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肝臓いたわれていますか?疾患を予防・改善するポイントは腸内環境にあるかも

脂肪肝というのは、肝細胞に中性脂肪が蓄積された状態で、食べ過ぎ・飲み過ぎが主な原因とされる病気です。脂肪肝という言葉は聞いたことはあるものの、自分とは関係ないと考える人もいるでしょう。実は日本人の脂肪肝患者は非常に多く、予備軍も含めると国内だけで約2,000万人いるのでは?という推定もあります。

脂肪肝と言えば、昔の認識では「飲みすぎでなるもの」でした。最近は、食べ過ぎによる脂肪肝=非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD、ナフルド)」が増加していると言われています。

このNAFLDの研究が進められる過程で、2020年に世界各国の肝臓専門医が議論して提唱されたのが、新たな疾患の概念である「MAFLD(マフルド)」です。日本語で「代謝異常関連脂肪肝」を意味します。世界22ヶ国の国際パネルによって、2020年に「脂肪肝の新たな診断基準」として提唱された言葉です。

MAFLDの診断は、脂肪肝に加えて3つの基準が設けられています。次の3つのうち、1つでも該当している人はMAFLDと診断されます。

①過体重・肥満(日本人の場合はBMI23以上)
②2型糖尿病
③痩せ・正常体重だけど2項目以上の代謝異常がある(高血圧症、内臓脂肪が多い、耐糖能以上、脂質異常症)

MAFLDに該当する患者の数は、世界人口の1/4近くにのぼるのではと言われているほどです。さらにコロナ禍で運動量が低下+中食需要が増えたことで、MAFLD患者が増えたという報告もあります。それに対して、日本大学医学部がラットを用いて「MAFLDと腸内環境」の関連性についての研究を行いました。

NAFLDや非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といった病気と、腸内細菌叢には高い関連性が報告されています。実際、NASHの患者は小腸内の細菌が過剰気味だったり(SIBO、小腸内細菌異常増殖症)、腸管粘膜のバリア機能が不全状態に陥り勝ちという傾向にあるようです。また、NASH患者は健常者と比較して、いわゆる善玉菌といえる「バクテロイデス門」に属する菌が少ないとされています。

この研究は、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP5)を「普通食を与えるグループ」と「高脂肪食を与えるグループ」に分けて、腸内細菌叢にどのような変化があるのかを調べました。

脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP5)は、健康・栄養に関する研究で利用されることの多いラットです。高血圧、動脈硬化、肥満、糖尿病、脂質異常症、代謝異常などの疾患モデルとして使われることが多いので、日頃論文などをチェックする人は覚えておくといいでしょう。

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