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恋愛小説

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2018年2月の記事一覧

この世で二人きり

この世で二人きり

 まずその日最悪だったのは、街で偶然岡内博之に寄り添う島崎麻衣を見てしまったことだ。

  「お前、最近雛香ちゃんのとこに顔出してやってんのか」
 ある日の夕食時、思い出したように父が言った。
 雛香。久々に聞いた名前だ。私は咄嗟に眉間が歪むのを無理に抑えて、ああ、そういえば、と無邪気さを装った。
「うーん、そういえば、最近はあんまし」
「まったく冷たい娘だね、お前って奴は。昔はあんなに仲が良かっ

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スノウホワイト

スノウホワイト

 黒板に羅列する方程式。
 数学の相良先生が、長い方程式を黒板にすらすらと書いていく。
 ゆびさき。
 私の視線は、その、白いチョークを持つ指先に釘付けになる。男性特有の、節くれ立った、けれど繊細な細長い指。
 その中指が私の中に埋まる瞬間を想像して、私はうっとりと目を閉じた。
 先生の白い肌。きまじめな、冷たい印象の瞳。薄い唇。私はそのからだじゅうすべてに、あまねくキスを降らせる場面を想像する。

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写真の向こう側

写真の向こう側

駅前を抜けたら線路の横をしばらく走る。
駐輪場に自転車を停めて校門に入ると、十メートルほど前を若宮徹が歩いているのが見えた。
私は駆け寄って行って、その肩をぽんと叩く。
「おはよー」
徹は一瞬驚いた顔をして、それからすぐにいつもの優しい笑顔になった。
「おはよう須川、朝から元気だなぁ」
「まーね。徹は元気ないね」
「ん、俺はテイケツアツ」
「ふーん」
寝起きの悪い人はよく低血圧と言うけれど、本当に

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甘い酒

甘い酒

その店に入ったのはほんの偶然だった。

出張で訪れたとある町の、駅裏の寂れた飲み屋横丁にある小さな小料理屋だ。営業しているのかも分からないスナックや古いラーメン屋などが並ぶ狭い路地は、恐らく、普段から人通りも少ないのだろう。駅を出た途端の急な大雨で、ホテルに戻るまでの雨宿りのため飛び込んだ適当なのれんの中には、自分以外に客の影はなかった。

「いらっしゃい。お客さん、初めてね」

テーブルがひとつ

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幸福の条件

幸福の条件

繋がった場所から、溶け合ってしまうようだった。
私は唇を噛み締める。堪え切れなくて、切ないため息が漏れた。
身体の奥の、いちばん深いところを熱い肉杭が貫く。ずしんとした衝撃と、甘美な快感。
私の欠けた部分へぴたりとはまり込んで少し大きい。それが恭次の性器だった。ほんの僅か、私を無理やり押し開くその熱がいとおしい。身体の奥深くから熱いものが湧き溢れてきて、繋がった部分を溶かしてしまう。
幾度も突き上

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