見出し画像

遠い記憶 二十話

あれは、中学二年生になっての事だった。
相変わらず、生活は変わらない。

毎日が、暗いトンネルの中は、変わらない。
さすがに、疲れた。

私は、何故生まれて来たのだろうか?
何の、為に生まれて来たのだろうか?
何故、生きなきゃ行け無いのだろうか?
愛され無いのに、何で生まれて来たのだろうか?

何度、問いかけても、答えは出ない。
生きる資格も無い私。

何時しか、死を考える様になっていた。
私が、死んだら何か変わるだろうか?

せめて、お父さん、お酒を辞めてとは、言わない。
お酒で、楽には成らない事を判ってくれたら。

もう、いい。
もう、私なんか、どうなってもいい。

消えてしまいたい。
いなくなったら、楽になれるかも。

せめて、弟ぐらいは、まともに、育てて欲しい。
私が、消えれば、気付いてくれるかな?

意外に、その時は早く来た。
学校から、帰る途中毎日一緒に帰る友達がいた。

その子は、口数の少ない子だった。
何時も、帰り道、誰にも言えない事を、お互い言い合っていた。

明日、学校には、来れないと思う。
今日が、最後。
何時も、ありがとう。
さよならの、言葉を交わし、彼女と別れた。

その日の、夜、一晩かけて、
自分の、思いを、手紙に残した。

最後に、私の分も弟を大事に、育てて欲しいと。
書き綴った。

次の朝、
普通に、起き、普通に学校に行くふりをし、
倉庫の影で、最後に、母が出かけるのを待った。

学校に行く気は、無かった。
死ぬんだもん。

暫く、すると母は、仕事へ出た。
それを、確認して、又、家に戻る。

夜書いた、手紙を、テーブルの上に置き。
太い鴨居に、着物に使う紐を、掛け、椅子を出す。

用意は、出来た。
椅子に乗る。

意外に怖く無かった。
紐に、首を掛けようとした、その時

ガラガラと、玄関を開ける音。
そこえ、襖がすーっと、開いた。

何と、入って来たのは、担任の先生だった。
馬鹿がー!

前の日に、さよならを告げた、友達が
私が、学校に来ないのを、心配になって、先生に言いに来たとの事。

私は、先生の声に、力が抜け
その場に崩れる。

先生は、何も言わず
私を、学校へ

もう、学校へ行っても、何をする気にはならなかった。
その日、変わった事と言えば

学校へ、母が来た。
雨が降って、私の傘を持って来てくれた。

母は、泣いていた。
学校に、来るのに、夕べ書いた手紙そのままにして来てしまった。

母は、それを、読んだのだろう。
その日の夜、

母は、父に、私の書いた手紙を見せた。
父は、逆上していた。

その、姿を見て。
私は、アホか。

呆れて、声も出ない。
こんな男か。

こんな男の為に、死のうとしたのか?
我ながら、情けなくて、馬鹿馬鹿しく思えた。

男として、価値の無い。
親として、価値が無い。

こんな男の為に死んだら、あかん。
よおーし
生きてやる。
生き抜いてやる。

今に、見てろ。
その時、何か、私の中で、別のスイッチが入った様な感じがした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?