#29 更年期障害とトレーニング
みなさんは“更年期障害”についてご存知ですか?
みなさんの中にも悩まれている方もいらっしゃるのかもしれませんし、親御さんが悩まれているって方もいらっしゃると思います。
まずは、“更年期障害”がどんなものかについて触れていきます。
更年期障害は人によって症状はさまざまで症状を感じない軽い方もいれば、いくつもの症状が出てしまう重い方もいらっしゃいます。
その差は個々のホルモンバランスによるものもあると思いますが、本人の性格、さらには家庭や職場の環境などの外的要因のほうが強いとも言われています。
怖いのが更年期障害は上記の症状だけだけでなく、心臓病、脳卒中、骨粗しょう症などのリスクも高まるのです。
女性ホルモンであるエストロゲンの減少は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の増加とHDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少にもつながり、2型糖尿病のリスクの増加にも関係があるようです。
また更年期障害は女性特有のものというわけではありません。
現在では、LOH[Late-Onset Hypogonadism]症候群(加齢男性性腺機能低下症)と呼ばれる40代以降の男性の更年期も確認されています。
加齢や運動不足による男性ホルモン(テストステロン)の減少が原因で、筋力や体力が低下し、やる気、集中力、判断力の低下や、不安感やイライラ感を感じるようになるのです。
女性だけでなく男性にも起こりうる更年期障害ですが、国内外の研究で、トレーニングや運動によって予防や症状の緩和に効果があったことが報告されています。
では何故トレーニングや運動によって、そのような効果があったのでしょう?
その有効性について、お話ししていきたいと思います。
ウエイトトレーニング(レジスタンス運動)による、筋肉量、骨量の増加
ウエイトトレーニングと言うと、「筋肉をつけるための運動」と思われる方がほとんどでしょう。
もちろん筋肉量を増やす目的ではあるのですが、日常生活では体感しない全身のさまざまな関節の可動域を使うことによって、座りっぱなし俯きっぱなしでコリ固まってしまった筋肉をストレッチさせてほぐす効果もあります。
カラダがだるい・重いなどの肩こりや腰痛などにつながる不定愁訴は、日常生活を長時間同じ姿勢で過ごすことで筋肉が固まるのが原因です。
トレーニングでカラダを動かすことは筋肉量を増やすだけでなく、筋肉をほぐして血流を良くすることで不定愁訴を解消させます。
またウエイトトレーニングは骨にも負荷がかかるため、骨形成( 新しい骨が作られること)を促進させる効果があります。
“骨の構造と形状は、骨に与えられるストレス量と方向に適応して変化する”(ウルフの法則)と言われていて、骨は動作や高負荷に敏感に反応して適応するのです。
ウエイトトレーニングは骨形成を高め、骨吸収(古い骨が壊されること)を上回らせることで、骨粗しょう症の予防になります。
余談ですが、ウエイトトレーニングはホルモンにも関係しています。
ウエイトトレーニングをすることで、脳からエンドルフィンやドーパミン、セロトニン、テストステロンといった脳内ホルモンが分泌されるからです。
エンドルフィン、ドーパミン、セロトニンといった「幸福感」を感じやすくするホルモンが出ることによって精神状態を安定させ、ストレスを軽減してくれる効果も期待できます。
また鍛えられた筋肉は、キヌレニン(必須アミノ酸の一つトリプトファンの代謝物)を筋肉中の成分で分解させることも近年の研究で報告されています。
このキヌレニンはうつ病や統合失調症などを患っている人では体内量が著しく増加することから、様々な精神疾患に関与していると考えられています。
筋肉は有害な物質を解毒する工場の役割もしていると言うことです。
つまり、筋肉が腎臓や肝臓と似たような機能を備えているということになります。
有酸素運動による、心肺機能の強化
気温も暖かくなって来たことで、日中や夜間にウォーキングやジョギングされてる人をよく見ます。
