シューマッハ・カレッジで体験した奇跡の物語(前編)
こんにちは。みづきです。
この記事は、イギリスの大学院シューマッハ・カレッジのグローバルコース『Shumacher Experience』に参加したときの体験記です。
わたしにとってのシューマッハ・カレッジでの体験は、人生を変える奇跡のような1週間でした。
ひとつでもあてはまる方は、「オリジナルな人生のつくり方」や「あたらしい教育や経済の仕組み」へのヒントになるかもしれません。
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シューマッハ・カレッジとは、「Small is Beautiful」を提唱するイギリスの経済学者E・F・シューマッハーと、マハトマ・ガンディーの思想を現代に継承するために創立された大学院大学である。
創立者は、サティシュ・クマール。
インド出身の思想家であり、活動家であり、教育者だ。
生徒数は数十名で、1年間の修士課程と、数週間の短期プログラムがある。修士課程では世界で唯一の「ホリスティック・サイエンス」を学べる学校として、世界各国から生徒が集っている。
カリキュラムには、農業、アート、コミュニケーション、システム思考、精神性、環境科学、再生経済学など多様なテーマが包含されている。
学校内にはガーデン(畑)があり、色とりどりの野菜を生徒自らが育てている。
「ガイア・キッチン」とも呼ばれるシューマッハ・カレッジのお料理はどれも毎回感動するほど美味しい。食事はすべてベジタリアンで、その6割が校内のガーデンで栽培したもので料理されている。
シューマッハ・カレッジの教育方法はガンディーの思想にもどづき、
「自己を開発すること」を目的としている。
シューマッハ・カレッジの創立者サティシュ・クマールはガンディーを師と仰いでおり、非暴力の思想のみならず、教育論についても多大なる影響を受けている。
シューマッハ・カレッジは、頭、心、身体すべてが一体となったプログラムで構成され、知識だけではなく、想像力や精神性も育まれる学校だ。
そんなシューマッハ・カレッジを、
「シューマッハ・カレッジとは〇〇である」
と一言で語るにはむつかしい。
それでもあえてわたしにとってのシューマッハ・カレッジを語るとしたら、
「源から創造し、行動する力を人に目覚めさせる学校」
だったな、と1年経ったいまだからこそ言葉になった。
この記事では、わたし個人がどのようにシューマッハ・カレッジに出逢い、行く決意をし、1週間でどのように変容を遂げたかを体験の具体例をもとに記録してみることにした。
シューマッハ・カレッジとの出逢い
わたしとシューマッハ・カレッジとの出逢いは、近藤瞳さんの「地球を生きるワークショップ」だった。
わたしには「この人に誘われたらとりあえず行こう!」と決めている友人が何人かいて、2022年秋、その友人に「鎌倉で面白いワークショップやるよ、来ない?」と誘われた。
わたしは、ワークショップのタイトルを見て
「"地球を生きる"ってなに・・・?」
とポカンと口をあけながらも送られてきた申込フォームに二つ返事で参加登録をした。
内容もわからなかったけれど、誘ってもらえるということは、わたしに必要な何かかもしれない。それに、信頼している友人に誘ってもらえることは純粋に嬉しい。
そんな風にライトに申し込んだこの体験が、まさか後に人生を変えるターニングポイントのはじまりになるとはこの時は知る由もなかった。
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わたしは、2022年に仕事をすべて手放し一時的なブレイク(休息)を取るキャリアブレイクを決意した。
キャリアブレイクをとる前までは、
「メリットが見えないと行かない」
「何につながるのかが不明瞭だと行かない」
という価値観を持っていた。
きっと多くのビジネスパーソンがそうであるように、
