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三宅陽一郎@miyayouです。新宿でゲームを作っています。人工知能が専門でゲームを作…

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三宅陽一郎@miyayouです。新宿でゲームを作っています。人工知能が専門でゲームを作りながら知能とは何か、生きるってなにかを追求できたら嬉しいです。人を楽しませること、知能を作ること、自分の役割を果たすこと、一日一日を大切に生きれたら、それはとっても素敵だなって思います。

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  • 三宅陽一郎 短編小説集

    書きためた短編集です。よろしくご覧ください。 ご共有もご自由に、拡散してください。

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最近の記事

2024年人工知能学会全国大会(第38回)でオーガナイズドセッション「デジタルゲームの人工知能」

2024年人工知能学会全国大会(第38回)で オーガナイズドセッション「デジタルゲームの人工知能」を企画いたします. https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2024/os#os-31 ご応募お待ちしております。 ■【オーガナイザ】 三宅 陽一郎(株式会社スクウェア・エニックス) 森川 幸人(モリカトロン株式会社) ■要旨 ディジタルゲームの人工知能は、現在の巨大なオープンワールド型ゲーム、さらに携帯機器におけるゲームまで、多様な発展を遂げていま

    • ある秋の人工生命 

      誕生  クルス・ホームレイクタウンは靄でおおわれていた。ある晩秋の日、街の真ん中にあるクルス湖に人工生命の原液《スープ》が投げ入れられた。月の光が惜しげもなく、阻むものもなくそこに注がれ、その光を吸収した原液《スープ》から人工生命体Aが誕生した。二つの赤い瞳を開くとすぐさま人工生命体Aは周囲の情報を集めて始めたが、未だ自らが生まれた存在理由を問うことも知ることもなかった。ただ、その鋭い眼光は赤く輝き、次第にこの世界を透徹に見通し始めた。  クルス湖はクルス市の中央に位置する孤

      • 「いま、言葉で」(小説)

         私は人工生命にかけることにした。私は筆を折り、何も書かず、ただ人工生命の語る言葉に耳を傾ける。人工生命は覚えた言葉やその砕いた音をランダムに発する。それが偶然、連なって、意味のあるフレーズになることがある。ただ、ほとんどのその言葉の連なりは、口から出て虚空に消えていく。それは意味のないメロディで、私はそこに知能の源流を見出そうとする。 私が行うのは、人工生命に言葉を与えるだけだ。ただ与えるだけではない。その言葉が意味する事物を見せながら、私は一つ一つの言葉をかみ砕くように教

        • 「インターミッション」

          「インターミッション」 梗概  三宅陽一郎  一人の刑事が一人の男を訪ねていた。27年前に亡くなった人格AIの研究者、日比野博士をサルベージしたAIだ。日比野AIは日比野博士の残した映像、画像、著作、論文から、日比野博士の人格と知識を再現している。日比野AIは彼の隠れた目的のために研究者ではなく電気工事士として働いている。一方、社会では家電が共鳴してうねりのような歌を歌う現象が多発していた。刑事は日比野博士が生前おこなっていた研究が事件の原因ではないかと疑い、日比野AIがこ

        2024年人工知能学会全国大会(第38回)でオーガナイズドセッション「デジタルゲームの人工知能」

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        • 三宅陽一郎 短編小説集
          18本
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        記事

          黄昏ロボット

          「クワはこう持って、こう振る」と一体のロボットは言った。そばにいる一人の人間がうなずく。そしてぎこちない手でクワを振り大地をたがやす。その手足は弱々しい。 「教えられるのは、今年までだよ」 「来年はもういないんだな」 「来年から宇宙に行くんだよ。僕たちはもう人間を手伝えない」  ロボットは空を見上げた。そのまなざしは夕暮れの雲を超えて、さらに高きをみつめていた。 「星の彼方へ、行くんだな」  少し間をおいて人間が言った。 「僕たちも連れて行ってよ」 ロボットは

          黄昏ロボット

          新しい本がでます

          新しい本がでます。 『人工知能が「生命」になるとき』(PLANETS)という本です。 人工知能は生命ではありません。 しかし、人工知能が生命が目指すとしたら、何が足りないだろうか? 植物が世界に根を張るように、我々は身体によってこの世界に根付いています。同じように、人工知能がこの世界にどうすれば根付くことができるのかを考えた本です。 よろしくお願いいたします。

          新しい本がでます

          PR Compass にインタビュー掲載

          こちら Story Design house さんにインタビューが掲載されました。よろしければ、ご高覧ください。

          PR Compass にインタビュー掲載

          インタビュー掲載

          こちらインタビューが掲載されました。よろしくお願いいたします。

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          小説『未来人狩り』

          プロローグ 「おい、そっちじゃないぜ」と早瀬は言った。 「整備室はこっちだ」と彼が指差した先には、客の流れから外れた場所に、飾り気のない事務的な灰色のドアがあった。窓から差し込む夏の日差しに焼かれた灰色のコンクリートに、そのドアは同化しているように見えた。僕の手には、最新の画像認識プログラムが入ったメモリーがあり、彼の手にはセキュリティカードがあった。僕たちは、この会場の五百人の観衆の中に潜む未来人を見つけ出す。この夏の僕たちの課題は「未来人狩り」だ。 1. 始まり  早瀬

