見出し画像

邦画の歴史に残る大作!映画「キングダム運命の炎」感想。制作陣の熱狂を浴びてきた

ほんといい表情をしている。台詞がない端役の俳優たちまで皆が役にのめり込み、その状況を役柄の思いを、体当たりの力強い動きと表情で伝えてくる。自分が映るたったワンシーンに俳優人生をかけているのか、キングダムという作品に魅せられたのか。

一流の俳優陣がこぞって出演する背景にも、キングダムへの熱狂が隠れている気がした。見ている側もその熱き思いを受け取って、自分ごとのように感情移入する。映画「キングダム」の面白さって、ほんと尽きないな。


もともとは私自身、キングダムってなに?というド素人だった。1作目の映画「キングダム」を観てハマり、アニメを観て漫画を読んで、原作ファンになった。映画関係者からすると「キングダムの入口、映画だったの?!」と喜ばれそうな通常とは逆パターンの流れ。現在は週に一度、映画館に行く。

そう、私は映画が大好きなのだ。

特に邦画をよく観る。映画館で、最新作を。

<ご注意>
この記事には、公式が未発表のキャスト重要なシーンのことは記載していませんが、少々ネタバレありです。

「ネタバレなし」の感想は、インスタに投稿してます。


7月28日の公開初日。

待ちに待った映画「キングダム運命の炎」を観てきた。原作との違いや細かな描写を注視して、ストーリー全体を咀嚼する。そして翌日、次はIMAXで観てみた。2回目は何も考えず、無心で気楽に鑑賞する。

そこで見えてきたのが、映画の軸となる構成や脚本がエンタメとして成立していたこと。紫夏編への入口、河了貂と蒙毅の遭遇、将軍・蒙武の猛攻[→ここは次回作か]など一部原作とは異なるけれど、原作ファンにとっても違和感がない見せ方と展開だと思った。


たぶん、3回目はさらに面白く感じる。

なぜなら、壮大なスケールと原作をギュッと詰め込んだ物語の中に、制作陣が愛と情熱をもって仕掛けた一滴が、まだ埋もれている気がしたからだ。


特に興味深かったのが以下、目次の5点です。


1. 壮大なスケールで描く、シリーズものの面白さ


1作目は秦王・嬴政の玉座を狙った弟・成蟜の反乱。2作目は秦国が魏国に侵攻する「蛇甘平原の戦い」、3作目は嬴政の幼少期「紫夏編」と趙国が秦国に攻め入る「馬陽の戦い」が描かれている。

厳かに始まる3作目の冒頭。無国籍地帯の閉廷をあんな見せ方するのか、と驚いた。炎の中に浮かび上がる「KINGDOM」のロゴ、うわっ…かっこいい。序盤から、これは面白そう……と思った。


軍隊や騎馬隊、秦の王都・咸陽の王宮、武器や衣装など、パッと見では気づけない細部まで作り込まれているのだろう。圧倒的な製作費をつぎ込んで、原作を極限までリスペクトしながら綿密に丁寧に作り込まれた映画。だと映像の端々から伝わってきた。

映像にしろ、音楽にしろ、主題歌は世界の宇多田。脚本や構成、映像の見せ方に、この映画から制作陣のほとばしるパッションを感じた。だから、観ている側も熱狂してしまう。



シリーズものの面白さは、キャラクターの成長とともに俳優も歳を重ねていくこと。登場人物と俳優たちの成長を追いながら、作品も成長していく。前作の残像を心に残したまま、次の続編を観る。この積み重ねが、根強くファンを引き付けていくのだろう。

キングダムは、壮大な物語だ。

知れば知るほど面白く感じるし、あの春秋戦国時代の、歴史ものの厳粛さと戦場の荒々しさの実写化を実現させた功績は大きいと思う。


2. 俳優陣の熱演と再現性の高さ


百人将に昇格した野生児・信の山﨑賢人さん。漂+秦王・嬴政の現在+幼少期の三役を緻密に演じ分ける吉沢亮さん。俳優として異次元のレベル。この2人はどこまで上り詰めるのだろう。進化が止まらねえ……