効率的に情報を取捨選択しなければ、限りある時間の中で前に進めない。
・・・と、思っていた。キャリアブレイクを取る前までは。
キャリアブレイクを経て、仕事から離れて何にも追われず時間がたっぷりある状態を過ごしたわたしは、「効率」や「即効性」を手放した。
その代わりに、「選択するときは、自分の感覚を信じる」という新たな技を身に着けていたため、内容よくわからないけれど、なんだかわたしに必要な気がする、という微かな直感に委ねることにした。
こういう未知への「えいやっ」が未来からみると自分の人生を変えたりする。だから人生は摩訶不思議で、面白い。
▼地球を生きるワークショップの体験記
で、990円のユニ●ロの靴下が歩くだけでペルシャ絨毯に変わる瞳さんのワークショップにすこぶる感動したわけだけれど(詳しくは上記事)、このワークショップの元となったのが、イギリスの大学院大学「シューマッハ・カレッジ」だと言うのだ。
当時、わたしのホットトピックは「身体性」だった。
身体をつかって感じることにこそ、まだ見ぬ何かがあるような気がしていた。
だからこそ、瞳さんから
「シューマッハ・カレッジは体感を重視した授業をしています」
と聞いたときに、直感的に「ビビビ!」とまるで自分の身体が何かの受信機のように反応したことを覚えている。
「シューマッハ・カレッジに、行きたい。」
足りなかったピースがカチッとはまるかのように、次なる目的地が決まった音がした。
「行きたい」 でも 「怖い」
そこからわたしはシューマッハ・カレッジの情報収集を始めた。1年間の休職期間をとって、エサレン研究所やフィンドホーンなどを旅してまわった友人夫妻や、実際にシューマッハ・カレッジのツアーに参加した方を瞳さんにつないで頂いて、Zoomで話を聞いた。
聞けば聞くほど、シューマッハ・カレッジに行きたい気持ちが募る。と同時に、行くことをリアルに想像すると色々な不安が湧いてきた。
いちばんのネックは、「英語がわかるかどうか」だった。
学生の頃は怖いモノ知らずでタイにインターンシップに行ったりもしていたけれど、もはや10年前のこと。
さらに今回は、英語がネイティブかつ、大学院。きっとアカデミックな話題も多いはず。
ほんとうは、ソーヤ―海さんが年に1度開催されている日本語ツアーに参加したかったけれど、なんと今年は開催しないという噂を耳にした。
(お子さんが生まれたとのことで、おめでたい!!)
うーん・・・どうしよう。
「行きたい」と「怖い」の天秤がゆらゆらと揺れ動いていた。
そんな中、パートナーにシューマッハ行きの相談をしてみることにした。
イギリスまで行くとなると、日数もお金もかかる。
正直、キャリアブレイクをとったがために、貯金も心許ない。
ちょうど当時はパートナーも会社を休職しているタイミングだったので、一緒に行けたらいいなという想いもあった。わたしたちは2021年に籍を入れたが、コロナを理由にハネムーンも行けていなかった。
「ねえ、ハネムーンでシューマッハ・カレッジに行くのはどう思う?」
わたしたちのパートナーシップにおいては、大体わたしが率先して何かをやりたい!と提案する。
「リビングの一面をブルーグレーのアクセントクロスにして北欧風にしたい」
「屋上で、流しそうめんやろう!」
「クライアントさん集めて、ホームパーティーやりたいんだよね」
「北海道に引っ越さない!?」
過去にもこんな感じで、わたしがこれやりたい、という提案に大抵は乗ってきてくれて(もちろん拒否されるものもある)、一緒に家の壁をDIYしたり、ホームパーティーがライフスタイルになったりと一緒に色んな体験をしてくれる優しいパートナーだ。
わたしのシューマッハ行きの提案に対して、「またはじまったか・・・」という素直な反応も混ぜつつも、彼自身も海外旅行は好きなので、
「いいんじゃない~、じゃあもろもろ調べてみようか」
と快諾してくれた。
