『バック・ステージ』|芦沢央の感想
「痛快!」
まさにそう叫んでしまいそうな爽やかでスッキリする素敵なミステリを紹介します!
『バック・ステージ』のあらすじ
本日ご紹介するのは芦沢央先生の『バック・ステージ』です!
この本の最大の特徴は読後の爽やかさ!
『正義は勝つ!』
といった勧善懲悪のスッキリとした読後感を味わえる作品。
誰にでも1人くらいは「許せないほど憎いやつ」って存在がいると思いますが本作に出てくる敵(みたいな人)もマジで クソ野郎 嫌なヤツです。
そんなパワハラ最低上司が行っている不正を告発する気満々の先輩に巻き込まれ、主人公も一緒に証拠集めに奔走するのが話の大筋です。
しかし本書で描かれるのは彼らだけではなく、まったく無関係な人々の様々な人生や問題が描かれます。
そして一見無関係にも見えるその人々の行動が交錯し物語が素晴らしいラストに向かう群像劇になっています。
本作の素晴らしさは登場する人々それぞれが胸のうちに闇を抱えているところ。
その機微か筆者により緻密に描写され思わず心をえぐられる場面も少なくありません。
しかしそれぞれの物語の最後はしっかりハッピーエンドになっており爽やかでほっこりした読後感を得られます。
芦沢央さんといえば「火のないところに煙は」や「許されようとは思いません」といった怖かったり闇深めの作品が多い中で、本作は心温まる結末です。
しかしそれに至るまでの問題やトラブルの描写は読んでいてつらいものもあります。
だからこそラストに救われるのですが、ヘビーな描写が上手いところに芦沢先生の特徴を感じました。
『バックス・テージ』の感想
群像劇が大好きな私にとって本作はまさにヒット中のヒット作でした!
特に気に入ったのは「始まるまで、あと5分」の章です。
大物舞台演出家のオーディションに合格した無名舞台俳優が、開演初日の出場シーン5分前に「次のシーンに出たらお前の秘密をバラす」と脅迫状を受けるお話です。
その秘密を知りうるのは同じ舞台に出演する俳優だけ。犯人はすぐそばにいるが、時間がない。そしてその秘密がバレたら自分は大切なものを失うし、秘密を守るために舞台に出なければ役者人生が終わる。
そんな究極の葛藤にある俳優の数分間が描かれている章ですが、とにかくその心理描写が際立っており、紙の本なのにタイムリミットを課されている気になって焦りながらページを捲ってしまいました!
芦沢先生、人の心を揺さぶるのがうますぎ!
『バック・ステージ』を読んだあなたにオススメ
『バック・ステージ』を読んだ方や気になった方ならきっと気にいると思う作品をリストアップしました。
『ラッシュ・ライフ』|伊坂幸太郎
この作品もバック・ステージと同じ群像劇となっています。
並走する四つの物語は独立しているように見えるのですが、読み進めるうちにピースが埋まり、最後には大きな一つの物語を紡ぎます。
伊坂先生の作品は文章が軽妙でスラスラと読めます。
謎の置き方やストーリーが起伏に富んでおり、ページ数が多いのに最後まで一気読み間違いなしです。
また文章中に心に響くフレーズも多いのが特徴。
本作で出てくる「人生はきっと誰かにバトンを渡すためにあるんだ。今日の私の一日が、別の人の次の一日に繋がる」なんて言葉はまさに交錯をテーマに置いた本作のみならず人の生きる本質を突いた言葉だと思いました。
『カラスの親指』|道尾秀介
本作の特徴はなんといっても『最っっっ高の読後感!』です!
そして更にミステリ好きが大好きな「大どんでん返し」があなたを待ち受けております!
大どんでん返し+爽やかな読後感なので、どんな趣味・趣向の方でも間違いなく楽しめる大傑作だとおもいます!
私自身もX(Twitter)での #名刺代わりの小説10選 において、初回から今でもずっと選び続けている名作中の名作です!
道尾先生は爽やかな作品から恐ろしい物語のラストを読者に委ねるリドル・ストーリーまで、本当に多彩な作品で知られています。
正直どれを読んでも外れない現代最高の作家の1人だと思いますのでぜひ御覧ください!
『火のないところに煙は』|芦沢央
『バック・ステージ』を読んで「芦沢先生って爽やかな作品を描くだなぁ」とミスリードした方に向けて、彼女の究極ホラーをご紹介。
実在の出版社から「神楽坂(実在の地名)を舞台にした怪談連載」を依頼された主人公(芦沢央=作者本人)が体験した怪異を書く形式、いわゆるフェイクドキュメンタリーの形式を取る本作。
はじめこそフィクションだと確信しているのに、章が進むに連れて「本当に創作なのか?」「実際の怪異ではないのか?」と虚構と現実の境界が曖昧になるような恐ろしさがあなたを襲います。
まさに「ダークサイド」の芦沢先生が描く恐怖は筆舌に尽くしがたい恐ろしさですので、ぜひ御覧ください!
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