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水の空の物語 第2章 第27話

「じゃあ、全然関係ないのか?」

「そう、はっきりとはいえなくて……」

 スーフィアは言葉につまる。

「お前にも分からないこと、あるんだな」

「あたり前でしょ。はっきり別人というには、風花とローフィは本質が似ていて……」

 飛雨は片手で髪をかき回した。

「やっぱ、記憶消しとけばー……」

 本当に。と、ため息が出る。

「消せてたら、夏澄も忘れてくれたかもしれないのにね」

 でも夏澄はと、飛雨はかすれた声でいう。

「でも夏澄、口にはあんまり出さなかったけどさ、本当は風花の記憶消すの、すごく嫌がっていたと思わないか?」

「……思うわよ」

「夏澄も、七回もよく我慢してくれたよな」

「夏澄、風花といると、ほんと楽しそうじゃない? なら、消さないでいいかなって、私も思っちゃったのよ」

 夏澄がローフィといたのは、もう遠い遠い昔のことだ。それでも夏澄は未だ、彼女を強く想い続けている。

 求める気持ちが募ると、ひどく疲れた顔をして、崩れるように眠ってしまうことがある。

「そうだな、夏澄は幸せそうだった」

 でもと、飛雨は髪をかき回す。

「これから、夏澄がもっと傷つくかもしれないぞ、どうすんだ」

「飛雨、過保護」
「過保護じゃないっ」

 いらいらすると舌打ちし、飛雨は地面に直にすわり込んだ。

 夏澄がー、夏澄がーと、繰りかえした。


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