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「コピーは矢印」はUXライティングでもクソ大事

はじめまして。私はいま、IT系の事業会社でインハウスのコピーライター/UXライターをしています。主な仕事は企画とUXライティングです。前職は広告会社でコピーライターをやっていました。広告会社のコピーライターだった人間が、事業会社に転職してUXライティングをするというのは、なかなかレアなキャリアなのでは?と思い、広告コピーとUXライティングの両方を経験して気付いたことをnoteに書くことにしました。今回はその第一回です。

今日書きたいのはタイトルの通り、「コピーは矢印」がUXライティングでもクソ大事、という話です。

そもそも「コピーは矢印」とは一体何なのか。

2012年、私は「宣伝会議コピーライター養成講座 谷山・井村・吉岡・照井クラス」に通っていました。日本を代表するコピーライターの谷山雅計さんと、谷山さんの教え子である井村さん、吉岡さん、照井さんが講師をつとめる講座です。その授業の中で、今も鮮明に覚えている谷山さんの話がひとつあります。ある日、授業で谷山さんがクイズを出したのです。

「この教室の中に、コピーととても似ているものがあります。それはなんでしょう?」

一斉に教室を見回す、受講生たち。私もきょろきょろ教室を見回して、あるものを見つけて、あっ!と思いました。それがこれ。

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非常口のサインです(写真はその辺で適当に撮ったやつ)。

なぜ非常口のサインとコピーが似ているのか。それは、どちらも矢印になっているからです。谷山さんはコピーをこのように定義していました。

「コピーは短い文章ではなく、矢印を言語化したもの」

『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』というルミネの名コピーを書かれたコピーライターの尾形真理子さんも、こちらの記事で同様の話をしています。

以下引用です。

今、「コピーライターってどういう仕事ですか?」と聞かれたら、私のなかでは明快で、一言で「矢印を作る仕事だ」と説明できます。
——矢印、ですか。
例えば、あるミネラルウォーター「A」という新商品が世に出たとします。商品を知らない状態から「飲んでみたい」というトライアルする気持ちになるのか。「水といえばA」みたいなマイブランドになるのか。コピーにもいろんな目的があると思うんですけど、その矢印をいかに作れるか。人を動かす言葉になっているか――というのが広告の役割です。
例えば「今日は晴れてるね」も、別に間違ってはいないですが、それを広告のコピーにするとしたら、「今日は外でランチを食べると気持ちいい日だね」になります。「今日は晴れてるね。じゃあ外でランチ食べると美味しいかもね」というと、人を外に出すモチベーションを作ることができるんです。

コピーというのは、ただの短い文章ではなく、受け手の行き先や次の行動を指し示すような、人を動かす言葉でなくてはならないのです。

例えば、日本で最も有名なコピーのひとつであるこちらのコピー。

そうだ 京都、行こう。

どうですか?めっちゃ矢印っぽくないですか?まあもちろん地名が入っているというのもありますが、間違いなく見た人の行動を促しているコピーだと思います。(ちなみに余談ですが、「そうだ」の後はスペース、京都の後は「、」が正式なコピーです。「そうだ、京都へ行こう」だと思っている人が多いですが、正式なコピーは「へ」は入りません)

そんな「コピーは矢印」という考え方ですが、UXライティングをするようになって、改めて広告コピーの仕事で学んだことがいまに活きているなと強く思います。なぜなら、UXライティングのコピーが、マジで矢印そのものだったからです。「詳細を見る」「購入する」「エントリーする」など、UXで使われる言葉の多くは、ダイレクトな行動を促すものです。それはまさに、非常口のサインと同様に、次の行き先を的確に伝えるものでなくてはならないのです(そもそもボタンなどでは「 詳細を見る  > 」のように矢印的な記号とあわせて言葉が使われることも多いです)。

じゃあ具体的に、矢印として機能しているUXの言葉って一体どんな言葉なんだという話なのですが、私が非常に矢印感(矢印感とは)を感じる言葉がこちらです。

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そうです、みなさんご存じ、Wantedlyさんのボタンの言葉である「話を聞きに行きたい」です。

話を聞きに行きたい

どうですか、この圧倒的矢印感。めちゃくちゃ話を聞きに行きたくなるこの感じ、まさに人を動かす言葉と言えるのではないでしょうか。ボタンの言葉としては「話を聞きに行く」でも機能するのですが、そこをあえて「行きたい」にしているところに、矢印としての強さを感じます。そもそも「応募する」か「エントリーする」しかなかった採用アクションに、よりハードルの低い「とりあえず会って話を聞いてみる」という新しいステップを生み出したところがイノベーションだと思うのです。いきなり面接をするのではなく、「まずはカジュアルに話を聞きに行くだけ」という体験を生み出し、それを「話を聞きに行きたい」というテキストに落とし込む。まさにUXライティングのお手本のような言葉だと思いますし、綺麗な矢印だなあと思うわけです。

以上、「コピーは矢印」はUXライティングでもクソ大事、というお話でした。これからもUXライティングで素敵な矢印を生み出せるようにがんばっていきたいと思います。

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