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【2021まとめ】音楽と芸術と文学と

まずは恒例の


 私が本籍を置いているカクヨムでかつてエッセイを書いていたのだが、年末に「私事10大〈重大〉事件」としてその年に印象的だった10個の事象について語っていた。超個人主義で完全なる自己満足なので、いまここでダラダラ語ると皆さまが眉を寄せるのは間違いない。10個のランキングを以下に挙げたのち、深堀はせずさらっと流すことにする。

 まずはランキングから。

1位 大学入学
2位 アルバイト
3位 大学の授業による、思考力の成長
4位 The wools(拙作)
5位 音楽活動
6位 マツオノアニメ
7位 女性との会話
8位 リーガルリリー(邦楽)
9位 村上春樹(小説)
10位 Steely dan(洋楽)


 大学に入り新しい人と交わりつつも、価値観はそんな変わっていないような……。いや、あれだ。初めてのアルバイトで「大人って子どもの延長線上でしかないんだな」ってことは本当によく理解できた。凝り固まった教育のおかげで、私のなかには「先生・先輩のような年上の言葉は絶対的であり、後輩・年下は目上を敬わなければならない。そして大人とは常に礼儀正しく、いろんな知識を持ちあわせ、無垢な年下を導く存在である」という価値観があった。

 でも、世の中にはガキみたいな大人もいれば、大人と遜色ない態度をする――つまり個々人の「特徴」であったのだと知れた。「その年になっていまさらかよ」と思う方もいるかもしれない。しょうがないじゃないか。これまでロクに人間関係を築かず、周りの大人といえば教師だけだった人間なのでね……。


音楽


 音楽を自分で奏で始めたのは、実は今年が初めてではない。高校一年生の頃にギターの授業が音楽であったのだ。まずはコードを覚え、その通りに簡単な曲を弾くことを目標とされていた。しかし当の授業は縛りが緩いもので、先生が最初にちょいと連絡事項をいったあとは練習時間という名の自由時間。私を含めほとんどの受講生は隣の人とただ話すことに終始していた(BUMP OF CHIKINの「Hello,World!」を周りの目も気にせず大合唱したものだった)。当然、ギターは上手くはならずに一年だけの授業を終えたのだった。

 あれから三年経ち、私はギターではなくドラムを演奏するべく組織に入会した。習ったコードをすべて忘れていたのもあるが、ギターには一切関わろうとせずにドラムをやりたがった。いまだ初心者なので、演奏レベルは当然下の下である。これから成長できるのかはどうかは、私ですら分からない。


 音楽を聴くことに関しては、「リーガルリリー」という女スリーピースバンドに出会えた。ぜひこれを読んでいらっしゃる読者皆様方にもお勧めしたい。まずは「東京」という楽曲を聴いてみてはどうだろうか。最初のギターの奏でる音の厚みもさながら、暗めの曲調でありつつもしっかりと耳に聴かせてくるような音楽である。

 ラジオを点けていて本当に良かった。夜のJ-waveにたまたま流れてきた「東京」で、一瞬で度肝を抜かれた。後述するが、私は昨今カルチャーに対する趣向が自分で分かってきて、ある特定の描き方でなければ面白く感じないなと気付くようになってきたのだ。そういったことを悶々と考えていたタイミングで、まったく新しい世界から扉を開かれたような感覚になった。いやもちろん、他の楽曲も言葉にできないほど素晴らしい。音楽を褒めるための語彙力が私にないのが、悔しいぐらいである。


芸術


 今年もアニメを観た。観たのだが、例年比としては過去最少だった。あまり面白い作品と出会えなかったのもだし、季節ごとの新アニメを追うこともなくなっていた。せっかくアマゾンプライムに入会したのにね。

 そのなかでも、「デュラララ!!」の承・転・結36話を一気見したのは心に残っている。非常に内容の濃い作品で、登場人物の多い群像劇作品のなかでもアニメ史に残る良作であろう。あとは、「PHYCO=PASS」の一期が面白かったかな。まあ、そんくらい。

 このようにアニメの視聴時間はめっきり減少したが、その代わりに漫画は例年よりも冊数が増えた。以前から好きだった「暗殺教室」「血界戦線」を読み直し、「よふかしのうた」「ゴールデンカムイ」「推しの子」――など。ジャンプ系が増えたかな? あまりジャンプを読んでるつもりはなかったのだが……。

 あと、「それでも町は廻っている」を全巻読めたのがわりと良かった。作品自体は、申し訳ないけど「まあ、面白いは面白いんだけどねぇ……」とゴニョゴニョ言葉を濁らすしかないのだが、作者の石黒正数と出会えたのが自分の趣味嗜好を知る上で非常に役に立った。

 なぜなら石黒氏はいままでに私が嗜んできた作品の創作者と深い繋がりがあるのだ。「四畳半神話大系」の原画・イラストレーター中村佑介氏、「映像研には手を出すな!」の大童澄瞳氏と個人的な関係があり(挙げた両作品のアニメは湯浅政明監督が手掛けた)、なおかつ小説家・米澤穂信氏とも繋がりがある。見事に自分が好きな作品たちであり、これを偶然と片付けていいものなのか。

 私には、どうやらこのあたりのサブカルチャー的作品に興味が向きやすいというのが自己推察できた。メジャーではないが、一定数以上の根強いファンがいるような作品たちである。これは大学で習った文学研究にも通じるものなのだが、果たして彼らの作品はどの過去作に影響して作られたのだろうか。同時代では、「化物語」シリーズの西尾維新やアニメ監督・新房昭之、そして「ハルヒ」の姿がチラついているし、もっと奥には80~90年代の「セカイ系」アニメ、そして「ドラえもん」が隠れているような。そんな気がしてならない。

 来年は、このあたりのジャンルをもっと深く掘り下げていきたい。


小説はどうなるのか?


