性を構築しにくく、セクショナリズムを生みやすいデメリットもあります。
組織の階層が増えることで、意思決定までに時間がかかることもあります。
次項では"組織のかたち"について取り上げますが、小グループごとにある程度の権限を委譲し、機動力を高めるような"組織のかたち"をデザインすることも出来ますが、その分、小グループごとの管理者のマネジメントスキルが求められることになるでしょう。

組織のかたち

次に、"組織のかたち(構造)"はどうでしょうか?
ヒエラルキー(階層)が明確なピラミッド型(△)やフラット型(ー)などの形があります。
また、その形の中でも「機能別組織」「事業部制組織」「チーム型組織」「マトリックス型組織」など、事業や情報の流れを管理しやすくするために"組織のかたち(構造)"はそれぞれの組織が何を重視するかによりデザインされています。

チャンドラーが主張した「組織は戦略に従う」とは、組織は存在することが目的ではなく、戦略が先行するべきだということをの主張しています。
変化する環境に適応する戦略を策定し、その戦略を実行するために最適な組織にしていく必要があるため、"組織のかたち(構造)"は外部環境に適応するためにその都度作り変える(変化する)ものなのです。
"プロジェクトチーム"や"タスフォース"は特定のプロジェクトの遂行や課題解決に向けた一時的なグループなので、"組織のかたち(構造)"そのものまで変える組織体ではありません。

機能別組織:
業務内容や機能を分けることによって、仕事に特化した人員配置を行う組織構造。業務内容に特化した配置によって、能力やスキルを専門化できるのがメリットですが、機能が複雑になりすぎると、意思決定まで時間を要してしまい、セクショナリズムに陥りがち。
事業部制組織:
複数の事業部に業務内容を割り振っていく組織構造。事業部単位で意思決定でき、スピーディーに企画やプロジェクトを実行できるのがメリットですが、同じ部門ではあるものの、それぞれの事業部で人員が必要になるため、コスト面が高くなる。
チーム型組織:
あるプロジェクトやタスクに対して、人材を招集して形成される組織構造。プロジェクトによって必要とされるスキルが異なるため、専門性の高い人材のみでチームをつくることによって、目的を達成しやすくなるのがメリットですが、チームにアサインした人材は、チームとは別に在籍している部署の仕事もこなす必要があり、配慮がなければ負担が増してしまう。
マトリックス型組織:
マトリックス型組織は、機能別組織と事業部制組織を組み合わせた組織構造。機能別組織での専門性の向上、事業部制組織でのスピーディーな意思決定を実現しつつ、業務の重複によるコストを抑えられる仕組みを形成できるメリットがありますが、複数の組織に所属することによって、従業員は混乱しやすくなる。

「組織構造とは? 代表的な5つの形態と事例を解説」より引用
https://talknote.com/magazine/organizational-structure/

福祉事業において、訪問系や通所系事業所では構成人数も少ないため、明確な組織を作りにくいことがあります(正規・非正規の比率も正規の方が少ないことがあるため)。

一方、施設系であれば、ヒエラルキー(階層)が明確なピラミッド型の"組織のかたち(構造)"を作りやすく、また"組織のかたち(構造)"を明確にしないと、指揮命令が不明確で、現場の報連相やマネジメントが十分に機能しません。
また施設系では、施設の居室形態(多床室もしくはユニット型)や階層(平屋もしくは多層階)、部署構成(介護・看護・多職種など)、本体とサテライトなど、"組織のかたち(構造)"は同じ"組織の大きさ"であっても、施設ごとに異なるでしょう。

そのため、コンサルに入る際は必ず「組織図」を提供してもらい、経営層はどの職層までか(経営改善のためのコアメンバーの選定)、指揮命令はどのようになっているか(経営改善の推進においてボトルネックになっている部署や人物は誰か)、セクショナリズムが生じていないか(管理者の力量や横のつながりがどうなっているか)などを確認します。
「組織図」が整理されていないと、ラインを飛び越えて報連相がなされたり、求められる役割理解の醸成、リーダーシップの発揮が十分機能されません。
次項では、「組織図」に沿った指揮命令や報連相のながれについてみていきましょう。

組織のながれ

ネットで「組織図 社会福祉法人」で検索すると、さまざまな法人の「組織図」が出てきます。
2法人取り上げて、どのような流れになっているか考察してみましょう。

社会福祉法人 弥栄福祉会 様

社会福祉法人 弥栄福祉会 https://www.yasakaen.com/chart.html

主となる事業が「法人本部事務局」「くまとり弥栄園付属診療所」「障害者支援施設くまとり弥栄園」「特別養護老人ホーム弥栄園」「介護保険在宅事業所」の5事業となり、管理者が位置付けられています。
よく見てもらうと下の階層(レイヤー)に「第3在宅事業所」「相談支援センターやさか」「熊取町地域包括支援センターやさか」が位置付けられており、課長級の管理者もいらっしゃるようです。
「介護保険在宅事業所」には部長級(非常勤)の管理者がいらっしゃいますが、この「組織図」では「第1在宅事業所」「第2在宅事業所」の2事業所を管理していることになります。
よって、在宅事業に対して指示出しする際は、部長級(非常勤)と「第3在宅事業所」「相談支援センターやさか」「熊取町地域包括支援センターやさか」の管理者に伝える必要があります。
実際は部長級(非常勤)の方に伝えれば、3事業所にも伝えてくれるのであれば、少し「組織図」を見直してもよいかもしれません(あくまでも私の仮説です)。
法人事業の全体像を把握する上ではこれでもよいですが、施設ごとに指揮命令や報連相の流れがより明確な「組織図」があると思います。

社会福祉法人 清風会 様

社会福祉法人 清風会 http://www.seifu-kai.or.jp/soshikizu.html

こちらの法人では、「福祉医療センター太陽の園」「特別養護老人ホームサンヴィレッジ」「在宅介護支援事業所サンヴィレッジ」が主となる事業で、左側に事務局長が管理する「総務」「環境保全」「給食管理」が位置付けられています。
役職ごとに階層(レイヤー)が整理され、「福祉医療センター太陽の園」では、「診療部」「薬剤部」「療護部」「地域支援部」ごとに部長、次長、課長、係長、主任が位置付けられています。
大きな組織であるということがお分かりいただけると思いますが、注意点としては役職者が多いため、報連相や意思決定に時間がかかってしまう可能性があります。
どのように経営層と中堅層の連携が取れているか、セクショナリズムを生まないよう部署横断(横の連携)がどのようになされているかが気になる所です(あくまでも私の仮説です)。

組織で働くこと

組織の大きさ、かたち、ながれについて取り上げましたが、「組織」で働いているということを伝えるツールとしても「組織図」を活用しましょう。
福祉・介護業界では、「スタンドアローン コンプレックス(孤立した個人(スタンドアローン)でありながらも全体として集団的な行動(コンプレックス)を取ること)」になりがちだと感じます(『攻殻機動隊』に出てくる造語なんですね)。

「「組織」で働いているという意識が弱い職員集団が、「利用者のため」「福祉や介護が好きだから」という想いで集まり、仕事(介護や支援)を行う」という状態でしょうか。
本来であれば、理念や大事にしている考え方など「組織」が有する価値観などに共感し、その実現に向けて貢献してくれる職員集団でありたいですね。

「組織」で働くからこそ成し遂げられる達成感ややりがいの大切さを伝えていってほしいと思います。
"スタンドアローン"となる職員を生まないためにも、「組織」について皆さんから伝えて下さい。

管理人

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