配役に関する再現性の高さは、1作目の映画からお墨付きだ。

1作目では竭氏(けつし)や左慈(さじ)までビジュアルが完璧。橋本環奈さんもコミカルな河了貂そのもので、王騎将軍・大沢たかおさんと楊端和・長澤まさみさんの威厳と気品と気高さは想像以上の完成度だった。


3作目の「馬陽の戦い」といえば、中華全土を巻き込み時代を動かす男・趙国の李牧と、王騎との因縁を持つ魔神・龐煖が登場する。秦国を翻弄する大きな畝り、その序章の始まりだ。

シークレットキャストが登場するたび、「うっ… 」と声が出る。李牧と龐煖はガチの配役だ。「そうそう。李牧って最初そういうキャラだよね」と笑い、龐煖のシルエットが末恐ろしい。

パワーアップした王騎将軍が鳥肌ものだ。その偉大なオーラと存在感は唯一無双だろう。インタビュー動画を見て、大沢たかおさんの役づくりにかけるストイックさは化け物級だと思った。


◾大沢たかおさんのインタビュー


そして、キングダムでは不思議な現象が起こる。

この配役少し違うんじゃ?と思ったとしても、その演技と表情と動きでオーラをまとい、原作キャラクターと重なり統合されていく。いつの間にか違和感が解消されている。そう思い込まされているのか、岡山天音の尾平や三浦貴大の尾到がまさにそれだった気がする。別次元を走る「俳優力」を見せつけられた。


3作目で初登場する趙国の将軍たち。戦略に長けた趙の将軍・馮忌役の片岡愛之助さん、将軍らしさをまとった威厳。そして、心の声が渋かった。

秦への怨念に取り憑かれた趙の将軍・万極を演じる山田裕貴さんは異例のキャスティングだと思ったけれど、山田裕貴の「目」が生かされていた。美しい風貌、でも声とオーラが狂気的。新境地の役柄に期待が膨らむ。

ダメだ……全キャストを褒めちぎりたくなる。一人一人の俳優が作品に情熱を注ぎこむと、こんな見応えがある作品に仕上がるのか。

そして、今作を彩る「紫夏編」の嬴政と紫夏がまさに圧巻だった。


3. 原作ファン待望の「紫夏編」、次の世代へ繋げる「恩送り」の尊さ


趙の王都・邯鄲で生まれた秦の王子・嬴政。歴史の歪みと理不尽な怨念を一身に背負わされ、感情が麻痺して心が崩壊するほど冷酷で残虐な仕打ちを受ける。原作ではかなり残酷に描かれている。

原作ファン待望「紫夏編」の実写化に心躍り、歓喜した人は多いと思う。嬴政の幼少期を吉沢亮さん自身が演じると予告編から察して、ああ…なんかいいかも! 杏ちゃんは出で立ちまで闇商人・紫夏そのものだった。二人の役に憑依した再現性の高さと奮闘ぶり。この配役は大勝利!と思った。

そして、秦国への脱出劇が始まる。

関門を抜けて、映画では早々に迫る趙の騎馬隊(早っ!) 土煙だけで危機感と安心感、真逆の感情を煽ってくる。馬車や騎馬隊のリアルさに緊迫し、弓矢を引く紫夏の姿に、行けー!と心の声が叫ぶ。凄まじい迫力と情熱が噴射して、亜門役の浅利陽介さんのラスト感動しただろが。


政が抱えた心の闇。吉沢亮の目と表情、話す声とトーンから、政の不安と絶望を感じとる。紫夏自身が幼少期に受けた恩恵を政に重ねて、この子を助けたいと願い、全身全霊で受け止める。紫夏役・杏の決意と怒り、幾重の想いが詰まった「殺させない!」という台詞。

尊いほどの愛と希望を感じて、これは泣く。政が放つ目の輝きと思想に魅せられた者の宿命なのか。もはや「恩送り」の範疇を超えていた。


嬴政の回想シーンは、信が決意を固めた瞬間だろう。秦王・嬴政の覚悟と使命をともに背負うぞと。過去の痛みと国王としての覚悟から、政はあの台詞を口にしたのか。一つの言葉に込められた想いが今さらズシンと響く。中華統一を掲げる秦王に熱き思いを託す人たち。政が背負った重みがビシビシ伝わってきた。

