Bさんにまつわる怖い話

割引あり

1. はじめに

わたしは小学生を対象としたとある学習塾で働いている(ほかにも仕事はあるが今回の話には関係ない)。そこで先日こんなことがあった。

以前より、というより、もうずっと授業をしっかり受講できておらず、コミュニケーションをとるのも一苦労な生徒さん(以下、Aさん)がいる。そういう生徒さんがとりたててめずらしいのかというと、うちの場合はそうでもなく、むしろそういう生徒さんが集まりがちなところではあるのだけれど、Aさんは中でもとりわけコミュニケーションがとりづらい生徒さんで、さじを投げている講師もいる。投げるくらいならこの仕事をしないでほしい、子どもに関わらないでほしい、「そもそもなんのためにいまここにいるの?」、「そういう態度、生徒さんにバレバレだよ?」とか率直に思うわけだけれども、それはさておき、その日はそんなAさんの気分がひときわひどく沈んでいた。
こちらのアプローチがおそらく届かないであろうということはわかりつつも、むろん完全放置という選択肢をとることはありえず、いつものように一対一の環境をつくり話をしてみた。Aさんの近況についてはそれとなく知っていたので、その状況を踏まえて、わたしなりに関係のありそうな話をしてみた。その中で「世の中のほとんどの大人は子どもに対してなめてかかってきたりいろんなことを強制してくる」ということを言った。今回は、この言葉にまつわる話を書いていくのだけれど、実は、それはAさんがその後どうなったかということではない。

2. Bさんとは

うちの学習塾では職務上の情報共有をチャットツールでしていて、その日もわたしはAさんとのやりとりを記録に残した。問題はこのあとに起こった。先ほど、コミュニケーションがとりづらかったり受講態度がよくなかったりする生徒さんに対してさじを投げる講師もいると書いたけれど、まさにAさんに対してさじを投げている講師(以下、Bさん)からわたしの記録にレスがついたのだ。
最初に書いておくと、このBさんはわたしと相性が悪い。とにかく悪い。「たとえば~というぐらいに相性が悪い」と書こうと思って「~」の部分に当てはまるなにかおもしろい例がないかどうか考えはじめてすぐ「思いつかないし、思いつくまでがんばるだけ時間の無駄なのではないか」と思うくらいには相性が悪い。ごくおおざっぱにいって、この世界をどうとらえているかとか、この社会がどのようなかたちをしていると思っているかとか、「生徒」や「子ども」という存在をどうとらえているか、また、どう接していこうとしているかなどなど、とにかくすべてが異なっている。おそらく向こうもそう思っているだろうし、お互いにそう思われているということを相手に知られているであろうという点にもおそらくお互い気づいている。
うちでは1つの授業をメインの先生とサブの先生の2人体制で担当することが多いのだけれど、以前はわたしの授業のサブをBさんに担当してもらっていたこともあったものの、最近はそういうこともゼロになった。これはわたしの完全な推測に過ぎず、外れている可能性もあるけれども、おそらくBさんがわたしと同じ授業に入りたくないということを上の人にお願いしたのではないかと思っている。あるいは、上の人がBさんとわたしの相性のことを鑑みて、Bさんからとくに要望はなかったけれどBさんとわたしを同じ授業に入れないようにしたのではないかと思っている。

3. 事件は起こった

そんなBさんが、よりによってAさんの件についてわたしにレスをしてきた。

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