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#127料理当番。

いつもなら当たり前のようにご飯を作っているわたしが、今は左手を使えず、台所に立つことができません。わたしの入院中、テル坊とミドリーは、其々に一人分の食事を用意して食べていました。買ってくるもよし、ちょこっと料理するもよし。自由きままな夕ご飯です。

ところが三人になると、そうはいきません。まだ当分の間はお料理オバさん(わたし)の復帰は見込めないのです。さて、どうしたものか。一週間は7日あるので、テル坊とミドリーが3日ずつ担当し、残りの1日はお弁当などを買ってくることになりました。平日は仕事のあるテル坊は火・土・日。週末、コンビニで弁当作りのバイトをしているミドリーは月・木・金。週の真ん中の水曜日が弁当の日です。

料理をしないわたしにも、大切な役目があります。なんだと思いますか?それは作ってくれる料理に口出しをしないことと、出された食事を感謝して美味しくいただくことです(笑)。主婦にとって、意外と「口出ししない」というのは難しいのです。ついつい「みりんも少し足してね」「生姜をすったら、もっと美味しくなるよ」など自分が当たり前にやっていることを家人に強要してしまいがちなのです。

一人分の料理を作るのは正直面倒です。お椀一杯分のお味噌汁なんて、インスタントならお湯を注げばすぐにできます。二人分は作りがいもあるし、食材も少量で済むものもあり、慣れると苦ではありません。これが三人になると、ハードルが一気に倍くらいに跳ね上がります(あくまでも個人的な感想です)。わたしも今の三人暮らしになった当初は「同じ食事作りなのに、気持ち的な負担感がずいぶん違うな」と驚いたものです。三人からは個人というより家族という単位になるからでしょうか。

料理に慣れているわたしでさえ「う!」となったのだから、慣れていない二人にとっては苦行に近いものがあるのかもしれません。そう懸念していましたが、今のところは順調に進んでいます。まずミドリーの方は、図書館で料理研究家のりゅうじさんの本を借りてきて、気に入ったメニューをレシピ通りに作るという戦法をとっています。家庭でもプロ並みの味に仕上げられるというレシピは、なかなかの優れものです。お味噌汁は鰹節や味の素を隠し味に使うようですが、旨味が強くて美味しいです。

肉料理やオムライスも、ブレンドされた調味料のおかげで、私が作るものとはかなり違った仕上がりとなっています。レシピが違うと同じ料理でも別物なのねと感心するくらい。それに加えてバイトで弁当を作り続けているおかげで手際の良くなったミドリーは、数日もすると「大体この位の時間でご飯の準備は出来そう」と見通しも立てられるようになりました。

テル坊の方は、以前から気の向いた時にYouTubeで見つけた動画を参考にピザを焼いたり、豚の角煮を作ったりしていました。とは言え、毎回手のかかる料理にチャレンジする時間の余裕もないので、畑でとれた茄子やピーマンを肉と炒めたり、冷凍餃子を焼いたり、少しの手間で美味しく作れるメニューに挑戦してくれています。

「家事がこんなに大変だったとは思わんかった」
ミドリーが一週間ほど前にぽつんと言いました。
「母ちゃんは、いつものんびりしてると思ってたのに。ご飯の準備だけじゃなくて、掃除機かけたり、トイレ掃除、お風呂掃除、洗濯物、それから麦茶を沸かして。亀の世話もあるし」
「そうやで。母ちゃん、狭い家の中を行ったり来たりして働いてるんやで」

同じ家に住んでいて、家族の動きはなんとなく視界に入っていても、いざ相手の役割をバトンタッチして引き受けてみると結構大変だった、という体験も、若いミドリーにはよい勉強になっていると思いますし、そうは言いながらもちゃんと役目をこなせている自分に、自信を感じてもいるのではないかなあと思います。

夕ご飯どき、普段なら台所とリビングをパタパタとスリッパを履いた足で往復しながら料理を運び忙しくしているわたしは、今はテーブルの前に座ってちんまりと食事の始まりを待つという優雅な役割を満喫しています。

追伸☆これを書いて数日後、食事の前になると、やはりパタパタと動き回るわたしです。箸を出したり調味料をかけたり。主婦の血が騒いで騒いで…。家族にはちょっと邪魔者扱いされてますけど(笑)。





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