商談にも活かせるコーチングのフレームワーク
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商談にも活かせるコーチングのフレームワーク

宮本寿@クエスチョンサークル

私は日頃「問い」を切り口に、組織づくりやリーダーシップ開発のお手伝いをしていますが、「問い」はその他様々な場面で活用できると思っています。

前回の記事では、ファシリテーターとしての「問い」の活用法に触れましたが、「問い」は顧客と商談をする営業場面においても有効な武器になると思っています。

私は長らく法人営業を経験してきましたが、かつての私は営業というと「説明」や「提案」のイメージが強く、商談においてはほとんど私が話していました。しかし、コーチングやファシリテーションを学んでいく中で、営業スタイルが大きく変わったように感じています。その結果、顧客との関係性も変化していきました。

そこで今回は、私なりに思う"商談における「問い」の活用法”を、コーチングのフレームワークに当てはめながらご紹介してみたいと思います。

商談におけるコミュニケーションで陥りがちな罠

まずここでは、新規営業を想定してお話ししていきたいと思います。
初めての商談が行われる時、顧客の頭の中にはすでに解決したい問題や課題が存在しています。

例えば、「マネジメントが機能していないため、マネジャー研修を導入したい」と既に課題が明確になっていると、いかに解決できるかに焦点が当たってしまいます。かつての私も、「では、いつ頃実施しましょうか?」とか「対象人数は何名ですか?」といった打ち手の話に終始していました。

これが、商談で陥りやすい罠です。
このような打ち手のやり取りに入ってしまうと、顧客にとっては、あまたある研修ベンダーの中の選択肢の一つになってしまいます。

ポイントは、「顧客が抱える問題を解決する」のではなく、その問題の背景にある「本質的な問題を発見する」ことです。
「マネジメントが機能しないことでどのような問題が発生しているのですか?」「メンバーにはどのような影響がありますか?」「顧客は何を求めていますか?」「昔といまとどんな変化がありますか?」などなど、顧客が認識している表面的な問題を作り出している真の問題が何なのかを探ります。


氷山


そして、それがなぜ重要なのかというと、「真の問題は何か?」と顧客と共に探っていくプロセスにこそ、大きな価値があるのです。
顧客が「本当に解決すべき真の問題」を発見するプロセスをともに歩むことができれば、その解決手段については、唯一無二のパートナーとして一任していただけるような信頼関係が構築できます。

課題が明確であれば、すぐに打ち手の話 すなわち 自社のアピールをしたくなる気持ちは誰しもありますが、ここはグッとこらえて解決志向にならないことがポイントです。

いきなり問題解決の提案をするのではなく、まずは一緒に問題発見をする。

では、一緒に問題発見するためには何をしたら良いのか?
ここで価値を発揮するのが「問い」です。

コーチングのフレームワークから得られる商談のヒント

コーチングで広く用いられる「GROWモデル」はご存じでしょうか?

GROWモデル

コーチングにおいては上から順にたどるイメージで活用されるものですが、真の問題発見を目指す商談スタイルにおいては、私は順番を入れ替え、下記のように当てはめ、ヒントにしています。

<商談プロセス> 
①現状の問題意識を整理(Reality)
②ありたい姿を明らかにする(Goal)
③ありたい姿と現状のギャップを認識し、問題を再定義(真の問題発見)
④我々にできることを提案(Resource ※) 

※コーチングではResourceを自分自身の中に見出しますが、商談に置き換えると、「顧客のResourceとして自社を見出せるかどうか」という捉え方になります。

各段階を具体的に解説していきます。

まず①『現状の問題意識を整理(Reality)』では、情報収集的な問いを投げかけるイメージですが、顧客の現状についてこちらが把握するとともに、顧客自身にも認識している問題を整理してもらいます。

次に②『ありたい姿を明らかにする(Goal)』では、①に対する解決的な提案は控え、まず顧客のありたい姿を描いてもらいます。人はありたい姿がイメージできると、「それに向けてやってみよう」と前向きなエネルギーが生まれやすいためです。①~④の中で、ここが一番大事なフェーズとなります。

