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10年

今の会社に入ってから10年を迎えることができました。
好きな仕事を10年もさせてもらい、社会福祉のため、お客様のためと言って熱中してしまうことが多いので、家族、特に妻には本当に迷惑をかけた10年だったと思います。
本当に感謝、感謝です。

私自身、10年といわれてもあっという間だったという感じで、同じことを繰り返す(ルーティンワーク)が苦手で、飽き性の私が、よく10年ももったなぁというのが本音です。
そういう意味では、同じ業務を繰り返していたものの、毎年それなりの変化や新たな業務など、飽きることなく続けてこられた出会いや業務環境があったおかげだと思います。
この10年、何をしてきて、どんなやりがいを感じていたのか、改めて棚卸しをしようと思います。

1.福祉サービス第三者評価 評価者

私は最初、東京都福祉サービス第三者評価(以下、第三者評価)の部署に配属されました(その部署の採用であったため)。
ここだけの話、第三者評価と情報公表制度を混同しており、前職の介護現場の時に受審したことがあると面接の時に答えてしまったのは若気の至りです。

2010年の評価者養成研修を受講することになりました。
それまで一介護事業書の職員だった私が、第三者評価で事業所を評価する立場になることが具体的にイメージできないなか、養成研修で様々な経歴の方々とディスカッションをする機会が新鮮でした(井の中の蛙から大海に泳ぎ始めた感がありました)。
2020年4月時点で、高齢分野:約120件、障害分野:約55件、子ども(保育)分野:約130件、生活保護:5件の計310件(重複施設・事業所を含む)の実績を積ませていただきました。

前職は高齢でしたが、第三者評価はサービス種別関係なく受けているので、障害や子ども(保育)分野など、これまで携わったことのないサービス種別を知る機会にもなりました。
最初は知らないサービス種別の経営層(施設長や主任など)に対するヒアリング(訪問調査)で欲しい返答ではなかった時にどういうふうに質問すればよかったか、「この評価者は我々のこと知らないな」と思われないよう緊張の連続でしたが、上司や外部評価者の方々にも支えられながら、なんとかやってこれました。

また、様々なサービス種別の組織・サービスの両面を経験することで、障害分野の取り組みが子ども(保育)分野に活用できたり、子ども(保育)分野の取り組みが高齢分野に活用できたりなど、現場の最前線の生の声を聞く大変貴重な機会だと思っていますし、そのサービス種別の専門書を一冊読むより、1回のインプット量が半端ないです。

第三者評価の目的には「情報提供」と「サービスの質の向上」があるのですが、我々評価者が触媒になり、新たな気づきを得られたり、サービスの質の向上を図るためのスタートラインを決めるお手伝いができればと思っています(現状を把握しないで闇雲にサービスの質の向上に取り組んでも、期待した以上の成果は得られないため)。
私自身、第三者評価を通して、福祉に特化したコンサルタントとしての基礎を作ってもらった(現在進行形で作り続けてもらっている)といっても過言ではありません。

そして、この第三者評価を通じて考え出したのが、「①経営理念」「②事業計画書」「③人事諸制度」から成る「コア・マネジメント」に基づいた利用者・家族満足につながるサービス提供を通して、組織が求める経営成果である財務・非財務の結果を残す概念図(経営的な数値に直結しているという考え方)を提唱しています(上から下に向かう矢印)。
今年度は、財務・非財務の結果を実現するために必要な事業計画書の行動計画の策定や「コア・マネジメント」の強化を通した組織的な対応力を高める必要性(下から上に向かう矢印)について説いています。

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2.実態調査チーム プロジェクトマネジャー

福祉関係団体が主体となって行う調査・分析業務のプロジェクトマネジャーを務めるようになり、今年で7年目を迎えました。
主に、特別養護老人ホーム、デイサービスの経営実態調査として、財務・非財務データ分析を通して、国が行う介護事業経営実態調査などの数値に対する根拠となるような調査業務を行っています。

プロジェクトマネジャーを務めるに至った経緯は、その当時、単にエクセルやマクロが得意だったということに尽きるわけですが、それでも手作業で行っていた調査・分析業務をデジタル化・ほぼ自動化することができ、多い年では7案件を同時進行させることもありました。

調査・分析業務の醍醐味として、「介護業界としては○○ということが言われているが、本当にそうなのか?」という仮説を、集計・分析し、数値やグラフに基づいて検証する面白さがあります。
例えば、今年度は新型コロナウイルスの感染拡大が特養や短期入所、デイサービスに与える影響度調査を行いましたが、最初に立てた仮説通りの結果になればよいのですが、そうでない結果が出たときに、なぜこのような結果・傾向を示したのか、その要因を突き詰めるために深く分析し、論理立てて解説することにやりがいと責任感を感じます(インパクトのある数字が一人歩きしてしまって誤解を招いたり、論理矛盾があっては、揚げ足を取られかねません)。
全国調査や他地域の調査結果と比較したり、集計の切り口(セグメント)を変えることで、単一自治体や地域性を踏まえた特徴的な結果・傾向をフィードバックすることができます。

