見出し画像

すべて、ここにある

リトリート体験記①

「それ」は不意に現れた。
輪郭がぼやけていて、よくわからない。
でも、何かがそこにあるような気がした。

海を見下ろす高台のテラスで、ランチのラップサンドを頬張っている時だった。かすかな感覚を手繰り寄せるように、そこに何かがあるのを感じようとしていた。

見えないし、触れない。
自分の内側に、何かがある。

ユリコさんの夫、Davidお手製のラップサンドは、ヘルシーで、とても美味しい。
ご夫婦が主宰するリトリートプログラムが、昨日から始まった。わたしが滞在するバケーションハウスの階下に住むおふたりのあたたかいもてなしに、お腹も心も満たされる。
Davidがお皿を下げてくれる。欧米人らしいホスピタリティに触れるのは、いつぶりだろうか。
多くのことを受け取っていと感じる。じんわりとあたたかい気持ちになる。

何となく言葉にしてみたくなって、ユリコさんに話しかけてみた。

「すべて、ここにある」という言葉が出た瞬間、涙があふれた。
真実なんだ。自分の体の反応が教えてくれる。

求めなくても、既にここにある。
必要なものは、すべて持っている。
わたしのなかに。わたしの周りに。

何ということだろう。
この、満ち足りた気持ち。

悟るというのは、こういうことなのだろうか。
感覚として、そこに「ある」のを感じる。
理屈じゃなくて「わかった」という感覚。
頭で理解するのではなく、体で認知している感じ。

太陽の光。広い空と海。心地よい風。鳥の声。
教えてくれてありがとう。

テラスからの眺め

あれもない、これもない、と外に求めてきた。
失ってしまう、減ってしまう、と恐れていた。
すべて、自分のなかにあったんだ。ずっと前から。
「それ」は絶えることなく、泉のようにこんこんと湧き出る。

ユリコさんに伝えようとして、言葉にしてみたことで「それ」が確かなものだとわかった。
ひとりでは気づけなかった。

この気づきが、わたしの人生にどんな変革をもたらすことになるのか。
この時は予想もしていなかった。
ただただ、これまで味わったことのない幸せが満ちていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?