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子供の自分に戻って読みたい少女と猫の物語~積読解消への道📚


今回は積読解消への道ということで1年間寝かせていた、かのこちゃんとマドレーヌ夫人の感想文を書いていこうと思う。


この本を、私は遥か昔の小1の自分に重ねて読んでいった。
私はその頃、前に有料の記事でも書いた事があるが、今でも自分に影を落としている出来事に巻き込まれたりで、いい事ばかりがあった訳ではない。だけど、無邪気な子供からほんの少し賢くなっていく過程にいた頃の、あの何とも言えない楽しかった時代を思い出す事ができて良かったと思う。


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この物語は、日常の出来事を淡々と描いていくのかと思いきや、時折不思議な出来事が起こっていく。主人公は小1の女の子のかのこちゃんと外国語が話せるアカトラの猫のマドレーヌ夫人だ。

マドレーヌ夫人というからには誰かの奥さんなのだが、マドレーヌ夫人の夫はなんと犬なのだ。かのこちゃんの家で飼われている、歳を取った柴犬の玄三郎がマドレーヌ夫人の夫だ。マドレーヌ夫人が操る外国語というのは、犬の言葉の事だったのだ。

夫人、という言葉からは優雅で気高いイメージが連想できる。マドレーヌ夫人はその言葉に違うことのない優雅で気高い猫だ。

もう一人の主人公のかのこちゃんは、明るく活発な女の子だ。小学校に入るまでは親指しゃぶりが止まらなかった。だけど、ある時マドレーヌ夫人に指を噛まれてしまう。その時に自分の指の匂いを嗅いだかのこちゃん。あまりの臭さに、その瞬間に指しゃぶりを止める事ができたのだ。
それは知恵が啓かれた瞬間で、その時以来かのこちゃんはお父さんに教えてもらった難しい言い回しが好きな女の子になっていくのだ。

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第1章はかのこちゃんの物語だ。

小1の時、私は何をしていただろう。体に対して大きく感じられるランドセルを背負って、あちこちよそ見しながら学校に通っていた。クラスに入ると、男の子も女の子も関係なくみんなでコロコロと遊んだり、勉強をしたりした。

かのこちゃんの学校での過ごし方の描写を読みながら、私はそんな事を思い出していた。私が小1だった頃と今の時代では、取り巻く環境やさまざまな事が違ってきてはいるが子供時代の本質的な事というのはあまり変わらないのかもしれない。

かのこちゃんは、同じクラスに気になる女の子を見つける。その子と仲良くなりたいのに、なんとなくすれ違いが続いてうまくいかない。
仲良くなりたいのになれないのは、なかなか焦ったいものだ。
だけど、ついにかのこちゃんと仲良くなりたかった女の子のすずちゃんと刎頸の友になれたのだ。この言葉は、私は初めて聞いた。仲良しの友達という意味みたいだ。
お父さんに難しい言葉を教えてもらって、実際に使うかのこちゃん恐るべしだと思った。

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第2章はマドレーヌ夫人の物語だ。

マドレーヌ夫人はいわゆる野良猫だった。マドレーヌ夫人はゲリラ豪雨が降った夏の日に犬の玄三郎の犬小屋に逃げ込んできた。玄三郎はかわいそうに、ゲリラ豪雨の降る中ずっと犬小屋のそばにずぶ濡れで立ち尽くしていた。

その日から、猫と犬の夫婦が誕生したのだ。猫と犬。種を超えた愛情を育んでいる夫婦だ。

マドレーヌ夫人は、この地域の猫達の仲間になる事もできた。
草むらでの猫の集会での様子は、本当に猫達がこんな事を言っていそうで楽しい。
うちの猫達は外に出さないので機会はないけど、もしあの子達も猫の集会に行ったならあんな感じなのだろうか。そんな機会があるとすれば、私も潜入して、思い切り猫まみれになってみたいと強く思う。

そんなマドレーヌ夫人は不思議な体験をする。
なんと猫股になってしまうのだ。
夫の玄三郎に猫股の話をしてもらい、昼寝から目覚めたら尻尾が二つに割れている。驚いたマドレーヌ夫人と最初に目が合った人間のかとりさんに変身してしまったのだ。

かとりさんになったマドレーヌ夫人は、人間として色々な体験をする。その中には猫が大の苦手なプールに入る事も含まれている。そして、ついに大仕事をするのだ。
それは、病気の玄三郎のために夫が好きなミンチ肉を精肉店で買う事。かとりさんになったマドレーヌ夫人は見よう見真似で何とかミンチ肉を買う事ができた。

そのミンチ肉を急いで持ち帰り、夫の玄三郎の餌皿にミンチ肉を入れる事ができたのだ。

その後、急に眠気がきたマドレーヌ夫人。目覚めると、元の姿に戻っていった。だけど、それは夢の話だったようなのだ。それでも、夫の玄三郎は実際にお肉を食べたようなリアルな夢を見ていた。

これは、事実なのかお互いの願望が見せた夢だったのか。
私は実際に起こった事と思いたい。病気で食が細くなった夫のために、精一杯の事をしてあげたのだと思いたい。

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第3章はかのこちゃんとすずちゃんの物語だ。

もうすぐ夏休みが終わるというのに、かのこちゃんは宿題がまったく終わっていなかった。ドリルも自由研究も何もかも。
かのこちゃんはお父さんの手を借りながら、宿題をするもののすぐに飽きてしまう。

やっぱり、どこの子も同じなんだなぁと思った。何を隠そう、うちの子供達もそうだった。ドリルや夏の友などは自分でやらなくてはいけないが、工作や自由研究は親の宿題の様だった。あげく、あまりに進まないので宿題が終わるまではゲームボーイアドバンスを没収したりもした。

