見出し画像

「脳への刺激」から考える筋トレの効果:運動神経向上、姿勢改善、認知機能の向上

ウォーキングや運動には、頭がすっきりしたり、集中力がアップしたり、姿勢が改善したりといった効果が確認されています。特にトレーニング指導の現場において、筋トレを通じて姿勢改善を目指すというのは一般的なアプローチではないでしょうか。こうした運動による健康効果を、脳という観点からもう少し掘り下げていきたいと思います。

筋トレによる脳への刺激の役割

本能的行動、つまり生命維持に欠かせない行動というのは、脳幹で処理されているとされています。逆に、意識的に何かをしようと考えて行動する意識的行動や、三大欲求を抑制しようという倫理的行動を生み出しているのは、大脳皮質です。意識的行動・倫理的行動が発揮されるからこそ、基本的に人は暴飲暴食をしてはダメだと考えられるし、性欲を満たそうと他人を襲ってはいけないと考えられるわけです。

この意識的行動・倫理的行動こそが、他の動物との最大の違いと言えます。動物もしつけによって「これをしてはいけない」というルールを覚えますが、そうして生まれる意識は意識的行動や倫理的行動というより、「褒められたい」「怒られたくない」という本能的な動機です。

そして、運動というのはこの2つの行動(本能的行動と意識的行動)との組み合わせによって成立しています。例えば呼吸は、深呼吸など意識的行動に基づいて行われることもありますあ、基本的には本能的行動です。しかし、ボールを蹴る、素早く切り返して相手をかわそうとするといった行動の多くは、意識的行動に該当します。

こうした意識的行動の精度に関わるのが、さまざまな感覚から入力される情報がもたらす、脳への刺激です。このnoteでも何度も紹介している視覚・体性感覚・前庭覚がそのベースになると言えます。たった3つだけ?と思われがちですが、実際には視覚なら「色・形・光・深視力・中心視野・周辺視野」といくつもの情報を受け取っています。体性感覚であればさまざまな触覚刺激、前提覚も頭部の位置感覚やスピード、回転といった、無数の情報を受け取っているわけです。

ちなみに、こうした刺激=情報を受け取る受容器も、大きく3種類に分けられます。

内受容器:呼吸や血圧、脈といった刺激を受け取る
外受容器:圧力・景色・頭部の位置といった情報を受け取る
固有受容器:負荷・スピード・姿勢などの情報を受け取る

固有受容器に該当するのは、筋紡錘や腱紡錘といった組織です。外受容器に含めた圧力に対しても、正確には「圧受容器」という組織が感知しているので、固有受容器に該当するといってもいいでしょう。

3つの受容器から脳は刺激を受け取って処理した結果、ボールを蹴る・相手をかわすといった高度な運動による結果に反映されます。そういう意味では、筋トレは機運力アップ・筋肥大といった効果にとどまらず、3つの感覚による脳への情報入力=刺激を増やすという効果も期待できるわけです。

ここから先は

2,507字
月に3本記事更新いたします。 実際に現場でご利用いただけるよう脳について初心者向けから応用編へと少しずつ難易度を挙げていきます。 数年間購読し続けることで体の機能を高めるために必要な脳への知識が身に付きます。

Brain Special Magazine

¥1,980 / 月 初月無料

運動指導者の方へ向けて「脳」について理解し、パフォーマンスを高め機能改善などを行えるように学べるコンテンツです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?