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食えない時代にはワシントン・スクエアでチェスをやり収入を得ていました。

ウラジミール・ナボコフの『ロリータ』、アンソニー・バジェスの『時計じかけのオレンジ』、アーサー・C・クラークの『2001年宇宙の旅』など先鋭的な原作を映画化するキューブリックが今回に限ってなぜ大衆ホラー小説を選んだのか。

アカデミー賞の撮影賞、歌曲賞、美術賞、衣裳デザイン賞を受賞して高評価を得たものの前作『バリー・リンドン』の興行成績がふるわず制作費の回収に苦労したため、確実にヒットを狙える作品を制作する必要があったからです。

『きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第28回』

一年の半分は豪雪のために営業を停止する豪華ホテルに住み込み管理人として小説家志望の男と妻、子どもの三人がやってきて、一冬を過ごす間に不思議なことが彼らをおそいかかる。

原作とは持ち味の異なる『スタンリー・キューブリックのシャイニング』に仕上がったためにキングのファンが怒るのも無理はなかったが、一番怒ったのはキング本人だ。

この映画は、大きくて美しいけれど、モーターのないキャデラックのようなものです。

座ることができるし、革張りの匂いを楽しむこともできるけど、そもそも走ることができない。

問題なのは、ホラーというジャンル特性をはっきりと理解していないまま、ホラー映画を作ろうとしていたことにあるのです。
(1986年のキングのインタビューより抜粋)

後にキングは自らTV版『シャイニング』を制作しているが凡庸な出来栄えだった。

物語が原作から逸脱しているとはいえキューブリック版『シャイニング』の映画としての面白さは一級品で大ヒットした。

左右対称画面の不気味さ、当時新しかったステディカムを使いこなした美しい撮影、ジャック・ニコルソンの狂気を感じさせる演技など様々な魅力に満ちている。

息子のダニ−が三輪車でホテル内の廊下を走るシーンがとても印象に残っている。

ステディカムで撮影された流れるような画面にかぶさって板の間と絨毯のしかれた廊下との響きが一瞬にして変わる。

音と映像で組み立てる映画ならではの効果的な演出だった。

キューブリック監督は戦争小説、古代史、ブラック・ユーモア、SF、歴史小説など幅広いジャンルから原作を探し出して映画化する。

若い頃にLook誌のファッション・カメラマンとして働いていたこともあり独特な撮影技法で斬新な映像を創り上げることで定評がある。

キューブリックの初期写真作品集。


子供の頃に父親に教わったチェスはキューブリックにとって生涯を通じての関心事となり、貧乏時代にはワシントン・スクエアやマンハッタンのチェスクラブで収入を得て生活をしていたというエピソードも有名だ。

シャイニング ナウ&ゼン


この続きはまた明日。

スティーブン・キングの原作で唯一映画化が成功しているホラー作品のお話です。

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