映画のオープニングで映る満月が、ここで意味を持つ。紫夏のことを思い出すのか、満月に励まされているのか。政にとっての「満月」とは秦の国王としての役目や覚悟を強固にしてくれる勇気の源泉なのだろう。


4. 原作へのリスペクト。ファンが唸る名言とコミカルな掛け合い


知性あらわな戦術と裏をかく騙し合い、論理的かつ奇抜な戦法の逆転劇。ビジネス本になるほど、その戦術は面白い。そして語彙力高く名言が多い。

王騎将軍が信に放つ言葉、信が飛信隊に檄を飛ばす言葉。戦術を模索する軍師や将軍の名言が突出し、政の言葉に強い覚悟を感じる。


予告編でも触れた、王騎将軍が「全軍、前進」と命令するシーン。士気が下がった歩兵隊が一変、歓声が湧く。かと思えば、王騎の笑い方「ンォフゥ」や「ココココ」も再現されて笑ってしまう。やはり王騎には愛着が湧く。

「殿の飛矢が届くぞ」原作でも好きなシーンだ。馮忌の振り向き方がまんまアニメのとおり。いつの間にか王騎軍の軍長・干央が登場していて、台詞から人物名を推測できるのも原作ありき。紫夏編なんて、紫夏の台詞が名言だらけ。輝きを取り戻し目覚めた政の言葉も力強くてしなやかだ。

そして、王騎と騰の滑稽な掛け合いがある。なぜここで?!と思った。もしかすると、制作側の遊び心なのかもしれない。


5. 百人将・信の覚悟に共鳴する飛信隊が胸熱


信の成長とともに、山﨑賢人の演技やアクションも昇竜の勢いで突出している。百人将として仲間を鼓舞する力強さ、仲間をぐいぐい引っ張る巻き込み力。王騎軍直属の特殊100人部隊。飛信隊を前に、檄を飛ばす信の台詞が原作どおりに熱い。士気が下がった場面でも信の言葉が皆を後押しする。

戦場を駆け抜け、崖を這い上がる。

山﨑賢人の信、全力で走る。
清野菜名の羌瘣は、腕を広げて走る。
そして怪力伍長の竜川、猛突進で走る。
みんなどこまで走り続けるんだ……

殺気立つ戦場の緊迫感と飛信隊の疾走感。
殺陣のスピード感、激しく美しく羌瘣が舞う。

「行けー、信!」

この短い言葉にこもった思いが感動を誘い、自然と涙がこみ上げた。人と人とのぶつかり合いの中で生まれた、信頼という分厚い絆の深さを知る。

岡山天音の尾平が笑いを誘い、飛信隊の副将・渕さんはビジュアルから似すぎでしょ。コミカルな場面にも飛信隊らしさが漂う。天下の大将軍を目指す、信の飛躍を最後まで見届けたい。そう思わせる引力とエネルギーを山﨑賢人がまとっていた。

秦の怪鳥・偉大なる王騎将軍よ、いざ宿命の戦いへ。



映画を観たら、また漫画やアニメの続き、前作の映画を観たくなった。キングダムという作品の中毒性から無限ループにハマり、まんまと制作側の術中にハマってしまうのだ。いやだって、最高だものな。

何作目まで映画化されるかわからないが、個人的には合従軍との「函谷関の戦い」までは観たいな。なんて思っている。



普段は沖縄を拠点に、インタビュー取材・企画・編集・ディレクションなどを担当してます。映画は週に一度、映画館で最新映画を観ています。

みやねえ|遠藤美弥子(編集者/ライター/フォトグラファー)
沖縄のライター・編集者チーム「OKINAWA GRIT LLC.」代表
月に1度、東京出張へ。埼玉出身、沖縄在住です。

◾ Twitterエンタメ垢: @miya_nee3
◾ Instagram: @miya_nee

◾ お仕事のご依頼はこちら

この記事が参加している募集

映画感想文

サポートいただいたご支援は「取材費」に使わせてもらいます。今後も、いいコンテンツをつくるために。読んでいただき、ありがとうございした。