見出し画像

ふるさと納税獲得競争の果てに、豊かで幸せな地方が拓けるのかな、という話。

宮崎の地元メディアが今週末宮崎空港にふるさと納税自動販売機を設置したニュースを大きく伝えています。

宮崎市では、前戸敷市長から清山市長に変わってから、2年ほどでふるさと納税額が10倍以上の50億円以上になっているということで、積極的な取り組みをされていています。そういう制度がある以上は地方自治体のトップとしては最大限の成果を出すべく努力をするべきで、その点において現市長は素晴らしい成果をあげられていると思います。

ただ一方で、個人的には ふるさと納税って、地方と都会の格差を縮小するのに貢献しているのかな?という話。という記事も以前書いた通り、この制度で必死に地方の市町村同士でふるさと納税獲得競争が行われ続けたとして、その先に地方の豊かで幸せな未来があるのかな、ということについて釈然としない思いがあります。

宮崎市の場合、ふるさと納税の返礼品として用意されているのは、宮崎牛やうなぎといった農産品ですが、東京や大阪などの都会で本来の住民サービスのための財源が削られ、半分は地方の農産品として消費されるような制度が地方の繁栄につながるのか、ということは強く思います。

「農業」や「地場食品加工業」といった全産業の中でも労働生産性が著しく低い産業は現時点でも比較的手厚い優遇を受けている中で、更にそういった特定業界を優遇するだけで、地域の発展にそれほど寄与しない、という気がします。

今回、「ふるさと納税自動販売機」が空港に設置されるのが全国初ということですが、それが成功しベストプラクティスとなるようであれば、他の地域も空港だけでなくターミナル駅や高速道路のサービスエリアなど一斉に真似をすることになるでしょうし、全国でそのような過当競争が繰り広げられた先に地方が豊かになるわけではないような気がするわけです。

ふるさと納税制度によって国民所得が上昇することは経済原則としてもないでしょうから、全体のパイが決まっている中での「ふるさと納税獲得競争」は、結局各地方自治体にとって「税金の徴収コスト上昇」と、「毎年の納税額の見通しが不安定になる」という大きなデメリットだけが残りそうな結果となるのではないかと思います。その結果、さらに増税がもたらされると。

個人的な政治的な主張としては、宮崎のような地方の発展のためには、資本集約度・労働生産性の低い農業や観光業のような地域に雇用も産みにくい既存産業を支援するのではなく、より資本集約度・労働生産性が高い製造業などを適切に地方移転させていくことで格差の解消を図るべき、と考えています。

しかし、現在のふるさと納税は、各地方の農産品や加工食品などをアピールさせることによって、農業等しか産業がない地域の産業格差を更に固定させて今以上の衰退をもたらすものでさえあるかもしれません。

自分が今現在住んでいる宮崎市で、成果が上がり始めているのは悪いことではないとは思いますが、なんだか釈然としない感じがします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?