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発酵食品の抗炎症&腸内細菌多様化作用を食物繊維と比較した研究がすごかった

発酵食品が身体にいいという意見に、おそらくほとんどの日本人が賛成すると思います。一般社団法人日本予防医学協会では、発酵食品について次のように説明されています。

「発酵食品」とは、微生物の働きによって原料を分解(発酵)することでできた食品です。 この発酵により栄養素の吸収率UP・栄養素の増加・保存性UP・美味しくなるなどの効果や、菌で腸内環境が整うため、免疫力UP・アンチエイジング・デトックス効果などの多くのメリットが期待されます。

『発酵食品』を真剣に考えてみた | 健康づくりかわら版より

食事によって誘発されるマイクロバイオーム(ヒトの体に共生する微生物の総体)の変化は、免疫機能を変化させ、炎症を促進するリスクをはらんでいます。2021年8月に発表された論文によると、Cell誌(アメリカのセル出版が発行している、1974年創刊の隔週刊の科学学術雑誌)の新しい論文で、発酵食品や植物性食物繊維を多く含む食事に介入することで、微生物の多様性が増加し、免疫介在性炎症のリスクが減少する可能性があると報告されました。その報告内容や、発酵食品との付き合い方について話していきたいと思います。

発酵食品=健康にいいは本当かを検証

ヒトは、皮膚や粘膜表面に生息する微生物の集団と共進化してきました。微生物から生まれる代謝産物は、ヒトの健康に広範な影響を及ぼします。特に、宿主の健康に有益な代謝特性を持つ細菌集団の枯渇は、非感染性慢性疾患(NCCD)の急増と関連しています。

NCCD(日本でGoogle検索すると「NCDs」と略されていることが多いです)は、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒といった習慣で起こる慢性疾患のことです。おもに糖尿病、循環器系疾患、呼吸器系疾患、メンタルヘルスの病気、がんなどを意味します。生活習慣のほか、大気汚染といった環境の変化も要因として挙げられます。

ヒトの腸内には他のどの部位よりも多くの微生物が生息し、食事は腸内微生物の多様性を大きく左右します。過去の伝統的な食事と都市化した現代の食事を比較すると、明らかに現象した栄養素が「食物繊維」です。

食物繊維に含まれる微生物がアクセス可能なMACs(発酵性食物繊維。腸内細菌に届く炭水化物のこと。小麦ブランなどが代表的です)は、発酵して短鎖脂肪酸になり、腸管バリアの恒常性維持に重要な役割を果たします。

食物繊維の摂取量を短期間増やしただけでも、腸内の細菌群集構造や代謝機能が変化することが、いくつかの先行研究で示されているほど、食物繊維の影響力は絶大です。

日本や韓国をはじめ、東アジアではキムチやヨーグルトなどの発酵食品が、健康に有益であると考えられてきました。Cell誌で発表された論文では、マルチオミクス・アプローチを用いて、これらの食事介入が免疫状態に直接関連しうるかどうかを検証しました。

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