この調査・分析業務は調査に回答していただく施設・事業所の協力なくして成し遂げることはできません。
できるだけ回答負担を軽減できるような工夫や調査結果を施設経営に活用していただけるようなフィードバック(経営指標の考え方や組織づくり・人材育成など)、そして国や市区町村といった自治体に働きかける際の根拠(エビデンス)として活用してもらえるよう、毎年その期待値は上がっているように感じます。

具体的な制度の見直しにつなげられるような制度提言には至らないかもしれませんが、その地域に属する特養やデイサービスの経営やサービス実態を知ってもらうきっかけとなり、介護保険事業計画の施設整備計画の見直しや地域性を踏まえた高齢福祉施策の見直しなどに活用してもらえるよう福祉関係団体と協力関係を築きながら取り組んでいます(このコロナ禍においても、この調査だけはしたいとおっしゃっていただいた団体があるということが励みです)。

3.組織づくり・人材育成

第三者評価の評価者や調査・分析業務を通して、組織・サービスの両面から組織づくりや人材育成に取り組んでいます。
前職が介護職員だったこともあり、現場職員が陥りやすい考え方や悩みなどを踏まえ、それぞれの職層にあった伝え方やアプローチ方法(例えば、LEGO®️SERIOUS PALY®️を用いた研修の導入など)を取るようにしています。

会議支援では経営的な数値目標の進捗管理やその達成に向けた行動計画の見直しなどについて、第三者評価の知見を生かしながら、他事業所の取り組みを参考にしつつ、目標達成を促していきます。

また、研修ではどうしてもサービス面に意識がいってしまい、経営層に対する不平・不満を抱きがちですが、「コア・マネジメント」の概念図を用いながら、サービス提供が経営の数値に影響していといった組織の一員であるという意識づけや事業計画書の活用など、組織面の視野を広げられるような人材育成に取り組んでいます。

組織づくりや人材育成はなかなか目に見える成果をすぐに出すことはできません。
しかし、複数年度で関わらせてもらうことで、確実に人が変わったと実感できる人材を育てることができます。
育てるというとおこがましいですが、我々のような第三者からの客観的な話や考え方を聞いて、自分自身の考え方とすり合わせ、一種の自信のようなものを生み出すんじゃなかろうかと思っています。

「(管理人が)会議の時に言っていましたよ」と「○○した方が良いと(管理人が)言っていましたよ」なんて引用してもらえると嬉しいですね。

福祉業界の組織は専門職の集まりでもあり、セクショナリズム(縄張り意識)が強く、お互いの利害関係がぶつかりやすいところがあります。
その場合、部署や職種(介護課・看護課、介護職・看護職)のレイヤー(層)で意見交換しているケースが多いです。
もう一つレイヤー(層)を引き上げると、会計基準状のサービス区分や拠点区分になり、特養としてどんなことが必要か、○○拠点としてどういった経営方針を取る必要があるかといったより大局の視点を持つことにつながります。

日々の利用者支援やケアは手段・方法であり、あくまでも目的は経営理念にあります。
コロナ禍における研修のあり方も検討がなされ、オンラインやウェブ研修へのシフトが一部進むと思います。
組織づくりや人材育成のテーマにおいては、職層によっても捉え方にバラツキがありますので、階層別研修を通したつながりの意識付けや「4:2:4の法則」といった仕掛けがますます大事になるでしょう。

そして、これから

この10年間、特に後半では業務の独り立ちもあって、いろいろなことに挑戦し、自分自身の市場価値としての「エンプロイアビリティ:Employability(雇用されるに値する能力を指し、継続して雇用されるための能力も含む概念です。 また、我々を取り巻く技術環境や産業構造の変化に順応し、迅速に異動や転職ができる能力。)」を高められるよう興味・関心を広げてきました。
例えば、社会福祉士や准認定ファンドレイザー、LSP®︎の資格取得と実践、そして今年は防災士の資格取得を予定しています。
取得しただけで、インプットしたことを十分にアウトプットできていないところが課題です。

これからは、これまでインプットしたことをアウトプット出来るよう、「知の深化」に時間と労力を費やし、福祉業界の健全発展に貢献していきたいと思っています。

「利用者に選ばれる事業所を増やしたい」「誇りを持って働く職員を増やしたい」という思いを持って、今まで微力ながら仕事をしてきました。
これからも福祉業界の経営層から、相談してよかった、頼んでよかったと思ってもらえるような存在で在り続けられるよう、精進してまいります。
引き続きのご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

管理人


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