ついでに、もうひとつ言えば自分自身もそうだった。宿題は7月中は一生懸命にやり、8月に入るとダラダラと過ごし、残り1週間でラストスパートをかけるのだ。当然、工作は父の手がガンガン入っていた。そして、最終日までがんばって抜け殻になるのが毎年のお約束だった。

さて、かのこちゃんはマドレーヌ夫人を見て、いい自由研究を思いつく。それは、マドレーヌ夫人のお散歩マップを作る事だ。かのこちゃんはカメラを片手にマドレーヌ夫人の後をついて歩く。例えそれが塀の上だったとしても。
そんなかのこちゃんのお散歩マップはとてもいい出来栄えで学年の代表になった。かのこちゃん、ひとりで自由研究を完成させてエライ!と私は心底思った。

これからも楽しい日々が続くと思ったら、そうはいかないのが世の常だ。

大好きなすずちゃんが転校するという。それも遠い遠いインドに。

せっかくできた刎頸の友のすずちゃんとお別れなんて、どんなに悲しい事だろう。インターネットがあるから、連絡は取れてもそう簡単には会える距離ではない。

そんな時、神社の秋祭りが開催される。かのこちゃんはすずちゃんを誘いたかったのに、すずちゃんが風邪をひいて欠席していたりで誘えなかった。
失意の中お祭りに行ったかのこちゃんは、偶然すずちゃんに会えるのだ。
二人でお祭りを楽しむ場面は、自分もその場にいるような気がした。仲良しの友達と回る出店はとても楽しいものだっただろう。お別れをする前の最後の思い出になって良かったなと思った。

すずちゃんはインドへと旅立つために学校を転校していった。泣かないでさよならしようと約束したけど、かのこちゃんは背中を向けてから約束を破ってしまった。おそらく、すずちゃんも約束を破ってしまったと思う。でも、それはしょうがない事だ。なぜなら二人は刎頸の友なのだから。

そして、それから数日後病気だった犬の玄三郎は亡くなってしまった。

9月はかのこちゃんにとって嬉しい事もあったが、大きな別れが二つも起こる、大人になっても一生忘れる事のない月になったみたいだ。

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第4章はかのこちゃんとマドレーヌ夫人の物語だ。

かのこちゃんはマドレーヌ夫人にひとつの提案をする。その提案とは、玄三郎も亡くなってしまったのだから、もうこの家にいなくてもいいし自由になっていいというものだ。かのこちゃんは、マドレーヌ夫人に付けていた珊瑚色の首輪を外してあげた。

外飼いの猫とはいえ、首輪をしていれば、それは野良猫ではない。その首輪を外して自由にしてあげるというのだ。猫飼いからすると、その選択はあり得ないと思う。だけど、かのこちゃんは自由を愛するマドレーヌ夫人の気持ちを思いやったのだろう。

首輪を外されたマドレーヌ夫人は三日間の猶予をもらい、いろいろこれからの事を考えていた。
新しい土地に行きたい欲、ここでできた友達の事、かのこちゃん達家族の事。マドレーヌ夫人は自由を手に入れて、新しい土地に行きたくもあるけど、それらの事が気になって旅立てないでいる。

三日目にマドレーヌ夫人は猫の集会に顔を出す。そこでお別れを言うもみんなに引き留められる。最後にとみんなに話をねだられたマドレーヌ夫人は、物語を語り始めた。それは、ある一匹の猫が猫股になったという話だった。

マドレーヌ夫人は実は2回猫股になったというのだ。それまでその話は出てこなかったので、いったいいつ変身したのかと思えば、あの秋祭りの日にすずちゃんのお父さんに変身したらしい。

そういえば、かのこちゃんはすずちゃんのお父さんに会った時、なにか違和感を感じていた。私もまさかそんな事があったなんてと期待を裏切られたような思いだ。と同時に、お世話になったかのこちゃんのために危険を冒してまで一肌脱いで行動するマドレーヌ夫人の猫っぷりにとても胸が熱くなった。

マドレーヌ夫人が猫股になって、すずちゃんのお父さんに変身しなければ二人は秋祭りでの最後の思い出は作れなかったのだから。マドレーヌ夫人は優雅で気高いだけではない、賢くて愛情にあふれた猫なんだなと思う。

よく猫は冷たいとかクールとか言われるけど、けしてそんな事はないと思っている。猫は周りをよく見ている。そして、何かあればそっと寄り添ってくれる優しさを見せてくれるのだ。

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三日目の日、かのこちゃんは学校から帰るのがいつもより遅かった。
それは、自由研究のお散歩地図が1年生の代表に選ばれて、生徒玄関に掲示される事になったからだ。

かのこちゃんは帰ってくるなり、マドレーヌ夫人がいるかどうかくまなく探して回る。けれど、マドレーヌ夫人はどこにもいない。
淋しそうに縁側に座るかのこちゃんを思うと、私も涙がにじんでしまう。

マドレーヌ夫人はもう帰ってこないのだろうか。
ひょっこりとまた帰ってくるのだろうか。
かのこちゃん一家とたくさんの友達が待つこの街を本当に出ていったのだろうか。

かのこちゃんは、もう少しマドレーヌ夫人を待とうと決めたようだ。
私は、マドレーヌ夫人はまた帰ってくると思っている。優雅に気高く帰ってきた後は、何もなかったかのように日当たりの良い場所で昼寝をしていると思いたい。
夫と共に暮らした、あの犬小屋の中に帰ってくると信じたい。
その時は、かのこちゃんにまた珊瑚色の首輪を付けてもらうのだ。そして、この先もかのこちゃんの家族と、たくさんの友達と楽しく穏やかな毎日を過ごして欲しいと強く願っている。




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