僕は小説を書いているので、他の人から小説の書き方を訊かれることが多い。 貴様に教えることなどなにもない、と弟子を取らない主義の大家のように質問者を追いやることはできるのだが、人間社会に生きる才能のない身なので、「へい、なんでござんしょう」と訊かれたことには素直に答える。 だが、いつも答えることに窮している。窮しながらも、なんとか答えている。とりあえず最低限のルール(段落一個開けろ、とか…は二つだぞ)や物語構成・キャラ造形の軽いテクニック(ギャップをつくれーとか)とか
恋愛については、とにかく悩む。 悩むことで問題が解決できた試しがないのに、どうしても悩んでしまう。なんでだろう、と周りを比較して僻んでしまう。 いろいろ考えて(悩んで)、結局僕は恋愛に向かない性格に成長してしまったというようなことは自覚した。なにを当たり前なことを、外国との首脳会談で「某国の覇権的体制に強く抗議し、協調して取り組むことを確認」のと同じくらい「なにを今さら」なことだ。向かないことはやらない主義な人生だったけど、こればっかりは生物的に向き合わないといけ
ここ最近、激動だった。 何が激動だったかはプライバシー的な観点から詳細に話すことはできないが、週の半ばを過ぎた時点で一ヶ月分ぐらいの激動の日々を送っている。感情の上下は激しく、高天原に上り詰めたと思ったら地獄に突き落とされるような非常に乱れた感情を抱いて生活している。人間とはこうも他者に流され、影響され、そしてひどく緩い生き物なのだということを強く実感している。 何個かあるうちの一件の詳細を明かすとすれば、自分が好きなバンドの中心メンバーが脱退したことだ。スリーピース
就活中の身にも関わらず、京都へ行った。 実質的な逃避行である。勉強も、説明会も、インターンも、すべてを放り投げて「現実」という名の恐怖から身を遠ざけていった。物理的な距離もさることながら、心理的な距離も遠のいていくような。僕の心象は変に浮足立ってはいたが、足は地面から離れさせてくれなかった。たぶん、後ろめたさがピッタリと背中にくっついていたのだろう。俗世から身を隠しますと宣言するのは、まだ時間がかかりそうだ。吉田兼好への道はまだ遠い。 元来の目的は、森見
親の怠慢が、子どもをダメにする。 こんな過激な文章から始めると、実際にいま子育てをなさっている方から「もう、うんざりだよ」とため息をつかれる程度にはならない騒ぎになりそうだが、まあ世間一般に向けた教育批判というよりかは、個人的な不満についての吐露なので誰か他人を傷つけようとする意図はまったくございません(こうやってダラダラと「断りの言葉」を並べると「村上春樹みたいで気色悪い」とか声が飛んできそうなのですぐ本題に入りますが)。 社会で生きるための、勉強や運動とはまた違う
まずは恒例の 私が本籍を置いているカクヨムでかつてエッセイを書いていたのだが、年末に「私事10大〈重大〉事件」としてその年に印象的だった10個の事象について語っていた。超個人主義で完全なる自己満足なので、いまここでダラダラ語ると皆さまが眉を寄せるのは間違いない。10個のランキングを以下に挙げたのち、深堀はせずさらっと流すことにする。 まずはランキングから。 1位 大学入学 2位 アルバイト 3位 大学の授業による、思考力の成長 4位 The wools(拙作) 5位
まずは元ネタ 武田鉄矢主演のドラマ『三年B組金八先生』のいわずとしれた名言を、以下に提示する。 「人という字は、互いに支え合って人となる」 人は一人では生きていけない、皆と協力し励まし合いながらともに成長するものだ。だから、仲間を大切にするんだぞ――と、いうような趣旨を持った標語として後世に伝わった。 が、私の世代からは遠い過去のドラマで、果たしてどんな話の流れ(卒業する生徒に向けた良い話?)で金八先生が語ったのかは存じ上げない。もちろん、視聴者の心に響かせ、
今日、中学生の頃に好きだった女子が教室で殺された、という夢を見た。 おそらく同じ夢を見るのは三回目。そして、夢を見るごとにスト―リーが変わってくる。一回目は猟奇的殺人犯の犯行(逮捕済)で、今回のパターンはなぜか教室に同級生が集まり、そのなかの一人が犯行を自白するという筋書きになっていた。 他にも一回目にはラーメン屋の店主が事件のことを語ってたし、三回目では過去のことを俯瞰して回想する視点にも移り変わった。墓場はどこですか? と僕は近所のおじさんに訊こうとしてたり。
「十角館の殺人」ってあるじゃないですか。 あれ、僕がまともに小説を読み始めてから二冊目の作品だったんですよ。 そのこともあって、まだ本を読むのに慣れていなかったんですね。 今となっては余裕のある、ちょどいいページ数の「十角館」ですが、 当時の僕としては多いのなんのって。もう文字を追うのに疲れるわ疲れるわ。 そこで何をしたかというと、 「十角館」には実際に殺人が起こる「島」パートと、 それとはまた別で事件に重要な意味をもたらす「本土」パ