我々のような無形商材を扱うコンサルティングサービスは特に、取引後のイメージを描きにくいものです。具体的な手段はともかく、「ここに依頼すれば、こんな状態になれそうだ」と期待がもてることが大事です。

ここでは、目的論的な問い(※参照)を活用していきます。

そして、ありたい姿を描いてもらいながら、③で真の問題をともに探っていきます。①で判明した、顧客自身が自覚している表面的な問題に対し、視点の違いを活かした「問い」を投げかけ、多面的な視点を提供していきます。

例えば、下記のような問いかけです。
・なぜそれを問題だと思っているのですか?
・顧客からは、その問題がどのように見えていると思いますか?
・その問題を作り出している背景には、どんな問題があると思いますか?

このような問いかけを行う中で、"顧客がもともと認識していた表面的な問題”を作り出していた真の問題に気づき、本当に解決せねばならない問題が再定義できます。

とある経営者は、①の時点では「営業部と開発部の仲が悪いことが問題だ」と認識していましたが、②③で様々な問いを投げかけ、多面的に捉え直していく中で、最終的には「自分自身の勝ち負けを促すリーダーシップスタイルが真の問題だ」と再定義されていました。
また、「社員が自律して動けていないことが問題だ」と考えていた経営層は、様々な視点からその問題を捉え直し、「会社がビジョンを示せていないことが真の問題だ」と再定義されていました。

このように、多面的な問いに答える中で、自分自身が問題だと感じていた事象を捉え直すことができ、同じ問題が繰り返されないために根本治療すべき真の問題が再定義できるのです。

私は、再定義ができてようやく、自社にできることをお話しします(④)。
真の問題に対し、我々がどんな関わり方ができ、どのような側面から「ありたい姿」に近づく支援ができるのか、お伝えするのです。
顧客にとっては、自分たちの問題が整理でき「解決せねば」と感じているタイミングだからこそ、その内容を前向きに、自分事に受け止めてくださる可能性が高くなります。

このように、"商談ではまずは自社の説明”と考えるのではなく、GROWモデルからヒントを得た「問い」を活かすスタイルにすることで、顧客に寄り添うパートナーとしての商談に近づけるのではないかと考えています。

視点の違いが生まれそうな論点を用意しておく

もう一つ、私が商談に関して取り組んでいることは、「問いの100本ノック」です(※参照)。
これは商談前に、気になることや顧客に聞いてみたいことを、思い浮かぶままに挙げてみることを意味します。

例えばマネジャー研修についての商談であれば、「今回の研修受講対象者は?」「彼らはどんなことに困っているか?」「彼らの上司や部下はどんな期待をしているか?」「これまでどんな研修を実施してきたか?」「その研修によってどんな変化が生まれたか?」「彼らの顧客は?」「顧客の顧客は?」「彼らの入社動機は?」。。。

すると、「これはお客さんと議論してみたい(または議論してもらいたい)」と思える問いが、幾つか湧き上がってきます。つまり論点です。そういう問いは、多くの場合”物議を醸しそうな”問いだったりします。

物議を醸しそうな論点は、真の問題を発見するのに、大きなヒントとなります。

もし、社長と管理部長が参加する商談であれば、社長にばかり質問するのではなく、「管理部長にはどう見ているのか?」「社長の意見を聞いてどのように思うか?」「○○の良い面や悪い面は?」「○○と○○はどちらが重要か?」など、視点の違いが生まれるような質問を投げかけていきます。

時に、葛藤や衝突が生まれます。商談の場でそういったものは避けるべきだと思う人もいるかもしれませんが、むしろ、葛藤や衝突が生まれた方が、より深いところに真の問題を発見できます。

今回は商談の場面でも活かせる問いの活用についてまとめてみましたが、”売り込む”というスタンスでなく、本当に解決すべき真の問題を発見するプロセスをともにすることで、唯一無二のパートナーになれると思っています。

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宮本寿@クエスチョンサークル
リンクアンドモチベーション、グロービスを経て独立。現在はクエスチョンサークル代表取締役(https://www.question-circle.jp/)。”問い”の力で組織を変える!をスローガンに、企業の組織開発やビジネスリーダーの支援型リーダーシップ開発に取り組んでいます。