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バーザールで見つけた癒しの時間

.سلام

「この香りを辿ればあなたのところに行ける。」

'92年に公開された映画「セントオブウーマン」で、盲目の紳士演じるアルパチーノは、出会った女性が付けていた香水「フルールドロカイユ」を嗅ぎ当てたんだ。

学生時代の私はこの粋なセリフに魅了され、翌日にはフランスから同じ香水を取り寄せた。今でも私の愛用する香水のひとつであるが、辿る相手を間違えてアルパチーノが横浜の山奥に現れることはなかったよ。


春分の1日目。ペルシャ暦のイランは1400年となり新年を迎えた。

ペルシャ暦とは、西暦622年の預言者ムハンマドのヒジュラ(聖遷)の年を基点とした太陽暦。ヒジュラ太陽暦、イラン暦ともいう。

コロナ感染拡大防止のため、市外への外出には地域によって高い罰金が科せられている。今年のお正月は灯台下暗しということで、テヘラン市内を回ることにした。

何度か行ったことがあるバーザールを見て歩いていると、小さなドライフラワーの並びが目に入り思わず立ち止まった。

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大抵どこのバーザールを歩いても見かけるものではあるが、改めて見ると何だか「あぁ、私はちゃんと中東にいるのか」なんて感じる。
圧倒的なチャイ文化であるイランに来てからは意識せずとも、かつて麦茶を飲んでいたペースで紅茶を飲むようになったので、紅茶用にと何点か買って帰った。

ちょうどさっき茶葉にひとつまみゴーレモハマディ(گل محمدی)と呼ばれるダマスカスローズを淹れたところで、その優しい香りに癒されている。

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この組み合わせはすごく気に入っていて、茶葉の入れ物に常に加えてある。茶葉の暗い色とバラの薄紫色のコントラストがまた可愛らしいね。

各家庭でいただく紅茶の味や香りは様々で、最も多かったのはダルチン(دارچین)と呼ばれるシナモンだ。香りが良いこと以外にも、温裏作用で身体がポカポカしてくるので、冷え込むこの季節にはもってこいの組み合わせなのである。

また、その組み合わせを当てると「よく分かったわね!」と、大変喜ばれる。もしかするとこれも一つの処世術かもしれない。


閑話休題、つまり、茶葉と一緒に淹れるドライフラワーやドライフルーツなどで、香りの楽しみ方をグッと広げることができるのだ。日本に帰る時が来たら、ここにしかない特別な香りを持ち帰りたい。

そして、家で過ごす時間が多くなった今、わざわざ香水を付けて出かける場所なんて無くなってしまった。ましてや玄関を飛び出せばマスク必須の世界で、誰がその匂いを嗅ぎ当てよう。

香りをひとつまみ、ちょっと粋な休憩を。

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