道産子、山陰に住む①〜住み慣れた雪国からの転勤〜
2017年、年の暮れ、私と子供達3人は北海道を飛び立った。飛行機を乗り継いでの移動だったので到着する頃には暗くなっていた。
一年早く単身赴任した夫が、空港まで迎えに来てくれ、これから生活する景色をみんなで車窓からじっと眺めた。
道路に沿った赤白しましまの矢印の標識も反射するポールもないので(あとで知ったのだが、雪国特有のものらしい)あたり一面真っ暗に感じられた。子供達は雪のない冬の景色が初めてで、翌日から広い庭で、しかもスキーウェア無しで縄跳びやかけっこをして遊ぶことになる。
私たち夫婦も、生まれてからずっと北海道で氷点下の暮らしをしてきたので、雪がない冬というものをあまり想像できていなかった。今となっては雪国で暮らす自信がないほど、こちらの生活に順応している。
北海道で子育てを一緒に乗り切った沖縄出身の友人が、ダウンを買うことから始まり、滑って転ぶからと言ってギザギザの刃がついたスパイクをブーツに巻き付けたり(それでも転んだ)、毎朝の雪かき、ホワイトアウト、水落し、灯油ストーブの管理(16Lの灯油缶を4階まで運び、更にベランダにおいてある大きな筒型の缶へ移す)など、逐一興奮気味に話してくれたのに、私の反応がとても薄かったことを今となっては謝りたい。
ただ、同じレベルで興奮したこともある。雪の結晶だ。「雪」は当然のもので、「雨」と一緒でただ降ってくるもの。その一枚一枚をいちいち見ようと思ったことは無かった。だけど、彼女は手袋に落ちてきたひとひらを私に示し、「本当に結晶になってる!」と教えてくれたのだ。
私は、結晶って誰かが雪をイメージして作った図柄(要はチェックとかと一緒)だとずっと思っていて、本当にアナ雪の世界だ‼と感心し、子供に元々知っていたかのように手にとっては自慢した。
それまでは氷点下で白い息を吐いて、「ゴジラのけむりー」くらいしか子供に教えられるレアな芸当はなかった。そりや雪だるまなど雪遊びは一通りしたけれど、バナナを凍らせて釘を打ったり、タオルを振り回して凍らせたりもすれば良かったと今更思う。
話がそれたが、無事に私達は山陰に着いた。そして、一晩新居の寒さに耐え、凍えながら就寝した。(こちらの古い家が、冬、発狂しそうになるほど寒いことに気づくには時間がかからなかった)
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