【春ピリカグランプリ2023】猫を癒す指を持つ女

　「にゃーん」
　仕事から帰ってきた美沙子の足元に猫が3匹すり寄ってくる。ソファに座り込んだ美沙子の膝を求めて3匹の猫は我先にと牽制しあっている。そんな猫達を順番に撫でると、どの子も皆うっとりとした顔をして喉を鳴らしている。そんな様子を見た美沙子はある思いが浮かんできた。

　もしかして、私って猫を癒す力を持っている？

　それを実証すべく、美沙子は猫カフェにやって来た。ここの猫達はあちこちで保護されてきた猫で、人馴れした子からまだ心を閉ざした子までその状況は様々だ。美沙子が床に座るとどこからともなく猫がやって来て、やっぱりここでも膝の上の争奪戦が始まった。そして、順番に猫達を撫でるとどの子も美沙子の家の猫達と同じようにうっとりとした顔をして喉を鳴らした。

　そんな様子を見ていた猫カフェのオーナーが美沙子に話しかけてきた。
　「お客様は、猫を癒す力を宿した指の持ち主です！今までたくさんの猫好きを見てきた私が言うのだから間違いはありません！お客様、この指の力を猫達のために使ってみませんか？その力は本物です。私が保証します」

　実は、この猫カフェのオーナーも猫を癒す力を宿した指の持ち主だったのだ。オーナーに説得された美沙子は、オーナーの協力を仰ぎながら猫達のために指の力を使っていこうと決心した。

　美沙子は一念発起して、猫のためのマッサージサロンをオープンさせた。店の名前は「雲の上のねこ」という。雲と猫を組み合わせたかわいい看板を店先に掛けると、美沙子は腕まくりをしながら店の中に入っていった。

　いよいよオープンの時間だ。外には美沙子のSNSを見たり評判を聞きつけた猫の飼い主さんが何人か待っている。ドアを開けた美沙子は明るい笑顔で挨拶をして、飼い主さんと猫を招き入れた。

　猫は美沙子に撫でられて、どの子もうっとりとした顔をしている。癒されている猫を見ながら嬉しそうな顔をした飼い主さんがお茶を飲んでいる。美沙子は猫達にマッサージをしながら、これが自分に与えられた天職なんだなと思った。これからも猫にもっと喜んでもらえるように技術を磨いていこうと強く誓った。

　そんな猫や美沙子をちょっと羨ましそうに眺めている美沙子の3匹の猫達がにゃーんと鳴きながらそばに寄ってきて、マッサージされている猫に毛繕いを始めた。

（952文字）

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今回、春ピリカグランプリに応募します！

運営の皆さん、お世話になります。
どうぞよろしくお願いいたします！

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