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すべてじゃなかった。
Twitterにも呟いたが、4年間もの間、あたしの相棒として活躍してくれたスマホに別れを告げた。正確に言えば5年目。始めてのスマホだった。
このスマホを切り替えるのには実はとても勇気がいることだった。
ほぼ同じ年月の間、同じ人を好きだったから。
彼との始めてのメール。彼が送ってきてくれた画像。言葉。文字。
全てあたしには宝物で、何よりもとにかくこれらを失ってしまう可能性があるのが怖かった。
知り合った当時、彼はだいぶ年下にもかかわらずガラケーだった。その為LINEもしていなかった。そもそも会社とプライベートはきっちり分けたいタイプだということで、ガラケーは2台持ちをしていた。
「今度、飲みに行かない?」
大人の余裕を見せるふりして、心臓はバクバクなのに。勇気を振り絞って誘ってみた。会社とプライベートをそこまでして分けたい彼は、同僚だった。
そんなちょっと変わった彼だったから、余計に誘いづらく、物凄く躊躇した。念入りに計画を練って、少しづつ近づき、やっとの思いでこの時がやって来たのだった。
「いいよー」
と彼はプライベート用の番号とメルアドを教えてくれた。あたしは心の中で飛び上がった。
「会社用のじゃないんだ!プライベートの方なんだ!」
スゴく嬉しかった。少し後になってから聞いたところ、彼は会社の人と飲みに行ったことがないという。それがまた数段に嬉しかった。あたしが一番始めの会社の女!(なんだかよくわかんねーな)
それから彼はそのうちにスマホにしていた。それからはLINEでのやり取りになった。
LINEになってからは何回か素っ気なくされたり、喧嘩したり。それでも頑張ってどうにか連絡を続けていた。
彼が夜勤で眠くて仕方がないというLINEが来たときは、仮眠が出きる時間までLINEで付き合った。自分も次の日早番なのに。睡眠不足のぼやっとした頭は彼との甘い時間の代償。幸せだった。
そして朝、会社に行けば何事もなかったように彼が仕事をしている。あたしたちだけが知ってる、あたしたちだけの時間。
LINEでは動画を一つだけ送ってくれた事があった。それは密かに彼の呟きが入っていて、あたしの最上級の宝物になった。
彼の声がほんとに好きだったから。
LINEの画像を保存するのを覚えたのも彼の画像をなんたって取っておきたかったから。
機種変更した時に、保存していたLINE系のやり取りや画像、動画はきっちり復活出来た。
会社用とプライベート用の電話番号も無事だった。
ただ、メールだけはダメだった。始めて彼と交わしたメール。送ってくれた画像。言葉。文字。
失くしてしまった。
もうちょっとやりようがあったのかもしれない。でもどこかで、全部消えてしまえば彼への想いも絶ちきれるかもしれない。
そんな思いもあった。
きちんと保存されていた画像には彼との思い出が溢れてくる。脳内ではその時の回りの風景、匂い、音。全て甦ってきてはあたしの胸を掴む。
もちろん彼の画像だけじゃない、他は子供たちの画像が多い。彼があたしの全てではない。
それでも彼との思い出を失ったことが痛くて痛くて…泣いてしまう。
彼は今、あたしから距離を置いている。その事実も余計にあたしを狂わせる。
今後、彼と画像を言葉を文字を。更新していける予定が未来が何一つないから。
思い出すのはあなたの笑顔、困った顔、体温。
欲しかったもの、あなたの全て。
それほどまでに愛してしまった事実。
それでも手放さなければならない事実。
引き継ぎ出来たのはすべてじゃなかった。
ほんとはあたし、動いてるあなたを見ているのが好きだったの。仕草一つ一つ全部好きだったの。
だから動画をねだりたかったけど、恥ずかしくてお願い出来なかったんだよ。
…少し泣き過ぎたな。またまだ前を向いて新しい生活に慣れなきゃな。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
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