見出し画像

#2亀との出会いは突然に。

うちにはクサガメが三匹います。わらび、よもぎ、もみじ、みんな和菓子の名前からつけました。去年の春にもらってきて、もうすぐ一年半になります。

転勤族のテル坊と社宅にくらす私たちは、退職まではペットを飼う気はありませんでした。ところがまだ肌寒い三月も半ば、日課にしている散歩の途中に黄土色の大きな石ころのようなものを発見したのです。
「なんだコレは?」
手に取ると、首と手足をすくめた亀だったのです。

私は自転車をすっとばして近所のホームセンターへ走りました。飼育道具を手に入れるためです。水槽の水を温めるヒーターや陽の光を浴びる代用に使える爬虫類のためのライトなど、かなりのお金を惜しげもなくつぎこみました。弱っている生き物を見て、母性本能が発動したのかもしれません。エリザベスと名付けましたが、世話した甲斐もなく一週間ほどで死んでしまいました。

エリザベスを弔った後、リビングのすみっこにつくった亀の居場所だけが残りました。水槽の中は空っぽです。ヒーターもライトも、もう使う必要がなくなりました。見ているとさみしさがこみあげてきます。
「もう一度、うちに亀をおむかえしよう」
私はテル坊に何の相談もせずもう一度亀探しを始めたのです。

一ヶ月ほど探し回り、ペットを譲り合えるネットで生まれたてのクサガメを見つけました。(私は自分で思っていた以上に執念深いおばさんでした。もしかすると亀を飼いたかったのではなく、買い込んでしまった道具類につぎこんだお金が惜しかったのかもしれません)

いよいよ子亀たちを迎えにいく日がやってきました。テル坊の運転する車で待ち合わせの場所に向かいました。生まれたての子亀をぶじに育てられるか心配でなりません。万が一、一匹が亡くなった時を考え、できれば二匹はもらおうと事前に二人で相談しました。

帰りの車の中。助手席にすわる私のひざの上で、タッパーに入れられた子亀たちがせわしなく動いています。甲羅が4センチほどの小粒の亀たちです。
「とうとうもらっちゃったね」
私がのぞきこんでいるタッパーの中には三匹の亀がいました。可愛さに、つい欲が出たのです。

亀は寿命が長く、二十年以上生きるそうです。つまり私たち夫婦が70代になるまで、彼らを見守ることになります。亀たちに「飼い主として長生き必須!」という新たな使命をいただいた気がします。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。サポートしていただけるなら、執筆費用に充てさせていただきます。皆さまの応援が励みになります。宜しくお願いいたします。