ダイエット目的や健康増進の目的が主だと思いますが、有酸素運動は更年期障害にも効果的です。
更年期障害は女性ホルモンであるエストロゲンの減少が原因だと、最初にお話ししました。
エストロゲンは心臓を保護する役割もあり、閉経後のエストロゲンの減少に伴って、心臓病のリスクが大幅に増加する可能性が示唆されています。
心拍数を上げながら足の大きな筋肉を使う有酸素運動は、心肺機能を高めて心臓病のリスクを軽減するだけでなく、余分な脂肪を減らして健康的な体重を維持するのに役立つので、更年期世代が直面する体重増加にも効果的です。
また気分転換や睡眠の質を高める効果も望めることから、うつ病のリスクも軽減できると言われています。
有酸素運動をする際の注意点としては、最初からカラダに負担がかかるようなピッチや時間で行わないことです。
無理をすると怪我の恐れがあることや、習慣化する前に三日坊主でやめてしまっては意味がないからです。
まずは無理のないウォーキングから始めることをオススメします。
ウォーキングの効果的な方法としては、全身の筋肉を使うように手を振りながら大股で歩くこと、歩くピッチの差を作って心拍数の波を作ることです。
3分間は少し息が切れるくらいの速度で歩き、次の3分間は息を整えるようにゆっくり歩いてください。これを続けて3セット、合計18分間行います。
心拍数の波を作ることでカロリー消費量が増えて、効率の良いウォーキングができます。
ヨガ(腹式呼吸)によるリラックス効果
ヨガというと真っ先に柔軟性の高い難しいポーズを連想される方が多いと思いますが、ヨガの基本は呼吸法となる「腹式呼吸」にあります。
※ 例外として、アシュタンガヨガなど動きの多いヨガは胸式呼吸を行います。
もちろん筋肉や関節の可動域を高める柔軟性もすごく大切なのですが、ここでは腹式呼吸にスポットを当ててお話しします。
腹式呼吸のやり方やポイントとは…
① お腹をパンパンに膨らませるように、鼻からゆっくり大きく息を吸い込みます。
② 次にお腹を凹ませながら、カラダの悪いものをすべて出しきるイメージで、口からゆっくり“吸うときの倍くらいの時間”をかけて吐き出す。
4カウントで息を吸い込み、6〜8カウントかけて息を吐き出すように行います。
腹式呼吸が何故、更年期障害の予防や改善に効果的なのでしょう?
腹式呼吸は、自律神経の中でも「副交感神経」を高める呼吸法で、さまざまな効果があります。
心や精神を落ち着かせることでストレスの解消やうつ病の予防、血圧や心拍数を低下させて心臓病の予防など、更年期障害にとどまらず、さまざまな疾患のリスクを軽減することができます。
腹式呼吸のトレーニングを続けていると、日常生活でも自然とできるようになります。
平穏で健康な生活を送る上でも腹式呼吸はとても大切で欠かせないエクササイズなのです。
運動は健康の源
更年期車の予防や改善についてお話しして来ましたが、運動をすることは“健やかな生活を送る”上でも重要なファクターです。
小学校の頃にも学びますが、「食事」「睡眠」「運動」は、健康維持のためには欠かせない三要素だからです。
現代はIT化が進んだことから、身体を動かすよりもパソコンやタブレット・スマホなどのデバイスを使って、うつむいて座りっぱなしの日常生活を送っています。
座りっぱなしで運動不足になるどころか、いつでもどこでも情報を得れたり、仕事ができたり、SNSや好きなコンテンツを見れることから、睡眠をしっかり取る意識が薄れてしまっています。
また飽食の時代なので、好きな物を好きなだけ食べられることから栄養が偏ってしまい、健全な食生活への意識も薄れています。
この「食事」「睡眠」「運動」の三要素を意識して実行することは、さまざまな疾病の予防になるのです。
みなさんも今一度ご自身の生活習慣を見つめ直し、できることからすぐに改善していきましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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