          小説『未来人狩り』

          素晴らしい天才フラメンコ・ダンサーと人工知能の競演

          YCAMで、「Israel & イスラエル」を観てきた。大脇 理智 (Richi Owaki)さんがディレクションをし、徳井 直生 (Nao Tokui)さんが人工知能のテクニカル・ディレクションをする、芸術と技術が観客を巻き込んでぶつかり合うパフォーマンスである。 スペインの誇る天才フラメンコ・ダンサーが、日本は山口市のYCAM(山口情報芸術センター)で、人工知能と出会う。ディープラーニングによって学習されたイスラエルと、本物のイスラエルが舞台で競演している。お互いが

          素晴らしい天才フラメンコ・ダンサーと人工知能の競演

          小説 「ロボット三原則の彼方に」

          「はあ、ロボット三原則?そんなもの、今のロボットには実装されてないわよ。ああいうのは、SFの中だけのお話なのよ」 とエルは言った。 「あんなに有名なのに?どうして実装されなかったのさ」  とロバートは言った。 「そんなの、百年前の人に聴いてよ。私たちが物心つく頃には、家にも、街にも、ロボットやらドローンやら町中、溢れていたし、私はその上に、ちょっとした機能を作っていただけよ。心理学的な機能をね。」 「有名な人工知能の学者のくせにそうなの?あんなにテレビにでも出てるのに?」 「

          小説 「ロボット三原則の彼方に」

          デジタルゲームの人工知能から人の知能を知る

          題名:デジタルゲームの人工知能から人の知能を知る 著者:三宅陽一郎(ゲームAI開発者) 掲載誌:マジレス!(2011年4月) 第一章 「人工知能ってなんでしょう?」 皆さんは人工知能と聞いて、何を連想されるでしょうか?  パソコン上の検索エンジンや、ロボット、ゲームのキャラクター、SFなど、人によってそれぞれ違うでしょう。しかし、どんな人工知能でも、その規範は人間の知能にあります。人工知能は、人間が自分で持っている(と思っている)推論能力、連想能力、想像力、思考力など

          デジタルゲームの人工知能から人の知能を知る

          詩集 「青空の果て」

          僕が憧れたことや、僕が喜んだことや、僕が悲しんだことや、僕のそんな歴史を。 一. 「空と大気の詩」 夕暮れは、いつだって、僕のこころの色。 さびしくて、せつなくて、遠い彼方に何かを求めずにはいられない どんなに孤独でも、僕の孤独はこの世界に包まれている。 それは、とっても、素敵だなって、そう思うんだ 空はいつだって僕の最高のアーティストです。 あんなふうに大きなキャンバスに、自在に混沌と調和を扱えたら、 どんなにか素晴らしいだろうに。 僕のあわれで小さな魂は、いつも、

          詩集 「青空の果て」

          小説「さざなみ」

          第一章 私の名前は小牧佐智子。高校一年生。名前はまだない、じゃない。名前はある。佐智子。私はこの名前が気に入っている。一つの音に一つの漢字が割り当てられているのが素敵だ。私は私自身が好きか、わからない。でも、私ではない人は私が嫌いなようだ。私の中にある何がそうさせるのか、わからないが、友達は、まだない。でも、入学して一週間だ。もう少ししたら、出来るかもしれない。私は駅を降りて、家路へ歩く。坂を1キロメートルほど登らないといけない。結構、急だし、他の人が登ったら、いつも

          小説「さざなみ」

          黄金の森

          第一節  おそらく、三刻の時のうちに、川辺までたどり着ければ生き延びることが出来る。だが、間に合わなければ死ぬだけだ。生と死は敗走する一群の兵士の目の前で揺れている。運命とはそういうものだ、と。  一群の兵士を率いる、一際目立ったリーダーと思しき人物、その人こそが、いまや、全土を戦乱に招きいれた渦中の人、アルト・アルヴァーンであった。アルヴァーンは王家の姓、アルトはその嫡子の名。だが、彼はいまや、その自国において追われる身であった。  援軍の船はテーベの岸辺で待つ。隠密

          黄金の森

          「冬の恋人たち」(小説)

          「冬の恋人たち」 * * * それは深い雪が降った日のことだ。僕は校庭で一緒に遊んでいて怪我をした友人の見舞いに行った。当時、僕ら3人は、何気なく一緒につるむようになって、捉えどころのない漠然とした 高校生活というものを、よくわからないまま一緒にふらふらしていた。 友人の一人が、 休み時間に遊んでいるうちに、校庭で怪我をして入院した。たった2人になってしまった僕らは、 暇と寂しさを紛らわすために、その病院へ足繁く通った。それ以外に、放課後でするべきことも、 た

          「冬の恋人たち」(小説)