ちょうどその頃、高校からの親友でハーフの友人りさもキャリアブレイク中だった。(類は友を呼ぶキャリアブレイク流行期だった)
わたしは3月に主催した瞳さんの「地球を生きるワークショップ」に、りさを誘った。瞳さんに会ってほしいと思ったし、彼女は旅が好きで世界に目を向ける広い視点の持ち主だ。だからこのワークも絶対に好きだろうなという長年の親友の直感があった。
そんな彼女は、「地球を生きるワークショップ」に参加した翌日に会社を休職することを決意する。頑張って働き続けた彼女の心と身体は、限界を迎えていたのだ。
そんなりさが、シューマッハ行きを英語が理由で迷っていたわたしに
「わたし、キャリアブレイク中にヨーロッパに旅しに行こうと思うの!最後シューマッハ行くから、一緒に行こうよ!」
と誘ってくれた。
わたしが瞳さんのワークショップにりさを誘い、
今度はりさがシューマッハ行きを誘ってくれた。
わたしとりさは、お互いがリーダーにもフォロワーにもなれる関係性だ。そういう関係性であれることが、本当に尊いな、と会うたびに感謝の気持ちが湧いている。
英語が喋れて、かつ信頼している彼女が誘ってくれたことでわたしの決意も固まった。こんな良い条件、滅多にない。りさが誘ってくれたことで、英語への不安や怖さが半分に減った。
「よし、もう行くしかない!行こう!」
周りからの後押しのおかげで、自分の中で揺れていた天秤がGOの方へと傾いた。こうして、わたしはシューマッハ行きを決意した。
やっとの思いで決意したものの、まさかの事態
そうして、シューマッハ行きを決め、シューマッハ・カレッジコースの予約サイトを見る。
そこで直面するまさかの事態。
2か月前にも関わらず、コースはすでに満席になっていた。
おーまいごっど。もたもたしていたら、埋まってしまった。
「いまはそういうタイミングだったのかもしれないね・・・」
と意気消沈した。
心はすでにシューマッハ・カレッジへとエネルギーを向けていたからこそ、まさかの事態に困惑し、心の方向転換を迫られた。
直線だと思って何も考えずにハンドルを握っていた道路が急に右折専用レーンで急に車線変更を迫られたような気持ちだった。
まっすぐ進んでいると思ったけれど、まさかの事態。
物事にはタイミングがある。きっと、今じゃなかったんだ。来年もあるだろうし、しょうがないか。そう自分に言い聞かせた。
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その1週間後。
パートナーがバタバタとリビングにやってきた。
「ちょっときて!!!」
わたしは彼のパソコンがある書斎に向かった。
「2枠、キャンセルされたのかなんか空きが出てる!!これ、とっちゃうよ!?」
たまたま、シューマッハ・カレッジのコース申込サイトをウォッチしてくれたタイミングで、なんとキャンセルが出たと言うのだ。しかも、2枠。
シューマッハ・カレッジは基本1人参加の人が多い中、2枠空いた。しかも、ドミトリー付きプランで。すごい奇跡。
「うわあ!ありがとう!今すぐ申し込もう!!」
すぐさま空き枠に2枠申込み、無事にシューマッハ・カレッジ行きが決まった。またもや車線変更。心のハンドルが忙しい。けど、今度は嬉しい変更だ。
消えかけていた心の明かりが、ふたたび灯るのを感じた。
わたし個人の「行きたい」という意図を超えて、誰かが「行きなさい」と告げているような気さえした。
そんな不思議な流れと後押しで、無事シューマッハ・カレッジの1週間コースに予約ができた。
瞳さんが地球を生きるワークショップで言っていた、
「人と人が出逢う確率は、自宅のトイレに隕石がすぽっとハマるくらいの確率。だから人との出逢いは奇跡」
という言葉を思い出した。
我が家のトイレに、シューマッハ・カレッジ行きのチケットが添えられた隕石がすぽっとハマった瞬間だった。
(余談だけど帰国後1年経って、このチケットをキャンセルした人物に出逢うことになる。まさに奇跡のご縁とめぐり合わせ…!)
