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健康に必要な最低限の運動とは?~最低10分の散歩でも老化は防げる~

私達にとって、おそらく日常でできる最小限の運動が「歩行」だと思います。パーソナルトレーニングでの運動指導でも、まずは1日少しでも歩く時間を作ることが、ダイエットや美容にはいいと話します。そんな歩行ですが、脳の若返りにとても重要な運動です。歩くことで健康も若さも手に入るなら、やらない理由はない!と思いませんか?

そんな歩行のすごい効果を、さまざまな研究をベースにして紹介したいと思います。

「1日15分の散歩」でも寿命が延びて死亡リスクが減る

2011年に発表された研究ですが、この研究では死亡率低下・寿命延長には最低限どれくらいの身体活動量が必要かを研究しました。一般的に、週150分の運動量で高い寿命延長効果が得られるとしています。しかし、ちょっと運動している人なら分かると思いますが、週150分ってすぐに達成できる時間ですよね(運動をしない人にとっては、かなり多い時間に感じられるかもしれませんが…)。本当に、この運動量で寿命を延ばせるの?という疑問に、この研究は向き合ったわけです。

研究では1996年~2008年の間に、台湾の医療プログラムに参加した416,175人を対象として、平均8年の追跡調査を行いました。対象者の運動量を調査して病気の発症状態などを比べたところ、週平均92分あるいは1日15分の運動をしていた「低運動量グループ」は、「運動をしなかったグループ」と比較してあらゆる死亡リスクが14%減少し、寿命が3年も延長していたそうです。

そして、1日15分という運動量を超えるごとに、あらゆる死亡リスクが4%減少、特にがん死亡率は1%減少していました。この研究のすごいところは、「あらゆる年齢層・男女・心血管疾患リスクを持つ人」に、こうした傾向が見られたという点です。逆に、運動不足の人は低運動量のグループと比べ、死亡リスクが17%増加していました。

1日15分の運動を7日続けると、週合計105分の運動量となります。推奨されていた150分よりも少ない時間でさえ、健康増進には役立つというわけです。低運動量グループの運動時間は週平均90分程度だったので、それ以下でもいいわけですね。運動量自体も、低強度なので散歩で十分ということが分かります。

歩行によって「脳の老化」が防げる

さて、今の話題はあくまで「少しの運動でも健康を維持することは可能だよ」という話でした。ここからは歩行が脳にどう影響するのかを見ていきましょう。

2015年に発表された研究では、有酸素運動が認知機能にどう影響するのかを調べています。疫学的な知見では、身体活動レベルが高い人は認知能力が高く、認知症リスクが低いと言われています。同様に、心肺機能が高い人ほど、認知機能の低下が緩やかです。そこで、研究では「いったいどれくらいの強度の有酸素運動であれば、認知機能の向上には有益なのか」を調査しました。

研究は65歳以上で運動不足、かつ認知障害やインスリン症状、聴覚・視覚障害、高血圧、心肺機能への不安、筋骨格系・神経精神障害の病歴がない101人を対象に行いました。年齢を除けば、この条件に当てはまる若い世代の方は結構多いのではないでしょうか。

集められた被験者は、ランダムで次の4グループに分けられました。

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