見出し画像

Global Business Trend vol.16 | Quibiの買収:そもそもなぜ半年で閉鎖したのか?

2020年初めに出た緊急事態宣言やリモートワークのおかげで、昨年は大好きな洋画や海外ドラマをたくさん鑑賞できた。2020年も後半に入ると、私がNetflixで観たかったものはほぼ制覇してしまったため、スマホ動画アプリをQuibiをダウンロードすることに。しかし、ダウンロードしてから1ヶ月でQuibiはサービスを閉めてしまった。

Quibiをダウンロードした当初、豪華なキャストとコンテンツの豊富さにかなり驚いた。アナ・ケンドリックやリアム・ヘムズワース、大統領就任式のパフォーマンスが話題なJ.LoやJジョナスブラザースなど、海外ドラマ(特にロマンスコメディー系w)が好きな人はテンションが上がるようなラインアップばかり。私はドキュメンタリーも好きなのだが、NBAで起きた人種差別問題を題材にしたBlackballedや、American Apparelを追放されてしまった元CEO Dov Charney に当時の話を聞いた Big Rad Wolfなど、面白い番組がたくさんあった。しかし、私がBig Rad Wolfの最終話を観終わる前に、Quibiは閉鎖されてしまったのだ。

Quibiは何故浸透しなかったのか?

「Quibiをダウンロードしたよ」とアメリカ人の婚約書に伝えたら、「周りでダウンロードしてるのは君しか知らない」と言われたくらい、アメリカでは少数派な配信サービスだった。昨年の夏には"Is anyone watching Quibi?" という題材で記事がVultureから出るくらい、浸透していなかった。

Quibiは、大物映画プロデューサーのジェフリー・カッツェンバーグ氏が創業。投資家から18億ドル(約1880億円)の資金を集めて2020年4月にスタート。スマホで観る体験にフォーカスした新しいコンテンツ配信プラットフォームとして、DisneyやViacomなど、数々の大手から資金調達に成功。大物映画プロデューサーのプロジェクトということもありオリジナルコンテンツも豊富に制作することができ、大物スターとの契約もできたのだろう。しかし、大物スター・魅力的なオリジナルコンテンツ・低価格(当初のサブスク費は$4.99/月)という三拍子を揃えても、Quibiは失敗に終わってしまった。原因は何だったのだろうか?自分なりに考えてみた。

1. 「スマホフォーカス」にする必要はなかった
NetflixやHulu、Amazon Primeなどのストリーミングサービスは、デスクトップやTVが主流。しかし、スマホから鑑賞することももちろん可能である。スマホにフォーカスしたアプリとして、Quibiは縦長のコンテンツを作成。それによって他社から差別化しようとしたのだと思うが、1日にたくさんのスクリーンを往復する現代人にとって、「スマホで心地よく見れる」というのはあまり重要ポイントではなかったのかもしれない。

2. パンデミックによって通勤が減った
冒頭で、緊急事態宣言やStay Homeによって映画鑑賞をする時間が増えたと書いたが、家にいる時間が増えたということは、全てをスマホでする必要がなくなったということでもある。スマホで情報処理をしたいのは通勤時間や、オフィスにいる間の休憩時間やランチタイム。在宅勤務をするとなると、ずっとスマホの画面を見ているのは疲れるし、どうせなら大きな画面で映画やTV番組を鑑賞したい。1.で述べたスマホファーストが、裏目に出てしまったのだ。

3. セレブカルチャーの危機と、Quibiローンチタイミングが被ってしまった
昨年こちらの記事で書いたが、パンデミックで世界中の人々が苦しむ中、セレブの空気を読めない行動に人々は激怒。そんな中、リースウィザースプーンがQuibiの番組に音声出演しただけでおよそ6億円($6million)支払われていたことにスタッフが怒っているという記事がリークしてしまい、ますます評判を落としていった。Quibiの対応も反感を買い、最悪なPRになってしまった。

2021年1月、ROKUに買収され新たなスタートを迎える

VarietyのBiggest Tech Fails of 2020という不名誉なリストに選ばれるくらいの大失敗に終わってしまったQuibi。しかし先日、アメリカの大手ストリーミング端末会社Rokuが、Quibiのコンテンツを買収したことが発表された。Rokuは、初期費用約$30だけで、テレビ回線を契約しなくて、テレビを観ることを可能にするTVストリーミング端末。(昨日出たRoku シニアVPへのインタビューによると、昨年株価が150%も上がっていて、好調のよう)

Quibiのコンテンツの中にはエミー賞を受賞したものもあり、Rokuによる買収で、多くの人がクオリティの高いオリジナルコンテンツを楽しむことができるようになる。

私もRokuを買って、早くBig Rad Wolfの最終話を観たい。

(image courtesy of Vulture)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?