いよいよ、念願のシューマッハ・カレッジへ
ドキドキしながら向かったシューマッハ・カレッジ。
そもそも久しぶりの海外で、若干の浦島太郎状態。コロナ前にフィンランドに行った以来の海外は、「どうやって旅するんだっけ?」と緊張しまくりで幕を明けた。
(シューマッハ・カレッジへの詳しい行き方については友人がこちらの記事まとめてくれています。)
乗り間違えないように気をつけながら、パディントン駅からトットネス駅へと向かう新幹線に乗り込む。
指定した座席には前の乗客が残したであろう謎の葉巻?が残っており、こういうのも海外っぽい(苦笑)
やばい葉巻だったらまずいので、そっと目につかないところへ移動した。
ロンドンから西へ3時間の新幹線は、遠いかと思ったら意外とあっという間だった。
都会の喧騒を抜け、徐々に緑と海で視界がいっぱいの、鮮やかな風景へと変わってゆく。
まるで東京から地方へと向かう景色の移り変わりと似ていた。
イヤホンで音楽を聴きながらウトウトし、いつの間にか眠ってしまっていた。
旅の疲れもあったのか、車内はほとんどの時間を寝て過ごし、まるでテレポートしたようにあっという間にトットネスに到着した。
GWRを降りると空は青く、晴れ渡っていた。
トットネス駅は、ちいさな田舎街の駅って感じで、わたしは胸を撫でおろした。ロンドンはあまりに人が多かった。
日本でも海外でも、都会より田舎街の方が好きだ。
ここからバスに乗って、シューマッハ・カレッジ最寄りのバス停へ。
The海外!という感じのビビットな黄色のバスに乗り込む。
段差が日本よりも高く、欧米人との体格差を感じる。
バスは駅から10分程度で、シューマッハ・カレッジ最寄りのバス停に到着した。
最寄りのバス停からシューマッハ・カレッジへは徒歩15分くらい。
トトロの森のような道をひたすらまっすぐ歩く。森の精霊が「ようこそ!」と出迎えてくれているような、うつくしい道だ。
そして森の小道を抜けたところに、「Shumacher college」と書かれた緑色のちいさな看板が見えた。
「わ!着いたぁ~~~~~~~~!」
と、もうそれだけで涙が出そうなくらい嬉しかった。
海外での旅路は、ひとつひとつの目的地に着くたびに大げさに嬉しいし、自己肯定感が高まるような気がする。
シューマッハのコースは、明日から。
前泊で前入りしていた高校の同級生りさと落ち合い、芝生の上でお互いのここまでの旅路を語り合う。
彼女はヨーロッパを旅してイギリスにたどり着いた。
旅の渦中の面白話を聞きつつ、わたしは満たされた気持ちでいた。
半生を共に過ごす親友と、大切なパートナーとイギリスでハネムーンを共にできるなんて、なんて想い出深い瞬間なんだろう。
今回、2人がいたからこそわたしはここに来れた。
人生の最期に思い出す、宝物のようにしあわせな時間だった。
1週間のコース「Shumacher Experience」スタート
前泊でもう心が満たされすぎて、このまま死んでもいいかなと思ったけれど、メインディッシュはここから。
わたしが今回参加したコースは、「Shumacher Experience」。
名前から察するにおそらく、もともとはシューマッハ・カレッジの大学院に進みたい人向けのオープン・キャンパスだったコースが、サティシュ・クマールが有名になりすぎてこの体験コースにだけ参加したい人が後を絶たない、という現象が起きているようだった。(わたしもその一人)
みんな緊張の面持ちで、続々と場に入ってくる。
今回の参加者数は24名。イギリス、香港、オランダ、スコットランド、スウェーデン、ブラジル、ペルー…ほんとうに世界各国から年齢も職業もバラバラな人たちが集まっていた。
そして今回のコース、蓋をあけてみると参加している日本人はなんと…9名!!
日本人は日本人向けツアーで来ることが多く、グローバルコースには日本人はいたとしても1人か2人だと瞳さんから聞いていた。今回は異例の人数。そのうち6名が瞳さんきっかけで参加していた。瞳さんの影響力、おそるべし。
今回場のホールドをしてくれたメインファシリテータ―は、Tily、Fazeのおふたり。それ以外にも、ボランティアスタッフのAnne、日本人ボランティアスタッフのMiyuさんがサポートに入ってくださることに…!
奇跡は、奇跡を呼ぶ。
まさかこんなに日本人が多いなんて。日本人だけでもなく、かつ日本語が聞こえる安心感もある。
安心と緊張とが入り混じりながら、場がスタートした。
オープニングでは、ファシリテーターの2人が丁寧に場のルールやスタンスをガイドしてくれた。
自分で自分を大切にすること。相手を大切にすること。
自分の声に耳を傾け、自分で自分をケアすること。
そして、共にいる他者の声に耳を傾け、関わりを持つこと。
プログラムはあるものの、参加してもしなくてもOKなこと。
自分の心と身体の声を聴いて、自分で選択すること。
校舎を自分の家だと思ってリラックスして過ごし、大切に扱うこと。
シンプルなガイドだけれど、このガイドがあるのとないのとじゃ大違い。大切にしてほしい心構えを共有しておくことで、場に「共通理解」が生まれた瞬間だった。
どんな1週間がはじまるんだろう…!
期待に胸を膨らませつつ、わたしの人生を変える奇跡のような1週間がスタートした。
後編へつづく。
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