 読者皆様は知らないと思うが、私はこれでも自作の小説をネット上に投稿している。最近pvが落ち気味なので、ぜひみなさんカクヨムで「蓮見悠都」の作品をいくらかチェックしてもらいたい。一瞬だけでもいいですから、ね。お手間は取らせません(←押し売り気味)。

 ランキングのほうでも書いたが、今年は忌避していた村上春樹にようやく手を出した。きっかけが高校時代に古文の先生が「あの世」と「この世」を説明するべく引用した、「アンダーグラウンド」というノンフィクション小説だった。今年の夏頃にふと思い出して「ああ読んでみようかな」とブ〇クオフに行ったら、肝心の「アンダーグラウンド」はなく「約束された場所で undergraud2」という続編だけが置かれていた。

 両作品も地下鉄サリン事件とオウム真理教について、村上氏の実際のインタビュー内容が載っているものなのだが、「1も2も変わらんだろ」と順番を考えず購入した(実際に特に支障はなかった)。

 ノンフィクションから村上春樹に入る人なんて、なかなかいないと自分でも思う。それでもこの「約束された場所で」に惹き付けられ、「アンダーグラウンド」本編とフィクションの短編集・長編も一緒に数冊読んだ。

 哲学的な内容が多く、抽象画を見ているようなストーリー運びである。そこに理論整然とした「理由」はなく、ただそう動いているだけなのに不思議と魅力的な世界観が作り上げられ、なるほど世界各国で評価されるわけだと身をもって納得がいった。

 技法の点ですごいなと思ったのは、村上氏の作品で見開き1ページに渡って地の文が埋め尽くされているのにも関わらず、きちんと読者に読まさせてる点である。東野圭吾の作品などが分かりやすいだろうが、地の文で登場人物の「僕は~と思った」のような思考する文章を極力省き、描写と会話文だけで運んでいく小説こそが「読みやすい」ものだと私は考えてきた。

 しかし、「謎」の提示の仕方が上手いのか、長ったらしい地の文でも読むことにまったくストレスは感じず、サラサラとページがめくれてしまう。もちろん一人称・三人称の違いはあるのだろうが、登場人物の感情に共感を促しながらストーリーを進めていくのは卓越した技法を備えた、村上氏にしか描けない小説であろう。

 巣ごもり期間が長かった今年も何十冊と小説は読んできたが、一つ一つの内容が印象に残っていない。やっぱり慣れかねぇ……どうも長く文章の物語世界と付き合っているからか、機械的に読んでいるような気がしてならない。根っから「面白い」と感じたのが前述の村上作品と「体育館の殺人」ぐらいじゃないか? いや、もっと多くはあるはずだが、いまのところは思い出せない。

 さて、最後に「つくる」ほうについて今年の総括をしたい。

 今年は長編小説を二つ書き上げ、そのうちの一つがカクヨムで公開中の「The wools」という作品だ。文京区を舞台に、学生運動を現代化した群像劇をミステリー仕立てで描いた。正直、トリックや犯人当てのミステリー要素についてを強調するつもりはなかったのに、変に組み込んだせいで最後らへんに落とし前をつけざるを得ず、要素を無理やり詰め込んだ中途半端な作品として終わってしまった。

 でも、個人的にはすごい面白く、楽しく書けた作品だった(「面白い」といってくれた方もいて、非常に救われた)。たぶん政治と価値の対立を扱った世界観、そして自分が創造した各登場人物が我ながらすごい好きなのだ。続編もちょっと考えてたりしもするが、カクヨムで公開する可能性は低いだろう。

 短篇・ショートショートは計10作品ぐらいだろうか。いま実際に数えてみた数字なのだが、意外と少ないという感想だった。もうちょっとコンスタントにショートショートは投稿していると思っていたが。まあ、夏にある長編小説にかかり切りになってしまったのが原因であるかも。この作品もロクにうまく設定が作れずにお粗末な展開となってしまい、ゴミ場に捨てる代わりに適当な新人賞に応募してそれっきりにした。

 今年は文学新人賞には掠りともしなかったのが、反省といったところか。でもどうすりゃいいんですかね? 異世界転生小説でも書けば最終選考ぐらいには行くんですかね? と適当抜かしていますが、いまは一から自分の「創作」について見つめ直している最中です。「カクヨムコン」に投稿しようとしていた長編もグダグダになりそうで、残り一か月では間に合いそうもない。短編部門に切り替えるかは、いまのところ未定です。

 さて今年はいろんな出会いがあって激動の一年でしたが、改めてお礼申し上げます。以上、お疲れさまでした。


 

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