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チームの成長に必要不可欠な「健全な衝突」


これまで私は、人材育成や組織開発といった事業に20年近く携わってきましたが、最近、多くの組織を見ていてある変化を感じています。

それは、「セクショナリズム」から「サイロ化」「タコツボ化」への変化です。

「セクショナリズム」とは、自部門の立場や利益を優先し、他部門を批判・排斥すること。いわゆる“部門間の不仲”です。「あそこの部署は…」「本社の連中は…」といった声を、以前はよく聞きました。

一方、「サイロ化」「タコツボ化」というと、自分の世界に閉じこもり、自己完結して孤立してしまう状態。つまり、自部門のことには責任もって取り組むが、それぞれが独自に業務を遂行し、他部門には遠慮して口を出さないイメージです。

この変化は、部門間だけでなく、個人と個人の関係性においても起きている変化なのではないでしょうか?

自分のことは精一杯頑張るが、相手には遠慮して口を出さない。良く言えば自責ですが、悪い意味で相手を尊重しすぎてしまう風潮があるように感じています。

チームの成長プロセスを示した「タックマンモデル」

顧客とのプロジェクトmtgで、私はよく「タックマンモデル」というフレームワークを引用します。

チームの発展プロセスを示したものですが、「形成期」→「混乱期」→「規範期」→「機能期」という4つのフェーズを経て、チームが成長していくことを示したフレームワークです。

タックマンモデル

かつて自分が所属していたチームを振り返ってみると、確かにこういったフェーズを経て経てメンバーとの関係性が変わっていったことを感じます。

まず、チームが立ち上げられた段階が「形成期」です。一人でやっていた頃よりも、数名のメンバーでやった方がチームのパフォーマンスは上がります。

しかし、しばらくすると、お互いの仕事の進め方やそれぞれの役割の違いから、次第に衝突や葛藤、対立が生まれます。これが「混乱期」です。この時、チームのパフォーマンスは一時的に低下します。

しかし、そういった衝突を通じて、「このチームではこういうやり方を大切にしよう」「彼にはこういう関わり方をすると持ち味が活きる」といった暗黙のルールのようなものが生まれてきます。これが「規範期」です。

やがてその規範をベースに、相手を活かし自分も活かされるようになると、個々がチームに適応して「機能期」を迎えます。

混乱を経て規範が生まれる

私はよく、こんな2つの問いをプロジェクトメンバーに投げかけます。

Q1.この4つのフェーズで、どのフェーズが大事だと思いますか?
Q2.ご自身の職場のチームは、いまどのフェーズにいますか?

すると、こんな回答が返ってくることがあります。「自分のチームメンバーとは、付き合いも随分長く、既に規範期を越えていると思うが、この図のように機能しているように感じない」と。

チームとして最終的に目指す状態は「機能期」です。しかし、機能期にもAのように成長するチームと、Bのように停滞してしまっているチームがあるかもしれません。

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チームが良い形で機能するためには、そのチームにとって望ましい規範が生まれている必要があります。逆に、チームにとって望ましくない規範があると、Bのようなチームになってしまいます。

そういう意味では、規範が作られる「規範期」が大事ですが、規範は作ろうと思って作られるものではありません。

リーダーが「○○を大切にしよう!」と言ったからといって、それが自然と醸成されるわけではなく、衝突や葛藤、対立といった「混乱期」を経て、結果的に生まれるものだからです。

衝突はできれば避けたいところですが、望ましい規範を醸成するためには、ある意味必要悪なものと言えるかもしれません。衝突や対立、混乱や葛藤の場面に出くわすと、リーダーはついその衝突を解消しようとしてしまいますが、私はちゃんと衝突させることが大事だと思っています。

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衝突を避けてしまうと、胸の内に抱えたまま陰口や孤立化を招き、最悪の場合は、対立しているどちらかが退職するといったことになりかねません。

しかし、衝突には「健全な衝突」「不健全な衝突」があります。不健全に衝突してしまうと、一方が言いたいことを言って、相手を傷つけるだけになってしまったり、修復できないほどの関係になってしまうこともあります。

衝突とは正義と正義のぶつかり合い

そもそも衝突というと、「正義vs悪」の構図で捉えられがちですが、実際はどちらかが正しくて、どちらかが間違っているから衝突しているのではなく、どちらも正しいから衝突が起こるのだと思います。

例えば、「営業」と「製造」といった関係は衝突が起こりがちです。営業にとって「売上」や「顧客」は重要なものさしですが、「製造」が大切にしているものさしは「品質」や「コスト」「納期」だったりします。

共通の目的は、顧客により良い製品を提供することですが、どちらかが正しくてどちらかが間違っている、ということはなく、どちらにも正義があるから衝突するのです。

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むしろ衝突がないと、個別最適な価値発揮しかできず、力を合わせたより大きな価値が提供できない。

つまり、「タコツボ化」「サイロ化」して自己完結することは組織にとって良いことではなく、お互いの正義をぶつけ合うことができないといけません。これができないと、上図(タックマンモデル)のBのような、成長しないチームになってしまいます。

だから衝突は、より大きな価値を提供するためにも、チームに望ましい規範を作るためにも必要です。そして、混乱期で「健全な衝突」を迎えるために必要なのが、「形成期」における相互理解だと思っています。

相互理解のポイントは、視点の違いを楽しむこと

心理学のフレームワークで有名な「ジョハリの窓」を引用すると、相互理解とは「本人も相手も知っている状態」のことですが、左上の「開放の窓」を広げていくためには、「自己開示」と「フィードバック」が必要となります。

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自己開示とは、まさに自分の気持ちや考えを伝えることですが、そのポイントは"相手と異なる意見であっても"本心を伝えられるということです。同様に、フィードバックのポイントは、"本人にとって耳の痛いことも"伝えられるということです。

また同時に、その自己開示やフィードバックを相手が受け止められることも重要ですが、私はよく顧客とのプロジェクトmtgで「視点の違いを楽しむ」というグランドルールを設けます。

通常の会議では、つい上司の考えに合わせたり、多数派の意見に同調してしまうことがありますが、この「視点の違いを楽しむ」というスタンスが共有されていると、自分とは意見の異なる相手の自己開示や、自分にとって耳の痛いフィードバックも受け止めやすくなります。

チームの形成期において、自己開示やフィードバックができる関係性ができていると、自然と混乱期を迎えます。健全な衝突を経たチームには望ましい規範が生まれ、その規範が機能すると、成長するチームになっていきます。

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