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ひとやすみ「台湾パイナップル」後編

 昭和中期の鹿児島の農村を舞台に、昭和5(1930)年生まれのミヨ子(母)の来し方を中心に、庶民の暮らしぶりを綴っている。

 わが家のポンカン栽培について書いた流れから、台湾のポンカンについても述べ(13)、ついでに台湾のフルーツの代表格で、いまが旬のパイナップルについて「前編」に書いた。2回も書けば「ひとやすみ」でもないのだが、その続きである。

 台湾パイナップルはほぼ間違いなく甘い。芯まで甘いので芯をくりぬいたりカットしたりする必要はない。頭の葉っぱとお尻を切り落としたあと、縦に6~8等分してから皮を剥き、食べやすい大きさにカットする。濃厚な香りと、フレッシュな甘さがいい。すぐに食べない分は、ラップに包むか密閉容器に入れて冷蔵庫で保存すれば4、5日はもつ。置いている間に甘みが全体に回り味が落ち着く。わたしは数日保存したものが好きだ。

 ただ、通年で見かけるフィリピン産と違い、食べやすい大きさにカットして売っている台湾パイナップルはない。少なくともいままで見たことがない。すべて葉っぱつきの丸ごとだ。その状態で買って帰るのは重たいし、葉っぱの棘も気になる(往々にしてレジ袋は破れる)。買って帰っても、食べごろかどうかは割ってみるまでわかりづらい。切るのも力がいるし、ゴミも大量に出る。つまり、手軽に食べられる果物とは、言い難い。

 そのため、じつはわたしは台湾に住んでいる間、パイナップルを買って食べたことはなかった。

 わたしが住んでいた台湾南部では、春になるとパイナップル売りの軽トラが道路脇に出没した。荷台に山盛りのパインを客が選ぶと、その場できれいに皮を剥き、プラスチックの袋に入れて渡してくれる。果実のとげとげも、らせん状にナイフを入れて取ってくれる。

 皮つきだとゴミが出るし、皮を剥いたものを買っても、1個まるまるというボリュームに二の足を踏んでいた。

 そのわたしが、いまは週一ペースでパイナップルを買うのみならず、自分で皮を剥いている。台湾への応援の気持ちゆえだが、パイナップル自体がおいしいからでもある。

 ちょっとだけ「痛い」のは、一昨年はもちろん昨年より価格が上がっていること。とくに貿易会社から買う箱詰め(10kg、だいたい6個入り)は、2021年より1100円も上がった(3500円→4600円)。ただ、物流費アップや円安を考えればやむを得ない。台湾の生産者の皆さんの収益も、ちゃんと確保してほしいと願う。

 ポンカンしかり、パイナップルしかり、ほかの果物しかり。いや、ほかの農産物も海産物も、それらを使った料理や食品も、台湾はおいしいものがばかりだ。「宝の島」と呼ばれるのにも納得する。お隣の大陸も、そりゃほしくなるというものだ。(もちろんそんな単純な話ではありません)

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